待ちわびたフラッグシップマウス「MX Master」徹底レビュー王の帰還(1/4 ページ)

» 2015年04月16日 11時55分 公開
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 ロジクールのハイエンドマウス「MX Master」が満を持して登場した。実に6年ぶりのフラッグシップとなる本モデルを心待ちにしていたユーザーも多いことだろう。

6年ぶりの最上位モデル「MX Master」。価格は1万3910円(税込み)

 本稿では、「MX Revolution」や「MX-1100」、「M950」を使ってきた人たち、そしてこれまでMXシリーズになじみがなく、このマウスがなぜ大騒ぎされているのか不思議に思っている人を対象に「MX Master」を紹介する。

 なお、本稿においては各部の説明の際に正式名称ではないものを使用している部分がある。例えば、サムレストにあるボタンはMX-1100/M950ではステルスサムボタンと呼ばれていたが、MX Masterではジェスチャーボタンとのみ記載されている。だが、これではどこのボタンだか分かりにくいこと、カスタマイズによってジェスチャー機能をほかのボタンに割り当てることができることから混乱が予想されるため、場所に応じた「通称」を使用している。あらかじめご承知いただきたい。

6年間(もしくは9年間)の旗艦不在

 ヒューマンインタフェース、特にマウスにおいて、ロジクールと言えばエントリーモデルからハイエンドモデルまで幅広いレンジで展開する一大メーカーだ。

 その姿勢はF1に参戦して惜しみない最先端技術を投入し、そこからコストや生産技術を見直して、市場に適合した形で一般車に展開していく自動車メーカーにも似たものがある。同社の製品は、エントリーモデルと言えども、確かな技術が根底にあったうえでのコストカットの産物であり、総じて高い品質を誇るのが特徴だ。

 もちろん、そんなロジクールのフラッグシップモデルは妥協のない逸品である。代表モデルは2006年9月15日発売の「MX Revolution」。サムレストが大きく張り出したデザイン、そしてなにより特徴的だったのがスクロールホイールに仕込まれた独自機構「MicroGearプレシジョンスクロールホイール」だ。

革命の名に恥じない名機「MX Revolution」(写真はMX5500付属のMX Revolution Bluetooth)

 通常はホイールを回転させたときにカチカチというクリック感のある「クリック・トゥ・クリックモード」だが、勢い良く回すと内蔵モーターによってホイールが回転し続ける「フリースピンモード」に自動的に切り替わる「SmartShiftテクノロジー」を採用していた。狙い通りのところでスクロールを止める正確さと、スケートボードを蹴るような直感的な操作性・高速性を両立させた、画期的なホイール機構だった。

 MX Revolutionは素晴らしい操作性、一度なじむと手放せないエクスペリエンスをもたらしたが、耐久性には難があったと言わざるをえない。加水分解によるコーティングの破損、内蔵バッテリーの劣化、充電端子の接触不良、ボタンのチャタリングなど、さまざまな理由により交換を余儀なくされるユーザーが多かった。だが、2010年ごろには生産終了となってしまい、入手は困難になった。

 MX Revolutionを至高の名機と慈しんだユーザーの中には、アウトレットやオークションで入手したり、「MX Revolution Bluetooth」が同梱されているキーボード/マウスセット「Cordless Desktop MX5500 Revolution」を購入する人も少なくなかったようだ(Cordless Desktop MX5500 Revolution」はMX Revolution生産終了後も販売されていた)。

 それ以外のユーザーの選択肢となったのが「MX-1100 Cordless Laser Mouse」(2008年〜2011年)、そしてその後に発売された「Performance Mouse M950」(2009年〜)だ。2機種ともホイールはクリック・トゥ・クリックモードとフリースピンモードを備えてはいるが、SmartShiftは備えておらず、ボタン操作によって手動で切り替えるようになっている。このことに失望したユーザーも多い。

写真は手前からM950、MX1100、MX Revolution

 とはいえ、M950は後発ゆえに優れていると感じる点も多々ある。

 1つは充電機構。MX Revolutionでは専用の充電スタンドに立てて充電するようになっていた。当然、充電中は使用できないため、バッテリー切れになったらある程度充電できるまで待たなければならない。また、接点劣化によって充電ができなくなるという障害もあった。

 それに対し、M950の場合はマウス先頭部分にMicro USBの口があり、USBケーブルを接続することで充電を行うようになっている。充電中はちょうど有線マウスのようにケーブルで接続されることになるが、この有線接続はあくまで充電のみであり、インタフェースは無線のままだ。

 もう1つは親指操作系のボタン類。MX Revolutionの場合、左側面上部にForward/Backボタン、その下方にサイドホイールがあった。サイドホイールは回転しないセンター復帰タイプだ。

 一方、M950ではForward/Backボタンは同様だが、そのすぐ下にZOOMボタン、サムレスト自身を押し下げて操作するステルスサムボタンがある。MX Revolutionではサイドホイールが少々遠く感じていたが、M950では親指の可動範囲に厳選したボタンを搭載した印象だ。もっとも、ボタン数としては減少しているため、MX Revolutionの全ボタンを使いこなしていたヘビーユーザーにとってはデメリットと言える。

 さらに、4ミリ厚以上であればガラス上でもトラッキングが可能なDarkfieldレーザートラッキングを採用していたのも特筆できる。これは暗視野顕鏡法(Darkfield Microscopy)によるもので、2つのレーザーを斜めから照射し、粒子に当たって散乱した光をスキャンすることでコントラストが出ない素材の上でも精確なトラッキングを実現するというもの。MX Revolutionのレーザートラッキングではできなかった、ガラス上での操作を可能にしている。

 筆者自身、MX Revolution、MX Revolution Bluetoothを使い潰したあと、現在までM950を使用していた。M950はMX Revolutionのフィーリングを残す、珠玉のマウスではあるが、MX Revolutionと比べるとなんとなく方向性の違いを感じる。個人的なニュアンスの問題ではあるものの、M950は最上位モデルではあってもフラッグシップモデルではない、という印象だ。マウスの進化樹形図において、MX Revolutionは先行者のいない、文字通り革命を起こしたマウス、そしてMX-1100、M950はそのフォロワーといったところだろうか。

 MX-1100が発売された際、「あんな贅沢な機構(SmartShift)を持ったマウス(MX Revolution)は、もう2度と作れないかもしれない」(ロジクール)と書かれた記事があった(カッコ内の補足は著者)。事実、MX Revolution以降、SmartShiftを搭載したマウスは発売されておらず、MX Revolutionの虜となったユーザーたちは一縷(いちる)の望みをかけてフラッグシップモデルの登場を待っていた。

 だが、そんな期待に反してM950は2009年の登場以来、6年に渡ってハイエンド最上位モデルの座を守り続けた。平たく言えば、最上位モデルの新機種が出なかったのだ。

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