ペン入力に優れたクリエイター向けWindowsタブレットとして、このVAIO Z CanvasとCintiq Companion 2(ワコム)のどちらを選ぶか──そんな吟味を発売前から重ねている漫画家やイラストレーターの方々もいることだろう。
毎度の主張ながら、道具の使い勝手は感じ方が人それぞれであり、「自分で触って確かめる」のが一番。購入検討中の読者の方にはぜひとも自分で使い比べてほしいが、ここでは参考までに筆者の感想を述べることにする(繰り返すが、VAIO Z Canvasはまだ試作機なので、その点も十分注意してほしい)。
まずディスプレイについてだが、VAIO Z CanvasはAdobe RGBカバー率95%という液晶パネルの美しさが印象的だ。画素密度に関してもCintiq Companion 2を上回っており、精細さが際立っている。画面サイズについては、13.3型のCintiq Companion 2のほうがいくばくかの広さを感じる(Cintiq Companion 2は横が長く、VAIO Z Canvasは縦が長い)。
そして、視差はVAIO Z Canvasが圧倒的に小さい。手書きのダイレクト感を重視するのであれば、VAIO Z Canvasを一度試してみるべきだ。とはいえ、Cintiq Companion 2もCintiqシリーズの中では解像感はピカイチであり、従来のCintiqユーザーをうならせるだろう。
ペンについては、電磁誘導方式で筆圧レベルが最大2048段階のCintiq Companion 2には長年ペンタブレットを開発してきたワコムならではの安定感があり、傾き検出なども含め、安心して狙った通りの線や絵を描ける(視差はあるが)。
一方のVAIO Z Canvasは、超低速でペンを動かすと線がゆがみやすいといったN-trig製デジタイザスタイラスのクセがあるが、VAIO独自のチューニングで描き心地や精度はかなり改善されており、これであれば本気の漫画・イラスト制作にも使えると感じた。電磁誘導方式のデジタイザが苦手とする画面端での描画ズレが発生しないのもよい。
マシンの使い勝手としては、VAIO Z Canvasは圧倒的なマシンパワーや、柔軟に角度を設定できるスタンド、タッチ機能のオン/オフボタンの搭載などがイラスト制作時に役立つ。また、マシンの静粛性も高い。対するCintiq Companion 2は、単体で使えるだけでなく、通常の液晶ペンタブレットのように他のPCやMacにつなげて利用できるのが素晴らしい。また、豊富なエクスプレスキーでキーボードを使わずに各種の操作ができるメリットがある。
筆者の独断と偏見で印象まとめるとこんなところなのだが、どちらも一長一短で、「もうお金があるひとは両方買えばいいよ!」と投げやりな気持ちすら湧く。もちろん、両モデルとも価格帯は20〜30万円台と、おサイフには厳しい。まだ試作段階のVAIO Z Canvasが、これから発売までにどれだけ進化するのか楽しみだ。
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