さて、こんなハイスペックなVAIO Z Canvasだが、同モデルには「クリエイターをデスクから解放し、第2の場所でプロレベルの創作を可能にすること」という思いが込められているという。
ワイヤレスキーボードはタブレット本体とマグネットで重ね合わせて、液晶ディスプレイを保護した状態で持ち運べる。タブレット本体のサイズは約301(幅)×213(奥行き)×13.6(高さ)ミリ、重量は約1.21キロ。これと組み合わせるワイヤレスキーボードは、サイズが約301(幅)×213(奥行き)×4.4(高さ)ミリ、重量が約340グラムだ。2つ合わせて厚さは約18ミリ、総重量は約1.55キロとなる。圧倒的なまでの高性能を考えると、この小ささと軽さは驚異的だ
公称のバッテリー駆動時間は、JEITA 2.0測定法で約6.7〜7.6時間だ。バッテリーはユーザーが交換できない仕様だが、有償で交換サービスが用意されている。付属のACアダプタ(65ワット)は、実測でのサイズが45(幅)×105(奥行き)×27(高さ)ミリ、重量が本体のみで196グラム、ケーブル込みで239グラム。TDP 47ワットのCore i7 Hプロセッサを搭載したマシンのACアダプタにしては、持ち運びやすいサイズだ筆者の第2の創作場所はファミレスである。ネームを考えるときによく行くのだが、漫画原稿やカラーイラストをファミレスで描いたことはない。しかし、VAIO Z Canvasのフルデジタル環境を使えば、ファミレスでも作業ができるはず──ということで実際に試してみた(筆者が利用している店は問題ないが、店舗や時間帯によっては、こうした時間がかかる作業を禁止している場合もあるので注意してほしい)。
結論から言うと、ファミレスでも作業はスムーズにできる。電源がなくてもバッテリーは十分に持つし(JEITA 2.0で公証7.6時間)、マシンは静かなので周囲の迷惑にもならない。モバイルルータを持っていったり、スマホのテザリングを使えば、ネット環境の構築も簡単だ。参考にしたい写真をスマホに表示しながら絵を描いたりもできる。
ファミレスなら机も広いし、ドリンク飲み放題だし、クーラーも効いているし、気分転換もできて、なんて快適な作業環境だろう。自宅兼仕事場にこもっての作業では、こうはいかない。
ただ、筆者のような人目を気にする人間は、作業の様子を人に見られるのがツライ。ネームの簡単な絵や、ラフスケッチ程度ならあまり恥ずかしくないのだが、「カワイイ女の子を清書するぞ〜」となると、気恥ずかしい。女子高生のイラストを、ドリンクバーで粘るリアル女子高生の集団にチラ見されたりすると、いたたまれなくなる。
ただ、これがホテルであったり、ネットカフェであったり、外出先でも人目を気にせず作業できる場所であれば、思う存分描けると感じる。創作環境を持ち運べると、クライアントからの急な修正要望にすぐ対応できたり、旅先で仕事を進めたりもできるので、忙しいクリエイターにとってはありがたいだろう。
こうした「出先でのデジタル創作」はこれまでのWindowsタブレットでもできないことはないが、マシンの性能やペンの精度、液晶ディスプレイの発色などを考えると、「できれば自宅のちゃんとした環境でやりたい」とためらわれるだろう。
しかし、VAIO Z Canvasなら、例え出先であっても力不足を感じずに作業できる。作業内容によってはもう1つ大きなディスプレイが欲しくなるシーンもあるとは思うが、修正依頼などであれば素早く対応できる。
以上がVAIO Z Canvasを1週間使ってみた感想だ。クリエイター向けモバイルPCとして高い次元の性能と携帯性を提供しながら、これまでネックになりがちだったペン性能をしっかりと改善したことで、VAIO Z Canvasは絵描きが本気で向き合えるマシンになっていると思う。
クリエイターが長期利用することを想定した購入後のサービスメニューも充実していて、安曇野工場で液晶ディスプレイの色温度をD65に再調整してLUT(ルックアップテーブル)を書き直す白色度補正サービス、劣化したバッテリーの交換サービス、画面保護シートの貼り替えサービス、ペン関連パーツの補修販売、ワイヤレスキーボードの補修販売が行われる。これなら購入後も長期間安心して使えるのではないだろうか。
後は、VAIO Z Canvasの「いいお値段」とどう折り合いをつけるかだ。今回レビューした構成での直販価格は32万2280円(税別/配送料込)となっており、ちょうど仕事に使えるWindows機が欲しいと思っていた筆者にとっても、悩ましい問題である。
お金、降ってこい!
