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液晶ペンタブ業界に嵐を巻き起こす!?――「VAIO Z Canvas」を漫画家が速攻レビューこれ、本気で描けますよ(1/5 ページ)

» 2015年02月17日 11時30分 公開
[山田胡瓜ITmedia]

著者紹介:山田胡瓜

月刊アフタヌーンの漫画新人賞「アフタヌーン四季賞2012年・冬」で四季大賞を受賞。PC USERでIT系漫画「バイナリ畑でつかまえて」を連載しつつ、ペンタブレットの製品レビュー執筆者としてもしばしば出没する。Twitterは@kyuukanba


「VAIO Prototype Tablet PC」改め「VAIO Z Canvas」で描いてみた

 液晶ペンタブレット市場ではワコムの「Cintiq」が圧倒的なシェアを持っており、漫画家・イラストレーター御用達のブランドとなっている。しかし近年では、筆圧ペンに対応したWindowsやAndroidのタブレットが続々と登場。さまざまなタブレットで“液晶ペンタブレット的なお絵描き”が楽しめるようになってきた。

 そうした状況の中、ソニーのPC事業を引き継ぎ誕生したVAIO株式会社が10月に「VAIO Prototype Tablet PC」を発表した。同モデルは、クリエイターをターゲットにしたWindowsタブレットの試作機。A4ペーパーサイズに15インチMacBook Pro並の高パフォーマンスを詰め込んだうえ、ペン入力によるクリエイティブな作業を念頭に置いて開発したことがメーカーから明かされ、PCファンやVAIOファンだけでなく“絵師”方面からも注目を集めた。

 そして2月16日に「VAIO Z Canvas」という製品名で発売が正式に決定。5月発売を目標に開発が進んでいる。

「VAIO Prototype Tablet PC」改め「VAIO Z Canvas」。クリエイター向けのペン機能付き12.3型Windowsタブレットだ。このサイズでは圧倒的な性能を備えていることが最大の特徴となる

 筆者は今回、このVAIO Z Canvasの試作機を使わせてもらう機会に恵まれ、数時間ではあるが実際に“お絵描き”を試すことができた。あくまで試作機のため、細かな挙動などについては真価を図りかねるが、それでも「これ、本気でお絵かきできますよ……!」と静かな興奮が湧き上がった。VAIO Z Canvasには絵描き目線でどんなメリットがあるのか──ファーストインプレッションをお届けしよう。

※本レビューは試作機によるもので、製品版では仕様等が変更される場合があります

数時間の試用だったが、試作機でも十分な手応えを感じる出来栄えだった。画面は「CLIP STUDIO PAINT EX」

高精細液晶と視差の小ささが生み出す圧倒的なダイレクト感

 VAIO Z Canvasは2560×1704ピクセルの12.3型IPS液晶ディスプレイを採用しており、250ppi(pixels per inch:1インチあたりのピクセル数)という精細な表示を実現している。12.3型と聞くと、絵を描くには手狭な印象を受ける人も多いと思うが、解像度が高いために絵の細かい表情もよく分かり、絵をそれほど拡大せずにサクサクと作業ができる。筆者は、同モデルの画面サイズでも十分に「本気で使える」と感じた。

 ただ、資料を表示しての作画や、全体像を別ウインドウで確認しながら作業するとなると、外部ディスプレイが必要だろう。ちなみに、外部出力としてはMini DisplayPortとHDMIのポートをそれぞれ搭載しており、4K対応モデルを含めて幅広いディスプレイに接続できる。

12.3型で2560×1704ピクセル表示の解像感はすばらしく、描いていて画素のギザギザなどを感じることはない
高精細なので絵の細かい表情もよく分かり、絵をそれほど拡大せずにサクサクと作業ができる

 解像感に加えて特筆すべきなのが“視差の小ささ”だ。ガラス面と液晶面との距離が非常に近いため、液晶に直接描いているようなダイレクトな感覚が得られる。これは、同機のライバルになりそうなワコムの「Cintiq Companion 2」と比較しても圧倒的だ(とはいえ、描き心地を左右するのは視差だけはないことも付け加えたい)。

 液晶の美しさも印象的だ。Adobe RGBカバー率95%をうたうディスプレイは、ノングレア処理を施しておらず、イラストをクッキリと鮮やかに映し出してくれる。これだけ広色域であれば、カラー原稿の執筆にも使いやすい。外部ディスプレイで色味をしっかりと確認しながら作業するといった場合でも、手元のディスプレイの色再現性が優れていたほうが作業はしやすいだろう。

視差が小さいため、表面ガラスのすぐ下に線が描かれ、ペン先と表示面の位置ズレを感じにくい
Adobe RGBカバー率95%をうたうディスプレイは実に濃厚な発色。他のタブレットと一線を画す広色域だ

 さらに「VAIOの設定」ユーティリティにはカラーマネジメントの設定項目もあり、色温度の変更や、市販のキャリブレーションツールを使ったカラーマネジメントが可能だ。色温度はsRGBやAdobe RGB規格の一般的な値「D65(6500K)」と印刷業界でよく使われる「D50(5000K)」から選べる。こうした色再現性への配慮もクリエイター向けタブレットならではだ。

「VAIOの設定」ユーティリティでは、色温度を2種類から選択できるほか、市販のキャリブレーションツールを使ったカラーマネジメントにも配慮されている

 アスペクト比16:9のディスプレイが多い中、同モデルは3:2を採用しており、縦幅に余裕を感じられるのも特徴だ。13.3型で16:9の画面より、この12.3型で3:2の画面は縦方向が実は長く、B5サイズの(紙の)ノートに近い見え方となる。印刷物を自然に全体表示できるのがうれしい。ちなみに、イラスト制作時に各種パレットを左右に適当な大きさで表示すると、キャンバスは正方形に近い形になる。

3:2のアスペクト比だと、縦画面での作業もやりやすいと感じた
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