アップルが3月14日に配信した「OS X Mountain Lion 統合アップデート v10.8.3」では、Boot CampがようやくWinodws 8のインストールに正式対応した。とはいっても、検証目的や趣味でMacにWindows 8を入れるような人は、すでにConsumer Previewで試しているだろう。今さら「入れてみました!」と言ったところで「あ、はい」という感じの冷ややかな反応が返ってくることは想像に難くない。
結局のところ、OS Xを搭載するMacにタッチ対応製品がない以上、わざわざWindows 8をインストールしてまで使う必要があるのだろうか、という疑問が残ってしまうのだ。仕方なくWindowsのソフトウェアを使う必要があるのなら、これまで通りWindows 7でいいじゃんね、というわけだ。
また、Windowsに詳しくない善良なMacユーザーの方がこの手の記事を読んで、「せっかくWindows 8を入れたのにタッチ操作できないじゃないか!やっぱりWindowsはダメだ!」などと、Windows 8発売直後にテレビでも報道された“不幸な勘違い”を繰り返し、いたずらにマイクロソフトに対する敵がい心を植え付けてしまわないとも限らない(注:Windows 8は革新的で未来的なOSですが、そこまで革新的で未来的なOSではありません)。
と、ここまで考えてから「いや待て、そもそもMacでもタッチ操作ができるようにしてしまえばいいのか」というアイデアが頭をよぎった。そうだ、逆に考えるんだ。
実は、タッチ非対応のディスプレイをタッチ化するツールが存在する。それがMVPenテクノロジーズの「Touch 8」だ。軍事技術を応用したというデジタルペン「MVPen」を開発したイスラエルの企業、といえば思い出す人もいるだろう。
同社の新製品であるTouch 8は、赤外線と超音波を用いた位置検出でディスプレイへのタッチ操作を読み取る仕組みで、「ものすごく手軽」に、タッチ非対応のディスプレイでもWindows 8のタッチ操作を可能にしてくれる、とても便利な製品なのだ。
今回はこのTouch 8を使って、13型MacBook Pro RetinaにWinodws 8をインストールし、タッチ操作に対応するWinodwsストアアプリをいくつか試してみる。
Touch 8を紹介する前に、まずは13型MacBook Pro RetinaにWindows 8をインストールする。PC USERの読者に今さらBoot Campアシスタントの使い方を説明するのも気が引けるが、実はインストール時にいくつかつまづいた点があるので、同様の環境でWindows 8のインストールを検討している人のために少しだけ補足しておく。
Windows 8のインストール手順はこれまでと同じで、まず最初にBoot Campアシスタントを起動し、1)インストールディスクの作成、2)Windowsサポートソフトウェアのダウンロード、3)Windowsパーティションの追加を行う。1と2ではそれぞれUSBメモリが必要になるが、1は高速なUSB 3.0対応メモリを使うとインストールがサクサク進むのでオススメ(イメージのファイル容量は3.53Gバイト)。一方、Windowsサポートソフトウェア用のUSBメモリは余っている適当なものでいいだろう(ファイル容量は482Mバイト)。
1の手順では、ダウンロード購入したWindows 8のISOイメージ、または外付けDVDドライブにインストールディスクを挿入して「ディスクユーティリティ」でイメージ化したファイル(イメージフォーマットをDVD/CDマスターに設定し、できたファイルの拡張子をisoに変更しておく)を指定すればいい。2の手順ではWinodwsサポートソフトウェアがダウンロードされるのをひたすら待つ。最後の3の手順では、Windows 8用の領域を確保する際、パーティションサイズをあまり小さく設定すると途中でインストールが止まるので注意しよう。今回は64Gバイトに設定した。
さてここまで特に迷うことはないのだが、再起動しWindows 8をインストールする段階で(「Windowsのインスール場所を選んでください」の画面)、BOOT CAMP用に作成したパーティションをフォーマットして「次へ」をクリックしても「新しいシステムパーティションを作成できなかったか、既存のシステムパーティションが見つかりませんでした……」というメッセージが表示されて、先に進めなくなってしまった。Googleで検索すると同様の報告は多いようで、USBメモリを抜く→Boot Camp用のパーティションを再フォーマット→USBメモリを挿す→「次へ」という手順でこの問題を解決できた。これがまず1点。
もう1つは、Windows 8の初期設定画面までくると、画面の6分の5ほどが黒く表示されてしまうというもの。以前iMacでもATIのドライバがないために画面がブラックアウトする不具合があったなぁなどと思いながら、こちらもGoogleで検索すると、MacBook Pro Retinaで同様の報告があり、これはHDMIで外部ディスプレイに出力することで回避できた(ちなみに出力先のディスプレイは電源が入っている必要はなかった)。
無事Windows 8のインストールが終わったら、手順2でダウンロードしたWinodwsサポートソフトウェアを展開すれば完了だ。ちなみにBoot CampのバージョンはVersion 5.0 Build 5033だった。
Windows 8をインストールできたところで、Touch 8を使ってタッチ操作ができるようにしていこう。といっても、Touch 8の専用ユーティリティなどはなく、ベースユニットをMacBook Pro Retinaのディスプレイ左脇に設置し、USBで互いを接続するだけで、付属のデジタルペンによるタッチ操作が可能になる。とても簡単なのだ。
ただ、いくつか気になった点もあるので挙げておこう。まず1つは、ベースユニットを吸着させる磁気プレートが両面テープによる固定になっており、粘着力が落ちると外れやすいこと。交換用の両面テープは付属しないので、ここでは市販の強力な両面テープに張り替えて使用した。もう1つは、磁気プレートのサイズ分、液晶ディスプレイの額縁にスペースが必要なこと。ディスプレイの枠がフラットになっていないノートPCの場合も、ベースユニットをうまく装着できない可能性があるので注意。
なお、今回試した13型MacBook Pro Retinaは、ディスプレイのフレームが若干突起しているがベースユニットは問題なく装着できた。が、磁気プレートのわずかな厚みの分だけ、液晶ディスプレイがきちんと閉まらなくなったことも付け加えておく。
さて、実際にデジタルペンでタッチしてみたところ、想像していた以上にスムーズに操作できた。チャームの呼び出しや画面スクロールはもちろん、ある程度は文字や絵を描く作業も行える。ペン先がスイッチになっているため、画面に対して垂直に近い形でタッチする必要があるものの、慣れてしまえばかなり自然に操作できるはずだ。また、マルチタッチではないので写真の回転などは無理だが、ペンのサイドにあるスイッチを押しながら入力することで拡大/縮小にも対応する。
下に掲載した動画を見れば、かなり“いい感じ”で操作できるのが分かってもらえると思う。
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