AMD 790GXの後継となる新しいグラフィックス統合型チップセット「AMD 890GX」が登場した。この製品の登場でAMDのチップセットは、700番台から800番台へと上がることになる。その世代交代に見合う機能強化が図られているのだろうか。まずはAMD 890GXのスペックを確認しておこう。
| チップセット | AMD 890GX | AMD 790GX | AMD 785G |
|---|---|---|---|
| PCI Express x16レーン数 | 16 | 16 | 16 |
| CrossFireX | x8+x8 | x8+x8 | − |
| それ以外のPCI Express | x1(2.0)×6 | x1(2.0)×6 | x1(2.0)×6 |
| 統合型グラフィックスカード | Radeon HD 4290 | Radeon HD 3300 | Radeon HD 4200 |
| コードネーム | RV620 | RV610 | RV620 |
| DirectXバージョン | 10.1 | 10 | 10.1 |
| 統合型シェーダユニット数 | 40 | 40 | 40 |
| GPUコアクロック | 700MHz | 700MHz | 500MHz |
| サイドポートメモリ | ○ | ○ | ○ |
| UVD | UVD2 | UVD | UVD2 |
| N-Sチップ間接続バス | Alink Express III 2Gバイト/秒 | Alink Express II(PCI Express x4) | |
| サウスブリッジ | SB850 | SB750 | SB750 |
| USB | 2.0×14 | 2.0×12 | 2.0×12 |
| Serial ATA | 6Gbps×6 | 3Gbps×6 | 3Gbps×6 |
AMD 890GXに統合されたグラフィックスコアはRadeon HD 4290だ。開発コード名でいうところのRV620で、AMD 785GのRadeon HD 4200と同等であり、DirectXのサポートは10.1までとなる。ただし、コアクロックは700MHzに設定されており、AMD 785Gの上位版である体面を保っている。また、AMD 890GXは「UVD2」を統合する点で、AMD 790GXからHDコンテンツ再生能力を向上させている。グラフィックス用のPCI Expressは、16レーン×1、または8レーン×2の切り替えをサポートしている。
このようにノースブリッジ側で目立ったアップデートはない。AMD 890GXの特徴となる機能強化は、サウスブリッジ側の大幅なアップデートにある。AMD 890GXに組み合わされるサウスブリッジチップは、こちらも800番台の「SB850」だ。SB850と従来のSB750を比較すると、いくつか強化された機能があるが、最も注目したいものにSerial ATA 6Gbps(Serial ATA 3.0)のサポートがあげられる。次世代のインタフェースであるSerial ATA 6Gbpsは、現在主流のSerial ATA 3Gbpsと比べ帯域を2倍に高めている。Serial ATA 6Gbpsに関しては拡張カードのほか、専用のコントローラチップを実装したマザーボードも登場している。ただし、新しい規格が本格的に普及するにはチップセットによるサポートが重要だ。
一方で、Serial ATA 6Gbpsとともに注目されている次世代インタフェースのUSB 3.0のコントロール機能は統合されない。Serial ATA 6Gbpsと比べ、市場に投入された対応機器も多く、メリットを享受するユーザーも多いとみられるUSB 3.0を見送ったのは残念だ。ただし、USB 3.0専用コントローラチップを実装する場合、インテルプラットフォームではPCI Express 1.1 x1接続であるのに対し、AMD 890GXは、PCI Express 2.0 x1(AMD 890GXが6本、SB850が2本)に接続できるので帯域に不安はないとAMDは説明している。なお、SB850はUSB 2.0も従来の12ポートから14ポートへと数を増やしている。
もう1つ、従来のAMD 790GXから異なるのがノースブリッジとサウスブリッジをつなぐバスの仕様だ。従来はAlink Express II(PCI Express x4×2)だったのが、AMD 890GXでは「Alink Express III」を採用する。ただし、現時点で、このAlink Express IIIの仕様に関しては「帯域が2Gバイト/秒」としかAMDは説明していない。これが片方向の速度とすれば従来のAlink Express IIから2倍に引き上げられたことになるが、双方向でのスペックとなると従来と同じということになる。
実際のAMD 890GX搭載マザーボードを見てみよう。今回評価機として試用したのは、ASUSの「M4A89GTD PRO/USB3」だ。大きめのヒートシンクを搭載し、USB 3.0対応のハイエンドモデルだ。

AMD 890GX搭載マザーボードの「M4A89GTD PRO/USB3」(写真=左)。2本のPCI Express x16スロットのうち上段のスロットには「VGA Switch Card」が装着されていた(写真=右)
IGP側チップの横にはサイドポートメモリも実装する(写真=左)。使われていたのはHynixの「H5TQ1G63BFR」で、容量128MバイトのDDR3-1600メモリだ。サウスブリッジチップにはSB850の刻印が確認できる(写真=右)
バックパネルのディスプレイ出力はDVI-D、HDMI、アナログRGB出力の3種類(写真=左)。製品名からも予想されるように、USB 3.0をサポートしており、バックパネルには青いUSB 3.0ポート×2が確認できる(写真=右)AMD 890GXマザーであることを示すのがグレーに着色されたSerial ATAポートだ。この付近には、“SATA 6Gb/s”という刻印もある。基板でもう1つ注目したいのが、ASUS独自機能である「MemOK」、「Turbo Key II」とともに搭載されている「CORE UNLOCKER」のスイッチだ。マニュアルによれば、複数コアのうちのいくつかをDisableにされたCPUに対し、そのDisableなコアを利用可能にするスイッチとされている。

グレーに塗られた6つのSerial ATA 6Gbpsポート(写真=左)。その上にはJMicronの「JMB361」が搭載されている。ただ、Parallel ATAの制御はSB850に依存するため、JMB361はバックパネルのeSATAを制御しているとみられる。“その手のユーザー”にはSerial ATA 6Gbps以上に注目したい、コア復活が可能な「CORE UNLOCKER」スイッチも搭載されている(写真=右)Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.