ヘリウム封入新技術「シールドストレージ」、ストレージ密度業界最大のPC向けHDDなど──HGST戦略説明会「Future Pulse 2013」(1/2 ページ)

» 2013年06月05日 20時19分 公開
[岩城俊介,ITmedia]
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ヘリウムを封入した新HDDを開発中、コールドストレージ需要の高まりに対応

 HGSTは6月4日、同社のストレージ戦略を説明するイベント「Future Pulse 2013」を実施。HGSTジャパンの堀家正充社長、HGST プロダクトマーケティング担当ブレンダン・コリンズ氏らが登壇し、現在のストレージ市場や技術トレンドについて説明した。

photophoto HGSTジャパンの堀家社長、HGSTのブレンダン・コリンズマーケティング担当副社長

 HGSTは、現在ストレージシェアトップ Western Digital(WD)傘下のストレージメーカー。かつてIBMと日立製作所のHDD事業が統合して設立された“日立GST(日立グローバルストレージテクノロジーズ)”として展開。2011年にWDによる買収が発表され、2012年5月に完了。日本法人の名称を日立グローバルストレージテクノロジーズからHGSTジャパンに変更した。

 なお2013年現在、HGSTとWDは連携・技術供与などは行っておらず、同グループながらそれぞれが独立事業体として、互いを競合相手にビジネスを続ける姿勢を取っている。WDグループのスティーブ・ミリガンCEOをトップに、HGSTのマイク・コルダノ社長とWDのティム・レイデン社長が両翼を担う配置とし、日本法人のHGSTジャパンは主に製造を担うアジア各拠点とは別に研究開発の拠点として機能している。

photophotophoto HGSTはストレージ最大手 Western Digital傘下の企業だが、WDとは財務を除いて、技術供与や連携などは現在のところ行っておらず、それぞれが独自に製品開発を行っている

 ストレージ市場は、接続デバイスの増加、クラウドサービスの成長とデータセンター需要のさらなる活性化、ビッグデータの利活用シーンの創造などにより、全世界で保存されるデータ量はゼタバイト(ZB)に達する時代がすぐ到来すると予測。合わせて、エンタープライズ向けストレージが現時点の記録密度の伸びを上回るほど需要が増加すると同社は見ている。

photophotophoto 2020年までのストレージ市場トレンド
photophotophoto 需要が急増するビッグデータビジネス関連。ストレージは多様性(Variety)/ボリューム(Volume)/スピード(Velocity)の3Vが望まれる。個人SSD市場は2016年に1億台出荷規模となり、容量単価も1Gバイトあたり0.26米ドル(約26円)ほどまで下がると予測される

 エンタープライズ向けストレージ、特にITシステムに加え、クラウドサービスを提供する大型データセンターにおいては、高速アクセスを要求するデータ処理に最大12Gbpsと高速なSerial attached SCSI(SAS)接続のSSD「Ultrastar SSD800MH」シリーズを、高速処理を必要としないデータはリードパフォーマンスを下げる代わりに保管を主軸に保存容量と保存の信頼性、低消費電力性能を高めたコールドストレージ(テープメディアの代替)の積極推進・展開をしていく考えだ。コールドストレージ製品向けに、HGSTはボディ内部をヘリウムで満たした独自の新世代ドライブ「シールドドライブ」の開発も進める。

 シールドドライブは、空気比7分の1の密度とするヘリウムを封入することにより、発熱と消費電力を低減できる効果があるとするHGSTの独自技術。低発熱のマージンを生かし、同じ厚さでプラッタ数を増やすことで同体積比での記録容量を拡大、さらにテラバイトあたりの消費電力量を49%低減できる効果があるとする。HDD技術は記録密度の伸びが鈍化し、かつ磁気記録技術の向上がすでに困難となっている現状、「革新的な技術の1つ」(コリンズ氏)とうたう。

photophotophoto 内部にヘリウムを密入したHDDの新技術「シールドドライブ」。コールドストレージニーズに向けて開発されている
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