マイクロソフトは次期クライアントOS「Windows 7」の製品候補版(以下RC版)を公開した。米国時間4月30日から開発者やテスター向け(MSDNとTechNetの登録メンバー)に、同5月4日から一般向けにダウンロードで提供を行っている。同社は当初、一般公開は5月5日からとアナウンスしていたが、予定より早く提供を開始しており、日本語版(32ビット/64ビット)も英語のWindows 7サイトからダウンロードが可能だった。日本国内では、連休明けの5月7日に一般公開されている。
Windows 7のβ版は米国時間の2009年1月9日に一般公開されたが、Windows Vistaのようにβ2を挟むことなく、約4カ月でRC版が登場したことになる。RC版の次の段階は製造工程向けリリース(RTM)なので、来年初頭もしくは年内の市場投入と予想されるWindows 7の開発は、順調に進んでいると考えてよいだろう。
2009年1月30日の記事では、β版でWindows 7の検証を行ったが、今回のRC版は細かな改良が施されたことに加えて、メニューの日本語化が進んだことで、さらに使いやすくなった。β版で好印象だったキビキビとした動作も健在だ。前回は、Windows VistaとWindows 7の違いを中心に注目ポイントをチェックしたが、今回はRC版に搭載された新機能を検証していきたい。
その新機能とは、「Windows XPモード」(Windows XP Mode)と「リモートメディアストリーミング」(Remote Media Streaming)の2つだ。このほかにもWinodws 7のβ版からRC版への変更点は多数存在しており、その一部はマイクロソフトのEngineering Windows 7 ブログで確認できる(「36の変更点」と「28の変更点」)。FAT32のサポートや、Windowsエクスプローラにおける右クリックの動作変更など、興味深い仕様変更もあるので、特にβ版のユーザーだった人は確認してみるとよいだろう。
今回一般公開されたWindows 7 RC版のエディション(SKU)は、すべての機能が備わった最上位版の「Ultimate」に限られ、下位のエディションは試せない。RC版の有効期限は2010年6月1日とされている。Windows 7のシステム要件と今回RC版の検証に利用したPC(ThinkPad T61)のスペックは、下表に示した通りだ。前回と異なるPCを利用したのは、Windows XPモードの検証にCPU側の仮想化支援機能であるIntel VT、もしくはAMD-Vが必要だったためだ。
Windows 7のシステム要件と、RC版の検証に利用したPC | ||
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仕様 | システム要件 | RC版の検証に使ったPC |
CPU | 1GHz以上の32ビット(x86)/64ビット(x64)対応CPU | Core 2 Duo T7500(2.2GHz/2次キャッシュ4Mバイト) |
メインメモリ | 1Gバイト(32ビット)/2Gバイト(64ビット) | 2Gバイト(PC2-5300 DDR2 SDRAM) |
グラフィックス | WDDM 1.0以上のドライバで動くDirectX 9対応グラフィックス | Intel GMA X3100(Intel GM965 Expressチップセット内蔵) |
HDD | 16Gバイト(32ビット)/20Gバイト(64ビット)以上の空き容量 | HGST HTS541616J9SA00(160Gバイト/5400rpm) |
また、リモートメディアストリーミングの利用には、インターネットへの接続回線が必須となる。検証には筆者が契約するケーブルテレビのインターネットと、FTTHの回線を使用した。ケーブルテレビのインターネットはベストエフォート型で、最大通信速度は下り30Mbps、上り5Mbpsだ。また、必要に応じて前回利用したデスクトップPCや、VMWare上にインストールした環境も使っている。
Windows 7はOSの核となる部分がWindows Vistaとほぼ同じであるため、Windows Vista対応アプリケーションとの互換性は高い。しかし、Windows Vistaと同様に、Windows XP以前のOSでしか動作しないアプリケーションを走らせるのは困難だ。
こうした、Windows 7上でのネイティブ動作はもちろん、XP互換モードでも動作しない古いアプリケーションを使いたい場合の最終手段として、マイクロソフトはWindows XPモードを提案している。これは、Windows 7に仮想環境ソフトウェアの「Windows Virtual PC」を導入し、仮想環境でWindows XPを動作させることにより、Windows 7に非対応のWindows XP用アプリケーションをWindows 7上で手軽に使えるようにする機能だ。
Windows XPモードが通常の仮想環境と異なるのは、Windows 7のデスクトップにWindows XP上のアプリケーションを直接表示できる点と、対応エディションであればWindows XPのライセンスを別途用意せずに使える点だ。
下の写真はWindows XPモードでInternet Explorer 6と、サクラエディタを動作させてみたところ。どちらのアプリケーションも仮想環境のWindows XP上で動作しているのだが、Windows XPのデスクトップ画面が表示されることはなく、Windows 7のデスクトップに直接アプリケーションのウィンドウが合成表示されている点に注目してほしい。
単純に仮想環境を導入するだけでは、ホストOSとの間に操作の違和感や煩わしさが発生しがちだが、Windows XPモードはWindows 7のデスクトップから仮想環境のアプリケーションにシームレスにアクセスできるため、Windows 7にインストールしたアプリケーションのような感覚で利用できる(注意点は後述)。
もちろん、従来のVirtual PCと同様に、デスクトップ全体をウィンドウ表示させた仮想環境でWindows XPを動かすこともできる。ただし、仮想環境のWindows XPを起動した状態では、Windows XPモードでアプリケーションを起動できない。仮想環境のWindows XPを起動した状態で、スタートメニューからWindows XPのアプリケーションを起動しようとすると、先に仮想環境を終了するようにメッセージが表示される。
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