完成した動画を書き出す作業についても見ておこう。前述の通り、LoiLoScope 2ではタイムラインでの作業後に限らず、どのタイミングでも完成品として出力することが可能だ。オンラインでの動画共有サービスを使っている場合は、各サービスへログインからアップロード、公開までをLoiLoScope 2から直接行なうこともできる。
もちろん、DVD-VideoやBDMV形式でのディスク作成にも対応しており、テンプレートを使った簡単なメニュー付きディスクも作れるが、こちらは一通りの機能にとどまるという印象だ。
また、カメラへの書き戻しについても、LoiLoScope 2でできることは「再エンコードなしで書き戻し可能なファイルを出力する」ところまで(書き戻し自体は別途ツールが必要)なので、やはりYouTubeやFacebookといったサービスへのアップロードを主目的として想定していることがうかがえる。出力可能なファイル形式の一覧は下表の通りだ。
LoiLoScope 2が対応する出力形式 | |
---|---|
動画 | wmv、mp4、mpeg2、f4v、3gp、avi |
静止画 | jpeg、png |
カメラ用動画ファイル | AVCHD(mts)、HDV(m2t)、DV(avi) |
デバイス向けファイル | DVI、携帯電話(3gp、3g2)、PSP、iPod、iPhone、AppleTV、PS3(mp4) |
動画共有サイト | YouTube、ニコニコ動画、facebook、Vimeo |
LoiLoScope 2は、最新の編集ソフトらしく、PC内蔵のハードウェアを使ったエンコードの高速化技術も抜かりなく搭載している。利用可能なのは第2世代Core iシリーズ(開発コード名:Sandy Bridge)の統合グラフィックスに含まれたIntel Quick Sync Videoと、NVIDIAのGPUがサポートするCUDAだ。どちらも映像をMPEG-4 AVC/H.264で出力する場合に、この機能を使ってエンコードするかどうかが選べる。
実際に2機種のPCを使ってこの機能を試してみた。詳細は表の通りだが、Intel Quick Sync Videoは、不使用の場合より約1.8倍も高速に処理が完了した。一方、CUDAのテストでは、使用したPCのGPUがそれほど強力でないせいか、CPUでエンコードするよりも時間がかかる結果となった。ただし、CUDAでのエンコード中はCPUの使用率が常時30%を割り込むところまで下がるので(CPUでエンコードするとほぼ100%に張り付いた)、出力中も別の編集作業を平行して行なえるメリットはある。
MPEG-4 AVC/H.264エンコードテストの結果 | ||||
---|---|---|---|---|
テスト名 | 使用機種 | オン | オフ | スペック |
Intel Quick Sync Video | FMV ESPRIMO FH56/DD | 7分44秒 | 4分15秒 | Core i5-2520M(2.5GHz/最大3.2GHz)、4Gバイトメモリ、Intel HD Graphics 3000 |
CUDA | VAIO Z VPCZ13AFJ | 12分40秒 | 9分10秒 | Core i7-640M(2.8GHz/最大3.46GHz)、4Gバイトメモリ、GeForce GT 330M |
パフォーマンスの話が出たので、LoiLoScope 2全体を通しての軽快さについてもコメントしておく。今回は上で挙げた2台のPCで作業を行なってみたが、ペンツールなどを使って複雑な効果をかけた状態でも、AVCHDカメラや、デジタル一眼レフカメラ「EOS 5D Mark II」で撮影した動画素材をいずれもストレスなく再生できた。
ただし、LoiLoScope 2はネイティブ編集を基本としてはいるが、初期設定ではH.264の素材に限り、画質を落としてプレビュー時の負荷を下げる機能が有効になっており、これを無効にすると、複雑な効果をかけた部分では若干のコマ落ちが感じられた。
一方、タイムライン上をマウスでドラッグして、プレビュー画面の表示をマウスの操作に追従させる「スクラブ」の操作はかなり荷が重いようで、H.264の画質を落として再生する設定でも、スムーズなスクラブ再生は望めなかった。もっとも、多少ともストレスを感じた操作はこの程度で、素材のプレビューもスッスッと軽快に表示されるなど、全体を通して動作のもたつきは感じなかった。
個人向けの動画編集ソフトを取り巻く状況は確かに厳しい。そこでこれまで各ソフトメーカーは、何とかユーザーの注目を集めようと、さまざまな取り組みを行なってきた。
ユーザーの手をなるべくわずらわせないよう、自動編集の機能を充実させるのも1つの方法だ。なるほど、これはこれで面白いが、自動化には、推進すればするほどユーザーの存在が疎外されていく危険が潜んでいる。それに、編集の必要に迫られる機会こそ少なくなったものの、ユーザーは創造する意欲やアイデアをなくしてしまったわけではない。
だから、動画編集の本当の楽しさをユーザーに味わってもらうには、創作意欲を刺激しつつも、ソフトの操作や使い勝手が原因で挫折してしまうことのないよう、作品の完成に至るまでの障害をできる限り取り除く努力こそが必要なのだ。
LoiLoScope 2が到達した世界をいちど見てしまうと、従来の、特にプロ向け製品をベースに開発された個人向け動画編集ソフトには、この努力のあとが(ベースとなるプロ向け製品の縛りゆえに)個人ユーザーに伝わりにくい、という弱点があったように思う。
LoiLoScope 2は、画面構成や使い勝手の縛りにとらわれることなく、独自のユーザーインタフェースによって動画編集の本質に迫った製品だ。見た目は奇抜でも、編集の基本的な作法には忠実で、作品を作りながら、動画編集にとって本質的に必要なことや覚えるべき手順といった「作法」をきっちり理解できるから、これから動画編集を始めたい人の教材としても優れている。
2011年9月21日現在の価格は、パッケージ版が1万7640円(発売記念価格9800円)、ダウンロード版が9800円(発売記念価格7980円)だ。「動画編集に興味がないわけじゃないけど、面倒そう」と思っている向きは、30日間有効の無料体験版も用意されているので、ぜひ触れてみてほしい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.