サイバー犯罪は“一大産業”に――「ノートンインターネットセキュリティ2012」発表会被害者は1日100万人

» 2011年09月14日 00時00分 公開
[ITmedia]
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“一大産業”になったサイバー犯罪

ノートンインターネットセキュリティ2012

 シマンテックは9月13日、コンシューマー向けセキュリティソフトウェアの最新版「ノートンインターネットセキュリティ2012」および「ノートンアンチウイルス2012」を発表した。同日よりダウンロード版の販売を開始し、9月16日にパッケージ版を発売する。パッケージ版の実売予想価格は6480円。

 同日行われた発表会では、シマンテックでノートンサイバーセキュリティリードアドバイザーを務めるアダム・パーマー氏が登壇し、サイバー犯罪の最新調査結果を報告した。これによると、インターネット上で犯罪に遭遇する人は1日あたり100万人以上、わずか1秒の間に14人にも上る。これは1日に生まれる新生児の2倍に相当する数だ。日本では毎日3万人の被害者が発生しているという。

 金額で見ても被害は大きい。シマンテックの試算によれば、サイバー犯罪による直接的な被害額は年間1140億ドルで、これに被害者が失った時間的損失も加えると総額で3880億ドルになり、コカインやヘロインといった違法ドラッグの取り引き額を上回る。パーマー氏は「例えば、東京の街で10人のうち4人が盗みに合っていると考えれば、問題が非常に深刻だと分かるだろう。それがサイバー空間では実際に起きている」と述べ、インターネット上の脅威に警鐘を鳴らす。

ノートンサイバーセキュリティリードアドバイザーのアダム・パーマー氏(写真=左)。サイバー犯罪による被害者は1秒間に14人のペースで増え続けているという(写真=中央)。実際の被害金額と時間的損失を金額に換算した合計は、マリファナ、ヘロイン、コカインの違法取り引き金額を上回る(写真=右)

 一方、パーマー氏は日本の状況に関するユニークなデータも示した。24カ国(2万人)を対象に行った調査によれば、日本人成人の88%が「ネット犯罪の攻撃を意識し、オンライン上は安全と感じていない」と回答しており、調査対象国の平均である35%に比べれば非常に高い数字になっている(特にネット犯罪率が非常に高いといわれる国の1つ、ブラジルの53%を大きく上回っているのが面白い)。この結果を見ると日本人のセキュリティ意識は高いようだが、一方で日本人の45%が「最新のセキュリティ対策ソフトを入れていない」ことも分かった。同氏は「ウイルスやマルウェア、スミッシングといったサイバー犯罪は回避可能な犯罪だ」と強調し、最新のセキュリティソフトを導入する重要性を訴えた。

日本人の88%が「インターネットは安全ではない」という認識を持ちながら、45%のユーザーは最新の対策を行っていないという(写真=左/中央)。サイバー犯罪の傾向として、今後はスマートフォンやタブレット端末などのモバイルデバイスを狙ったものにシフトしていくと同氏は推測している。これらのデバイスは個人に関する情報を多く格納し、仕事や企業に関する情報も含んでいるためだ(写真=右)

あらゆるデバイスを保護する業界初のメンバーシップサービス「Norton One」

シマンテックコンシューマーマーケティング統括本部長のロジャー・ヨーダ氏

 続いて登壇したシマンテックコンシューマーマーケティング統括本部のロジャー・ヨーダ本部長は、現在同社が推進している「Norton Everywhere」構想について説明した。同氏は、2011年に約83万ペタバイトに到達した情報総量が今後ますます増加し、携帯電話の販売台数がPCを上回る中で、「人々は複数のデバイスを複数の場所で使っている。従来のPCに対するように一カ所のデバイスを保護するという世界ではなくなった」と述べ、デイバスやプラットフォームに依存しないセキュリティの必要性を指摘。これに対応するNorton Everywhereの一環として、個人が所有する複数のデバイスを包括的に保護するメンバーシップサービス「Norton One」を発表した。

 Norton Oneでは、PCやMac、iOSやAndroidといった複数のプラットフォームを、単一のメンバーシップと共通化されたUIで保護できる。また、個人の利用環境に合わせて、さまざまなソリューションをパーソナライズ化して利用できるのが特徴だ。ヨーダ氏はこれを「家にあるすべての(インターネット接続)デバイスがセキュリティを担保した形で管理できるサービス」と説明している。

