前回のプロ用測色器を使った検証では、第3世代の“新しいiPad”が初代iPadとiPad 2を大きく上回る色域を備えており、色温度、ガンマ、色域のどれもがsRGB規格に近い値であることが分かった。
i1 Proで計測したiPadの色温度/ガンマ(輝度は120カンデラ/平方メートルに固定) | ||
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製品名 | 色温度 | ガンマ |
新しいiPad | 6400K | 2.1 |
iPad 2 | 6900K | 2.3 |
初代iPad | 7100K | 2.2 |
i1 Proで計測したiPadの輝度最高値/最低値(輝度の単位は〜カンデラ/平方メートル) | ||||
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製品名 | 最高輝度設定 | 最低輝度設定 | ||
最高値 | 最低値 | 最高値 | 最低値 | |
新しいiPad | 419 | 0.5 | 3.5 | 0.1 |
iPad 2 | 345.1 | 0.4 | 9.9 | 0.0 |
初代iPad | 323.9 | 0.3 | 27.4 | 0.0 |
今回はその結果を踏まえ、実際に新旧3台のiPadで同じ画像を表示し、発色の傾向をチェックしていく。ただし、3台のiPadを見比べるだけでは色の違いがどのような意味を持つのか分かりにくいため、色の基準となる液晶ディスプレイとして、ナナオの24.1型ワイド液晶ディスプレイ「FlexScan SX2462W-HX」を用意し、これにも同じ画像を表示して比較した。
以下の画像は初代iPad、iPad 2、新しいiPad、そしてFlexScan SX2462W-HXに同じ画像を表示し、それをデジタルカメラで撮影したものだ。iPadの輝度は測色器を利用し、どれも約120カンデラ/平方メートルに固定した。表示する画像には、どれもsRGBプロファイルが埋め込んである(iOSはICCプロファイルに対応していないが、FlexScan SX2462W-HXにはPCからPhotoshopで画像を表示し、ICCプロファイルを読むため)。
FlexScan SX2462W-HXはナナオ独自のカラーマネジメントツール「EIZO EasyPIX」を利用し、ハードウェアキャリブレーションを行った状態だ。FlexScan SX2462W-HXはAdobe RGBカバー率98%の広色域対応モデルだが、高精度なsRGB色空間変換機能も備えている。今回のテストに際しては、色空間sRGB、輝度120カンデラ/平方メートル、色温度6500K、ガンマ2.2の設定でキャリブレーションし、各値がsRGBに近く調整されていることを確認済みだ。
これらの画像は、sRGBを表示できる環境で実物に近い発色が得られるよう微調整して現像したが、機器やソフトによって見え方が大きく変わることもあり、色再現性が正確とはいえない。あくまで表示傾向を把握しやすくするための参考画像で、評価は本文を確認していただきたい。
また前回同様、これらのテスト結果は筆者が所有する3台のiPadによるもので、製品の個体差や液晶パネルベンダーの違いなどは考慮していない。初代iPad、iPad 2、新しいiPadにおける表示傾向の一例である点に注意していただきたい。
白から黒までリニアに変化するモノクログラデーションでは、測色器を用いたテスト結果通りの見え方となった。sRGBをほぼ正確に表示するFlexScan SX2462W-HXの発色と、新しいiPadの傾向がよく似ている。一方、初代iPadは色温度が高めで少し青白く、iPad 2はやや赤紫がかぶってしまった。厳密に見ると、新しいiPadは色温度6500Kの白から若干黄色に寄っている(色温度が低い)が、ほかの2台よりはずっとsRGBに近い。
リニアに変化するカラーグラデーションの表示では、新しいiPadの広色域がよく分かる。初代iPadとiPad 2に比べて、青や緑、黄の彩度がかなり高く、FlexScan SX2462W-HXのsRGB表示に近い豊かな発色が見られた。初代iPadとiPad 2は、単体で見るぶんには自然なグラデーションなのだが、新しいiPadを隣りに置くと、あっさりした発色に感じてくる。
ちなみに、Adobe RGBプロファイルを適用した同じグラデーションパターン画像も3台のiPadで表示してみたが、sRGB画像では見られない階調の乱れ(縦じま状のバンディングなど)が暗部から中間階調域で見られた。フォトビュワーや電子書籍リーダーとしての利便性を考えると、やはり今後はICCプロファイルによるカラーマネジメントのサポートをiOSにも期待したいところだ。
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