計測結果を踏まえ、実際にiPad AirとiPad mini Retinaで同じ画像を表示し、発色の傾向をチェックした。いずれも輝度は約120カンデラ/平方メートルに固定している。
これらの画像は、sRGBを表示できる環境で実物に近い発色が得られるよう微調整して現像したが、ディスプレイやソフトウェアによって見え方が大きく変わることもあり、色再現性が正確とはいい難い。表示傾向を把握しやすくするための参考画像で、評価は写真の解説文を確認していただきたい。
ホーム画面の表示:左がiPad Air、右がiPad mini Retina。iPad mini Retinaは青系の色域が広いため、背景画像の見え方はそう変わらないが、FaceTimeアイコンの緑やiTunes Storeアイコンの紫が違って見える
モノクログラデーションの表示:白から黒までリニアに変化するモノクログラデーションの表示はどちらも整っている。モノクロ表示では色域の違いによる影響はなく、iPad AirもiPad mini Retinaも見た目は変わらない
写真サンプル3(ブルー系):空と海の青が目立つサンプル。iPad Airは微妙なトーンの青空と、エメラルドグリーンの海をうまく再現できている。iPad mini Retinaは青空に深みがなく、少し緑がかぶっているように見える
白表示:輝度を約120カンデラ/平方メートルに固定して、全画面に白を表示した。高輝度の設定ではまぶしくて気づかないが、輝度を下げて単色を表示すると輝度/色度ムラが判別しやすくなる。画面を90度右回りに回転した状態で、iPad Airは右上の一部が明るく、iPad mini Retinaは周辺の輝度が少し落ちているのが分かる。とはいえ、写真ではムラが強調されており、目視では画面をじっくり見て確認できる程度だこのように、iPad AirはsRGBに近い色再現が可能で、特に高彩度の色でiPad mini Retinaに差をつけている。ただし、iPad mini Retinaも階調再現性とカラーバランスは整っており、1台だけで見た場合は自然な発色で問題ない。
以上の結果から、画面サイズと発色で勝るiPad Airは、色鮮やかな写真や雑誌、図鑑、映画などのコンテンツをじっくり味わうのにうってつけだ。手で持って使う場合も、従来より薄型軽量化したボディが疲労感を軽減してくれるので、コンテンツに集中しやすい。ビジネスシーンでは画面を見せる相手に、インパクトを与えられるだろう。
一方、片手で持てるiPad mini Retinaの小型軽量ボディは、やはり高い携帯性が最大の魅力。iPad Airも10型クラスのタブレットとしては非常に薄くて軽いものの、本体サイズの違いは、ほかの荷物と一緒に持ち運ぶ際に大きく影響してくる。iPad mini Retinaのサイズならば、なんとか携帯できるといったシーンも少なくないはずだ。
色再現性は初代iPad miniとほとんど変わらないが、Retinaディスプレイの採用により、電子書籍や写真を高精細に表示できるようになったのはうれしい。いつでもどこでも持ち運んで、さまざまなコンテンツを高精細に表示できるようになり、パフォーマンスも向上しているのだから、モバイルシーンでの快適さはグッと向上している。
理想的なのは、状況に応じてサイズの違う2台のiPadを使い分けることかもしれないが、どちらか1台しか選べないという場合は、カタログスペックに現れない発色の違いも頭の片隅にとどめておいていただきたい。
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