コンシューマー向け製品のストレージ、特にPC向けはドライブのさらなる薄型化とレスポンス向上がテーマとする。2013年5月に発表した、ストレージ密度(容積あたりの記録容量)を最大クラスとする容量1.5Tバイトの2.5インチHDD「Travelstar 5K1500」は、従来と同じ9.5ミリ厚で3枚プラッタ構成とする点が特長。従来モデルの3プラッタHDDは12.5ミリまたは15ミリ厚の製品であり、同1Tバイトモデル(2プラッタ/9.5ミリ厚)とサイズ、および内部ディスクの間隔は同じながら、基板の小型化/高集積化により実現した。
このほか、業界唯一とする7ミリ厚の極薄フォームファクタを用いたHDDの訴求も推進。7ミリ厚HDDは2012年1Qの約1000万台単位から、2013年2Qは2500万台単位に市場が拡大したようで、Ultrabookをはじめとする薄型ボディを推進するノートPCへの採用例が増えたのが理由の1つ。同じく採用例が増えているSSDに対し、容量単価と容積あたりの記録容量に勝るHDDならではの利点を生かした普及価格帯向けモデルでの採用を促し、シェア拡充を図る考えだ。
なお、SSDとHDDの中間を担う「デュアルドライブ/ハイブリッドドライブ構成」について、HGSTは「現在のところ、速度パフォーマンスに利点があるHDD+SSDのデュアルドライブ構成を推す」(HGSTジャパン製品企画部の出来浩部長)考えを示した。
デュアルドライブ構成とは、高速なSSDを別途最大6GbpsでのSerial ATA接続し、それをHDDのキャッシュとして使いることで速度と容量を両立する方法。例えば、インテルプラットフォームのノートPCにIntel Rapid Storage Technology(IRST)の一機能Intel Smart Response Technology(ISRT)を用いた構成として採用され、すでに数多く製品化されている。対してハイブリッドドライブは、HDD内部にNANDフラッシュを内蔵し、それをキャッシュとして用いる製品だ。
どちらも考え方は同じで、コストと構成システムの難易度などもほとんど同じ。ただ、2つのSerial ATAインタフェースを効果的に活用する分、現時点ではパフォーマンスに勝るデュアルドライブ構成にアドバンテージがあるというのが同社の考えだ。同社テストによると「Travelstar Z7K500」(HDD)+32GバイトSSD+NVELO製キャッシュソフトウェアを用いたシステムは、プレクスター製256GバイトSSDと同等の性能を発揮し、他社ハイブリッドドライブ比で40%高速とする結果が出たことでこの提唱に至ったという。
もちろんハイブリッドドライブも省スペースかつ1インタフェースで搭載できるメリットがあり、今後の性能向上も見込まれるだろう。また、SSDも容量単価は下がっていくと思われるが「HDDとSSDの容量単価が交わることはない。HDDが優位な部分は今後も徹底して高めていく。また、HGSTブランドもなくならない」(コリンズ氏)と、コンシューマー製品においては、業界で唯一7ミリ厚の500GバイトHDD、および9.5ミリ厚1.5TバイトHDD製品を用意する強みを生かし、今後も2.5インチHDDの展開を積極推進する構えを示した。
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