「UL20FT」を徹底検証する――5万円台の“即戦力”モバイルノートPC新旧モデルをじっくり比較(3/4 ページ)

» 2010年08月18日 10時45分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

キーボードは従来同様、タッチパッドは改善が見られる

キー間隔を離したアイソレーションデザインのキーボード

 キーボードについても従来のUL20Aと同じユニットを採用していると思われる。キー同士の間隔を広くとり、キーボードユニット表面にキートップのみを露出させたアイソレーションデザインを採用している。

 主要キーのキーピッチは約18×18ミリと十分で、利用頻度の高いBackSpaceキー、Enterキーなどが大きく確保されており、配列も比較的素直で打ちやすい。タッチ感については、キーストロークが約2ミリと浅いのをカバーするためか、わずかにスイッチの反発が強めに感じるものの、おおむね良好といえる。ただ、キーボードユニットの本体の固定は若干甘く、強めにタイプすると中央付近でたわむ感覚がある。

 パームレストとタッチパッドについては改良が見られる。UL20Aで表面を光沢仕上げとしていたパームレストは、サラッとした感触で滑りのよい仕上げに変わり、手のひらを置いたときの感触がよくなった。

 発熱の高い部品がパームレスト付近にこないよう配置し、システムに高い負荷がかかった場合でも表面が熱くなりにくい「ASUS Ice Cool Design」も健在だ。

タッチパッドはパームレストとシームレスにつながったデザインだが、細かなテクスチャでパッド領域を表現している

 タッチパッドのパッド領域は従来のドット状のディンプル加工から、より細かなテクスチャに改良され、指が引っかかるような感触が激減し、滑りがよくなった。一方、左右のクリックボタンは従来と同じ一体成形のパーツを用いており、スイッチは少し重い感触がある。

 従来同様、シナプティクスの多機能ドライバ(V7.2)をタッチパッドに導入しており、パッドの右辺/下辺を利用した縦/横スクロールのほか、2本指の開閉による「つまみズーム」、操作中にパッドの端に到達しても指を離すまで同じ方向にポインタを動かす「エッジモーション」などの機能が利用できる。

 キーボードの左奥にワンタッチボタンが用意されているのもUL20A譲りだ。このボタンは電源オン時にはASUS独自の電力管理機能「Power4Gear Hybrid」のモード切り替えに対応し、電源オフ時に押すとLinuxベースのインスタントOS「Express Gate Cloud」が起動する。Express Gateは起動時間が約8秒とWindowsよりも高速に起動し、WebブラウズやSkypeなどが手軽に楽しめる。

タッチパッドにはシナプティクスのドライバ(V7.2)が導入済みだが、対応しているマルチタッチジェスチャーは、2本指の開閉でズーム/パンを行う「つまみズーム」のみだ

確実な効果を見せるTurbo 33

 電源管理機能のPower4Gear Hybridについて、もう少し詳しく触れておこう。用途に特化した4種類のプリセットを用意し、Windows 7標準の電源プランもそれに基づきカスタマイズされている。今回のベンチマークテストでは、デフォルトで設定されていた「Entertainment」の設定を利用した。Turbo 33については、有効と無効の両方の設定でテストを行っている。

ASUS独自の電力設定機能「Power4Gear Hybrid」を搭載している。4種類のモードがあり、電源プランも各モードごとにカスタマイズしたものが用意されている。ベンチマークテストでは、デフォルトの「Power4Gear_Entertainment」を利用し、バッテリー駆動時のディスプレイ輝度は80%から40%に変更した

 また、性能面のテストに関しては、過去にレビューした「UL20A」と「UL80AG」も同じ条件でテストを行っているので、参考としてスコアを一緒に掲載した。UL20Aは超低電圧版Celeron SU2300(1.2GHz、2次キャッシュ1Mバイト)を搭載、UL80AGは旧世代ながら位置づけとしては格上の超低電圧版Core 2 Duo SU9400(1.4GHz、2次キャッシュ3Mバイト)を搭載している。

Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア
PCMark05のテスト結果。OSが64ビット版Windows 7のため、PCMarksは計測できない
PCMark Vantage x64(1024×768ドット)のテスト結果

 まずPCMark05だが、CPUとMemoryの項目ではTurbo 33無効時のUL20FTがUL20Aに負けてしまっている。特にCPUでははっきり負けているが、やはり動作クロックが低いことが影響しているのだろう。Turbo 33を有効にすると、CPUスコアは額面通り約33%性能が向上し、格上のCore 2 Duo SU9400を搭載するUL80AGに迫るスコアをマークした。GraphicsのスコアはTurbo 33にかかわらず、UL20FTのほうがUL20AやUL80AGよりもよく、新世代のIntel HD Graphicsのほうが、Intel GS45 Expressチップセット内蔵のIntel GMA HD4500MHDよりも高性能であることを実証する結果だ。

 PCMark05よりは重めの処理を中心に構成されているPCMark Vantageでも似たような結果となった。グラフィックス性能を大きく反映するGaming Suitesを除けば、やはりTurbo 33無効時のUL20FTはULA20Aよりもわずかながらスコアが低いが、Turbo 33を有効にすると、UL20Aを大きく超え、UL80AGと互角以上のスコアにまで伸びている。

 PCMark Vantageの総合スコアであるPCMarkでは、Turbo 33の効果で約24%スコアが伸びており、UL80AGを上回った。項目別に見ても、グラフィックス性能を強く反映するGaming Suites、HDD性能を計測するHDD Suites以外は26〜27%と大幅にスコアを伸ばし、UL80AGと互角以上に渡り合っている。また、Gaming SuitesではTurbo 33無効時でもUL80AG以上のスコアをマークしており、Intel HD Graphicsの優位性が分かる。

3DMark06(1280×768ドット)のテスト結果
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のテスト結果

 DirectX 9.0c世代の3D描画性能を評価するベンチマークテストである3DMark06の結果もまた同様だ。総合スコアでUL20FT(Turbo 33無効時)はUL20Aよりも約47%よいスコアが出ている。

 ただ、Turbo 33を有効にすると、スコアは逆にわずかながら低下しており、項目別で見ると、CPUスコアはCPUクロックなりに上昇している一方で、ゲームシーンの描画テストでは値が下がってしまった。これはIntel HD Graphics側のTurbo Boostの影響だろう。オーバークロックによってCPUの温度や消費電力が上がっているため、グラフィックスコアのクロックが上限まで上がらず、3D描画性能の逆転現象が起こっていると思われる。いずれにせよ、低調な結果でゲーム用途には厳しい。

 DirectX 8.1世代のゲームテストであるFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3は、CPU性能がスコアに与える影響が大きいことから、そのような逆転現象は起こっておらず、解像度が高いHigh設定では35%もTurbo 33有効時のほうがよいスコアを出した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー