2012年のアキバ自作街は、AMDの新世代GPU「Radeon HD 7000」ファミリーのシングル最上位となる「HD 7970」を載せたグラフィックスカードの発売で幕が開けた。HD 7970カードはアイドル時の消費電力が3ワットという高い省エネ性(ピーク時は250ワット)と、前世代HD 6000ファミリーからの大幅な性能アップが評判を呼び、発売日の1月9日から大ヒットを飛ばす。そして、2月まで供給が追いつかないほどのペースで売れ続けた。初回の価格は5万円台前半から7万円弱で、当時複数のショップが「ハイエンドにしては割安」と語っている。
2月にはミドルレンジクラスも登場。1万円台後半で買える「HD 7770」搭載カードと、補助電源なしで使える1万円台半ばの「HD 7750」搭載カードが投入され、「前世代のハイスペッククラスに匹敵する性能を備えて、価格と消費電力はミドル的という優等生です」(ソフマップ秋葉原本館)と高く評価されていた。
ある店員氏のコメントが当時の状況を端的に表現している。「ライバルのNVIDIAは新世代GeForceの投入が遅れているようです。HD 7970の出来がいいだけに、早くよいものを投入しないとかなり打撃を受けると思います。このあたりの勝負も見どころですね」。
一方、新世代GeForceの600シリーズがデビューしたのは3月22日。シングルGPUハイエンドの「GeForce GTX 680」を搭載したグラフィックスカードが、6万円弱の価格で登場した。負荷や温度状況などによって自動でコアやメモリクロックを引き上げる「GPU Boost」機能が話題となり、こちらも初回から大ヒットを記録。品薄傾向の強さと評判は、多くのショップでRadeon HD 7970を凌いでいた。
フェイス秋葉原本店は「従来のGeForceハイエンドのネックだった爆熱爆音を一気に解消したのが、人気の基礎を作っていると思います。そのうえ、冷却具合によって性能が上がる機能はカスタム欲をそそります。かなり面白いカードですね」と褒めちぎる。
その後も5月には、デュアルGPU構成の「GeForce GTX 690」カードが10万円弱から12万円弱で、シングルGPU下位の「GeForce GTX 670」カードが4万円台前半から5万円弱で各社から発売された。夏場になると「ハイエンドはGeForceで決まり」という感想を当たり前に耳にするようになった。
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