Cintiq使いの漫画家が「VAIO Z Canvas」を真剣にレビューする液晶ペンタブに新時代が到来!(1/6 ページ)

» 2015年06月07日 07時00分 公開

著者紹介:山田胡瓜

月刊アフタヌーンの漫画新人賞「アフタヌーン四季賞2012年・冬」で四季大賞を受賞。ITmedia PC USERでIT系漫画「バイナリ畑でつかまえて」を連載しつつ、ペンタブレットの製品レビュー執筆者としてもしばしば出没する。Twitterは「@kyuukanba」。


「VAIO Z Canvas」を1週間使ってみて分かったこと

ココが「○」
・視差が小さく、紙の感覚に近い
・画面端でもペンの検出精度が高い
・広色域・高精細の12.3型3:2液晶
・高性能を美しい小型ボディに凝縮
ココが「×」
・ホバー追従性は改善の余地あり
・非常に軽いタッチの描画は苦手
・ハイエンドな仕様ゆえに高額

 「このペン性能はすごいぞ! VAIOが本気出すとこんなPCができちゃうのか」

 製品版の「VAIO Z Canvas」を触ってすぐ、そんなことを思った。同モデルは、VAIOが2015年5月29日に発売したクリエイター向けの超高性能ペンタブレットPCだ。「漫画家視点でレビューしてみて」と、ITmedia PC USER編集部から評価機が送られてきて1週間──あれこれいじってみた感想はズバリ、「ワコム以外で仕事に使える液晶ペンタブレットがついに誕生した!」だ。

プロクリエイター向けの12.3型Windowsタブレット「VAIO Z Canvas」でセルシスのマンガ制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT EX」を使っている様子

 ちょっと持ち上げすぎだろうか? でも、個人的にはかなり好印象だ。そんなわけで今回は、絵師からも注目を集めているVAIO Z Canvasについて、サイズ感が近く、筆者が普段使っているワコムの13.3型液晶ペンタブレット「Cintiq 13HD」(タブレットPCではなく、13.3型の液晶ペンタブレット)との比較なども交えながら、じっくりレビューしていこう。

マシンの性能以前に、ペンのチューニングに驚く

タブレットPC本体と分離型のワイヤレスキーボード、そしてデジタイザスタイラス──この3つを持ち歩けば、いつでもどこでも絵が描ける。それも「本格的に」である

 筆者はPC USERで、ワコム製品を中心にペンタブレット系製品のレビューをよく書かせてもらっている。VAIO Z Canvasについても、2015年2月に試作機でのレビューを行い、ライバルとなるワコムの「Cintiq Companion 2」と比較しながら、その実力をチェックした経緯がある。

 VAIO Z Canvasの試作機に初めて触れた際にも絵の描きやすさに驚かされたが、試作機はペンをチューニングしている最中で、Cintiqに比べて「線を非常にゆっくり引いてみるとゆがみが大きくなる」「イレギュラーな挙動に遭遇」といった気になる点があった。

 そうした問題が製品版でどれほど改善されるか楽しみにしていたのだが、結果から言うと、とてもよくなっている。今回の評価機にはペンが滑りにくくなる効果もあるオプション製品「液晶保護シート」(税別2480円、出荷時貼り付けサービス費込み)が貼られており、これも描き心地によい影響を与えていた。

筆者は試作機の段階でもVAIO Z Canvasをレビューしたが、製品版では試作機で気になった部分が改善され、書き味がとてもよくなっている。手袋はタッチの誤操作防止用だ。100円ショップで売っている綿手袋の小指以外の指先をカットして使っている。静電容量式のタッチパネル機能は、本体の上面右側にある専用ボタンで簡単にオン/オフを切り替えられるが、タッチ操作でのキャンバスの拡大/縮小や回転といった操作が便利なので、筆者は主に「タッチ機能オン&手袋」で作業している
液晶保護シートはインカメラ部分を除く液晶ディスプレイ面全体を保護してくれる。表面の低反射処理により画面の映り込みがやや抑えられるとともに、ペンとの摩擦が高まって滑りにくくなる。写真では見づらいが、カメラの周辺がくりぬかれているのを見れば、液晶保護シートが貼ってあることが分かるだろう

 液晶ペンタブレットというと、イラストレーターや漫画家の大半はワコムのCintiqを思い浮かべるだろう。ワコム製品が長年培ってきた電磁誘導方式の優れたペン性能は、他の追従をこれまで許してこなかった。

 しかしVAIO Z Canvasは、他社のタブレットでも採用例があるイスラエルのN-trig製デジタイザスタイラス(筆圧対応ペン)を使っているのにもかかわらず、VAIO独自のチューニングがよく効いていて、とても描きやすい。自分がイメージした線とのズレが小さいのだ。

 単6形乾電池1本で動作するアルミ製のペンは、標準状態だと細身だが、付属のラバーグリップを装着すればワコムの「プロペン」に近い太さになる。筆者は標準状態の細いペンのままでよかったが、太いペンが好みならばラバークリップを試してみると印象が変わるだろう。

付属のデジタイザスタイラス(ペン)は、VAIOが採用し続けているN-trig製だ。VAIOがプロのイラストレーターや漫画家など、各方面のクリエイターからのフィードバックを受け、独自に書き味をチューニングしている。ペンのボディはアルミ素材で、2つのボタンとクリップが付いている。上のボタンは右クリック動作、下のボタンは消しゴムに割り当てられている
クリエイターからの要望により、製品版にはペングリップが付属する。これを装着すれば、ワコムの「プロペン」に近い太さになる。このグリップは滑り止めとしての効果も高い
硬さの違う2本のペン先(ブラックは硬い、グレーは柔らかい)、ペンを太くするラバークリップ、タブレット本体の側面にペンを装着して持ち運べるペンホルダー、そしてペンを動作させる単6形乾電池1本が付属する
ペンは標準の状態だと細身だ。筆者はこのままでも問題なく描くことができた
付属のラバーグリップを装着すれば、太くてより握りやすいペンになる

 これまでは、「仕事で使うならCintiq」と思っていた筆者だが、今回はその思いが揺らいでいる。とはいえ、道具の使用感は人それぞれだし、どういう性能を重視するかによっても印象は変わってくるだろう。そこで、筆者が感じたCintiqとの違いを参考までに紹介しよう。

VAIO Z Canvasで実際に描いてみたイラスト。快適に描くことができた
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