一方、同社のモバイルSoC「Tegra」の次期製品「Tegra K1」に関しては、その演算性能が326GFLOPSであることが明らかにされたほか、同SoCを搭載したソフトウェア開発プラットフォーム「Jetson TK1」の受注を開始したことを明らかにした。
このJetson TK1には、車載カメラの画像から歩行者や障害物を認識したり、道路標識などを認識してドライバーを補佐する機能や、仮想現実(AR)、ロボティックスなどの用途にGPUの演算性能を生かせるようにするCUDA開発環境「Visionworks」も付属し、モバイル環境におけるGPU利用を加速させる。同プラットフォームの米国における市場価格は、Tegra K1のCUDAコアの数と同じ192ドルに設定され、日本国内でも発売が予定されている。
また、ファン氏はTegra SoCのロードマップを公開し、2015年にはGPUコアにMaxwellを統合する「Erista」(エリスタ)を投入する計画を明らかにした。Eristaは、Tegra K1のコードネームであるLoganの子供とされるキャラクターで、その名称からTegara K1の機能強化版となる可能性が高い。
なお、2013年に公開されたSoCロードマップでFinFETを採用するとされた“Parker”(パーカー)については、Eristaの後継製品として、現在もロードマップに留まっているという情報もある。
ファン氏は、このTegraを自動車向けに積極展開する。同氏はTegra K1の演算性能を使えば、自動車に搭載したカメラの映像から、空きスペースを解析したり、車を無人で運転させることももできるとして、Audi(アウディ)と共同開発を進めている自動運転コンセプトカー「Audi connect」を、Tegra K1ベースのシステムで実際に動かして見せた。
Audiで先端技術の開発を統括するアンドレアス・ライヒ氏は、かつては大型コンピュータをトランクスペースに搭載することで自動運転の研究を進めていたが、最新のコンセプトカーではTegra K1ともう1つのARM CPUを搭載した小さなコンポーネントで自動運転ができるようになったと、Tegra K1の演算性能の高さをアピール。GPUの演算性能を積極的に利用することで、自動車の未来も大きく切り開いていけるという見通しを示した。
ファン氏は、初のCUDA対応SoCとなったTegra K1の投入によって、HPCやPC、クラウド製品だけでなく、自動車や省電力の組み込み機器でも、GPUの優れた並列演算性能が生かせるようになると話す。また、今後はトップ・ツー・ボトムで最新のGPUアーキテクチャを採用できるようにすることで、GPUコンピューティングの裾野をさらに拡大していく意向を示した。
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