ココが「○」 |
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・モバイルPCでは圧倒的な高性能 |
・長時間安心して使えるスタミナ |
・高性能と携帯性を両立した技術力 |
ココが「×」 |
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・突出した高性能ゆえ価格は割高 |
・ノート形状で28ワット動作ができない |
・性能重視の半面、先代より重い |
かつて多くのPC愛好家をうならせた“ハイエンドモバイルの名機”が装いも新たに復活だ。
2015年2月16日、VAIO株式会社は新しい「VAIO Z(型名:VJZ13A1)」を発表、同日受注を開始した。ソニーから独立した新会社のVAIOが初めて新規設計して発売するモデルであり、新生VAIOの1号機に位置付けられる記念すべき製品だ。
最大16.8ミリ厚、約1.34キロの薄型軽量ボディに、ノートPCの使い勝手を維持しながらタブレットにも変形できる独自のマルチフリップ機構、タッチ対応の高精細(2560×1440ピクセル)な13.3型IPS液晶、書き味のよい筆圧ペン、TDP(熱設計電力)が28ワットの高性能な第5世代Core、PCI Express x4接続の超高速SSD、約15.2〜15.5時間バッテリー駆動(JEITA 2.0)のスタミナなどを凝縮したハイエンド志向の2in1モバイルノートだ。
VAIO Zの特徴を分かりやすく伝えるならば、「13インチMacBook Proに対して、パフォーマンスもバッテリー駆動時間も勝り、タブレットへ変形できる2in1構成や筆圧ペン機能まで盛り込んでいながら、13インチMacBook Airより薄型軽量なボディを実現していること」となる。VAIOが培ってきた「高密度実装技術」と「放熱設計技術」の結晶であるコア技術「Z ENGINE」により、この高性能と携帯性を高いレベルで両立できたという。
このスペックだけでも特別なモデルであることが分かるが、スペック表に現れない部分にも独自のこだわりを満載した新生VAIO入魂の1台に仕上がっている。今回はハイエンド仕様の試作機を入手したので、まずは最大の特徴であるパフォーマンスを中心として、その実力を検証していこう。
テストに入る前に、VAIO Zの突き抜けた高性能の追求に触れておきたい。CPUは開発コード名「Broadwell-U」として知られるノートPC向けの第5世代Core Uプロセッサを搭載するが、その中でもパフォーマンスに優れたTDP 28ワットモデルのみを採用する。
現状で2in1デバイスやUltrabookなど薄型軽量ノートPCは、これより性能が劣るTDP 15ワットのCore Uプロセッサや、より省電力と低発熱を重視したTDP 4.5ワットのCore Mプロセッサを用いた製品ばかりなので、VAIO Zの性能面での優位性は高い。
特に評価機が搭載するCore i7-5557U(3.1GHz/最大3.4GHz、4Mバイト3次キャッシュ)は、現時点で発表されている第5世代Coreの最高性能モデルだ。また、CTOで選べる下位のCore i5-5257U(2.7GHz/最大3.1GHz、3Mバイト3次キャッシュ)も、TDP 15ワットのCore i7よりパフォーマンスが高いという。
TDP 28ワットとTDP 15ワットの違いは、少し前までの呼称で言えば、「通常電圧版」と「超低電圧版」の違いに相当する。Core i5(TDP 28ワット)のほうがCore i7(TDP 15ワット)より性能が高いというのも当然のことだ。ソニー時代からVAIO Zのことを知っているユーザーであれば、VAIO Zが通常電圧版CPUの搭載にこだわってきたことを覚えているだろう。新生VAIO Zでもそこはしっかり受け継いでいる。
さらに、VAIO Zでは、新世代CPUのポテンシャルをさらに引き出すため、cTDP(Configurable TDP)機能を活用している点に注目したい。変形機構による利用スタイルと「VAIOの設定」ユーティリティの組み合わせによって、性能と放熱のバランスが変化するのだ。
具体的には、通常のクラムシェルノートPCスタイルである「キーボードモード」および液晶ディスプレイを反転させて立てた状態の「ビューモード」を利用している際、「VAIOの設定」の「CPUとファンの動作モード」で「パフォーマンス優先」を選択すれば、最大35ワットまでTDPを上げて使用できる。これは軽くオーバークロックして使うようなもので、高性能CPUの処理能力を限界まで利用可能だ。cTDPの対応が、性能面のアドバンテージをさらに強いものにしている。
一方、タブレット形状の「タブレットモード」で「パフォーマンス優先」を選んだ場合、TDPは定格の28ワットとなる仕様だ。省電力や静粛性を重視する場合は、「VAIOの設定」で「静かさ優先」を選択すると、TDPを「キーボードモード」および「ビューモード」で15ワット、「タブレットモード」で10ワットまで下げられる。
こうした柔軟なcTDP設定に対応しているのは便利だが、欲を言えば、「キーボードモード」でも定格TDP 28ワットの動作が行えるメニューもあると、なおよかった。「パフォーマンス優先」と「静かさ優先」の中間くらいのバランスで使いたいというニーズも考えられるからだ。
VAIO ZのcTDP対応状況 | ||
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PC本体の利用スタイル | 「VAIOの設定」の「CPUとファンの動作モード」 | TDPの設定 |
キーボードモード | パフォーマンス優先 | 35ワット |
静かさ優先 | 15ワット | |
ビューモード | パフォーマンス優先 | 35ワット |
静かさ優先 | 15ワット | |
タブレットモード | パフォーマンス優先 | 28ワット |
静かさ優先 | 10ワット | |
※記事初出時、「ビューモード」のcTDP値に誤りがありました。お詫びして訂正いたします(2015年3月3日19時)。
Core i7-5557U/Core i5-5257UともGPUは、CPUに統合された「Intel Iris Graphics 6100」を採用するのもポイントだ。同世代のTDP 15ワットモデルが多く採用する「Intel HD Graphics 5000」シリーズに比べて、描画を処理する実行エンジンが2倍の48基に増えており、CPU内蔵グラフィックスとしては極めて高い描画性能を持つ。
メーカーが実施したテストでは、Core i7-5557U/Core i5-5257Uとも、外部GPUをメディアドックで接続した先代機「VAIO Z(Z2)」の性能を大きく上回るという。3D描画性能を評価する3DMark Vantageの結果では、先々代の「VAIO Z(Z1)」を1.00とした場合、先代のVAIO Z(Z2)+メディアドックは2.42倍、新VAIO Zは3.22倍のスコアが出たとのことだ。
メインメモリはLPDDR3-1600を採用し、8Gバイトと16Gバイトが選べる。いずれもオンボード実装で、ユーザーが増設や交換することはできない。どちらもデュアルチャンネル転送に対応し、性能面に配慮が見られる。
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