| VAIO Z(VJZ13A1)の主な仕様 | |
|---|---|
| 製品名 | VAIO Z(VJZ13A1)/M(Middle) SKU |
| メーカー | VAIO |
| OS | 64ビット版Windows 8.1 Pro Update |
| 本体サイズ(幅×高さ×厚さ) | 本体:約301×213×13.6ミリ、キーボード:約301×213×4.4ミリ |
| 重量(実測値) | 本体:約1.21キロ(1177グラム)、キーボード:約340グラム(339グラム) |
| 画面サイズ(液晶方式) | 12.3型ワイド(IPS) |
| アスペクト比 | 3:2 |
| タッチパネル | 静電容量式 |
| デジタイザ | 搭載(N-Trig製/VAIO独自チューニング) |
| ディスプレイ解像度 | 2560×1704ピクセル(約250ppi) |
| 液晶保護シート | 搭載(貼り付けサービス利用) |
| CPU(コア数/スレッド数) | Core i7-4770HQ(4/8) |
| 動作周波数(最大) | 2.2GHz(3.4GHz) |
| チップセット | CPU内蔵 |
| vPro | − |
| GPU | Intel Iris Pro Graphics 5200 |
| メインメモリ | 16Gバイト(DDR3L-1600 SDRAM) |
| メモリチャンネル数 | デュアルチャンネル |
| メモリスロット(空きスロット数) | オンボード(0) |
| ストレージ(評価機実装) | 512Gバイト(Samsung「MZHPV512HDGL-00000」) |
| ストレージフォームファクタ | M.2 |
| ストレージ接続インタフェース | PCI Express 3.0 x4 |
| 光学ドライブ | − |
| 無線LAN | IEEE802.11a/b/g/n/ac |
| Bluetooth | Bluetooth 4.0 |
| NFC | − |
| センサー | 加速度、ジャイロ、地磁気 |
| 有線LAN | 1000BASE-T |
| ワイヤレスWAN | − |
| キーボード | 日本語87キー/ワイヤレス(RF方式) |
| キートップ仕様・形状 | アイソレーション |
| キーピッチ | 約19(横)×18.5(縦)ミリ(縦ピッチは実測値) |
| キーストローク | 約1.35ミリ |
| ポインティングデバイス | クリックパッド(左右ボタン一体型) |
| 主なインタフェース | USB 3.0×2(1基は電源オフチャージ対応)、Mini DisplayPort出力、HDMI出力、ヘッドフォン/マイク兼用端子(3.5ミリ)、Webカメラ(イン92万画素/メイン799万画素) |
| メモリカードスロット | SDメモリーカード(SDXC対応、UHS-I、UHS-II対応) |
| SIMカードスロット | − |
| その他カードスロット | − |
| スピーカー(音質補正ソフトウェア) | ステレオ |
| マイク | モノラル |
| 指紋センサー | − |
| セキュリティチップ | TPM 1.2 |
| セキュリティロックポート | − |
| バッテリー動作時間 | JEITA 2.0:約6.7〜7.6時間、JEITA 1.0:約7.2〜8.5時間 |
| バッテリー仕様 | 63ワットアワー |
| ACアダプタ実測サイズ(幅×奥行き×高さ) | 45×105×27ミリ(突起部除く) |
| ACアダプタ実測重量(本体のみ/ケーブル込み) | 196グラム/239グラム |
| ACアダプタ出力仕様 | 65ワット出力、定格19.5ボルト/3.3アンペア |
| ACアダプタ対応電圧 | 100〜240ボルト(50/60Hz) |
| DC端子形状 | 丸形 |
| プラグケーブル端子形状(ACアダプタ側) | 2ピンメガネ型 |
| 防水/防滴 | −/- |
| カラーバリエーション | シルバー |
| オフィススイート | −(有償でOffice Premium選択可) |
| クリエイティブソフト | −(有償でAdobe CCなど選択可) |
| 直販価格 | 32万2280円(税別/配送料込) |
| 発売日 | 2015年5月29日 |
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