 なお、上に挙げたPCやスマートフォン以外の、インターネットテレビや家庭用ゲーム機などがサービスインの段階で保護対象になるのかどうか、またデバイスごとにセキュリティ機能を組み込むのか、あるいはNorton DNSのような仕組みを利用するのかについては「現状で話せる段階にない」とし、回答は得られなかった。サービスの開始時期は2012年前半になる見込みという。

5つの新機能を追加、スキャンもブートもより高速に

シマンテック シェアードエンジニアリングサービス コンテンツサービスグループ コミュニティスペシャリストの鴇田宜一氏。通称“ノートンの中の人

 ノートンインターネットセキュリティ2012(以下、NIS2012)の新機能や強化点については、シマンテックのコミュニティスペシャリストである鴇田宜一氏が解説した。

 新機能は大きく5つ。まず1つ目は、同じノートンアカウントを利用して、Webベースの管理画面からNIS2012のインストールやアンインストール、アップデート、セキュリティ状態の監視などが行える「ノートンマネージメント」だ。この機能により、家庭内のすべてのPCに対して、単一の端末から保護状態を確認できる。実家の両親のためにインストールしたNIS2012を定期的にアップデートする、といった用途にも便利だ。

 2つ目は「IDセーフ イン ザ クラウド」。これまでにもWebサービスで利用するIDとパスワードを安全に一括管理する「IDセーフ」という機能はあったが、このプロファイルがクラウド上に置かれ、NIS2012がインストールされているほかのPCでプロファイルをシェアできるようになった。

新機能の「ノートンマネージメント」では、ノートンアカウントにひも付いたNIS2012を一括管理できる

 モバイルPC向けの機能も加わった。新たに追加された「ネットワークメーター設定」では、安定した高速回線の場合は限度なしで利用する、テザリング時は重要な更新だけ行うといったように、自動的に切り替えられる。細い回線でもWebブラウズなどの体験を阻害しないための配慮だ。

 4つ目は「Norton Secured」のセキュリティバッジ。GoogleやYahoo!、Bingで検索したWebサイトの安全性評価を行う「ノートンセーフウェブ」に加わった機能で、ベリサインのSSLサーバ証明書が発行されたWebサイトには「Norton Secured」ロゴが表示されるようになった。検索結果の一覧からより安全性の高いWebサイトが一目で分かる仕組みだ。

 最後の「起動マネージャ」は、ノートン360に実装されている機能と同じもので、OS起動時に実行するプログラムをオン/オフ(または延期)できる。不必要なプログラムを抑制することで起動を高速化し、ユーザーのストレスを軽減できる。このほか、メイン画面や設定画面を刷新し、「ダウンロードインサイト」に安定性の項目を追加するなど、細かい改良も施されている。

使用するネットワークアダプタごとに通信ポリシーを設定できる「ネットワークメーター設定」(写真=左)。検索エンジンの結果に対して、より安全なWebサイトを明示する「Norton Secured」(写真=中央)。OS起動時に走るプログラムのオン/オフを設定できる「起動マネージャ」。各プログラムのレピュテーションも参照できる(写真=右)

2011年版のユーザーフィードバックを受け、デフォルトのメイン画面を刷新。日常的によく使う必要最低限の機能に絞った、よりシンプルなUIに変更された(画面=左)。「拡張表示」では従来同様に詳細を確認できる。ちなみに詳細画面では2011年版で省かれたCPU使用率表示が復活している(写真=中央)。設定画面も項目ごとに画面を分け、スクロールなしで把握できる画面に整理されている(写真=右)

 一方、パフォーマンスも改善されている。NIS2012では2011年版のNortonに比べてスキャン速度で30%、ブート速度で17%、コピー速度で24%の向上が見られるという。ヨーダ氏は、Norton製品の優位を示すAV-Test.orgの性能テスト結果(2011年8月)を示し、2億人で構成される業界最大規模のレピュテーション技術や、第4世代のSONAR(ビヘイビア技術)などを挙げて、「Notonを使えばパフォーマンスとセキュリティの両方において業界1位を体験できる」と自信を見せた。

Passmark 2012によるパフォーマンステストの結果(写真=左)。AV-Conparativesによるパフォーマンス比較(写真=中央)。AV-Test.orgによる保護性能テスト比較(写真=右)

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