四半世紀を過ぎて進化し続けるロジクール製マウスに迫る:元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2009年08月21日 11時55分 公開
[元麻布春男(撮影:矢野渉),ITmedia]

常に進化し続けるマウスの技術開発

 マウスは、平面の上で動かすことで座標情報をホストに伝え(トラッキング)、マウスボタンを押すことでユーザーの入力意志を伝える(クリック)デバイスだ。その基本は1963年にダグラス・エンゲルバート(Douglas Engelbart)氏が、マウスの原型となるデバイスを発明した時から変わらない。マウスの技術開発は、大きくトラッキングの改良と、クリックの改善の2つに分けることができる。

 クリックに用いるマウスボタンは、最初は1つだったが、やがて2〜3へと増加し、中央ボタンは画面をスクロールさせるためのホイールへと進化した。Webブラウザの誕生以降、表示したWebページ間を移動するために、進む/戻るといった専用のボタンも広く普及している。ホイールは、縦だけでなく横方向にも画面をスクロールさせることが可能になり、縦方向に対するスクロール量をホイールのクラッチを切り替えて変更することもできるようになった。ホイールに代わって、全方向にスクロール可能なトラックボール状のスクロールホイールを採用したマウスもある。

 一方、トラッキングの改良は、当初の2軸のホイールから金属ボール、さらにゴム製のボールへと進化した。そして内部の清掃などメインテナンスが必要な機械式のボールマウスに代わり、光学センサーを用いた光学式マウスが主流となった。光学センサーの解像度の改良に加え、光源をLEDからレーザー光に代えるといった技術革新を経て、マウスのトラッキング性能は向上し、多くのユーザーが満足するような現代のマウスが誕生している。

ガラス面でも操作が可能なDarkfieldレーザートラッキングテクノロジー

ロジクールの最新マウス2モデルは、ガラスの上でも操作可能なレーザーマウスだ

 ところが、そんな現代のマウスにも課題はある。それはマウスを利用するサーフェイスへの対応だ。上述した通り、マウスのトラッキング能力はセンサーの改良とともに進化してきた。それでも光学式マウスは、ガラスや鏡など光が透過してしまったり、表面のコントラストの検出が難しいサーフェイスの上で利用することは難しい。もちろん、ボール式のマウスであればガラスにも対応可能だが、その精度は最新の光学式には及ばず、メインテナンスフリーというわけにもいかない。

 これまでにガラスの上で動作する光学式マウスという課題に取り組んだ製品がなかったわけではない。しかし、こういった製品の多くは、ガラスの上で動作することを目標に開発されたため、ガラス以外のサーフェイスで使いにくかったり、センサー部のゴミやホコリに弱いという欠点を持っていた。これでは、センサー方式こそ違え、ボール式のマウスとあまり変わらない。

 今回、ロジクールが発表したDarkfieldレーザートラッキングテクノロジーは、高精度のセンサーを採用し、既存のレーザートラッキングテクノロジーをさらに高度化させたうえで、ガラスのような極端にコントラストの低いサーフェイスでもマウスが利用可能なよう、暗視野検鏡技術を応用したものだ。名称のDarkfieldとは、暗視野検鏡(Dark field microscopy)からきたものである。

最新モデルに刻まれたDarkfieldのロゴ

 肉眼や光学センサーは、一般に対象物の表面からの反射光を検知する。暗視野検鏡は、反射光ではなく、散乱光を検知することで、コントラストを飛躍的に高め、微細な構造を検知可能にする技術だ。この技術を用いた暗視野顕微鏡は、数10ナノメートル程度のキズや構造を検知することができる。

 Darkfieldレーザートラッキングテクノロジーは、通常時は従来のマウスと同様、1つのレーザー光源によるサーフェイスからの反射光(物質表面のテクスチャ)を高精度センサーで検出する。マウスがガラスなどの上にあり、反射光が検出できない(レーザー光がガラスを透過してしまうため)場合は、2つ目のレーザー光源を照射し、擬似的な暗視野検鏡の環境を作り出し、ガラス表面の微細なキズやホコリなどを光学センサーが検出して、トラッキングを行う。したがって、ガラスの上で使うとバッテリー駆動時間が短くなるが、利用できないより格段にいい。

1つのレシーバーでマウスやキーボードを共用するUnifyingテクノロジーを採用

Unifyingテクノロジーのロゴマーク

 このDarkfieldレーザートラッキングテクノロジーを用いた製品として、2種類のマウスが発表された。1つはデスクトップPC向けのフルサイズマウスである「Logicool Performance Mouse M950」(以下、M950)、もう1つがコンパクトなノートPC向けマウスである「Logicool Anywhere Mouse M905」(同M905)だ。それぞれ現行のハイエンド製品であるMX RevolutionとVX Revolutionの後継製品と考えられる。

 このM950とM905には、もう1つの新機軸、Unifyingテクノロジーが採用される。Unifyingテクノロジーは、その名前から分かるように、統一された1つのレシーバーで、マウスやキーボードを接続できるようにしよう、というものだ。従来の製品では、キーボードやマウスなど、製品ごとに個別のレシーバーを必要としていた。キーボードとマウスを1つのレシーバーで扱いたければ、最初から2つがセットになった製品(ロジクールであればコードレスデスクトップ製品)を購入する必要があった。

 Unifyingテクノロジーは、今後販売される同社製のマウスやキーボードを1つのレシーバーで接続しようというもの。対応製品にはオレンジ色のUnifyingテクノロジーのロゴが添付される。これにより、PCのUSBポートを複数占有されなくて済むし、1つのレシーバーでキーボードとマウスを自由に組み合わせて使うことが可能になる(ただしローエンド製品などではUnifyingテクノロジーに対応しないものも残る見込み)。

 現在でもBluetoothを用いることで1つのレシーバー、あるいは内蔵のBluetoothモジュールにより、複数のマウスやキーボードを接続することができる。しかし、Bluetoothに対応したキーボードの種類は限られるうえ、レスポンスという点で専用レシーバーには及ばない面がある。Unifyingテクノロジーにより、少なくとも入力デバイスに同社製品を用いる限り、マウスとキーボードで複数のUSBポートを占有されることがなくなる(いっそノートPCメーカーがUnifyingレシーバーを内蔵してくれればよいのだろうが、それはまた別の話だ)。

Unifyingソフトウェアの画面。対応デバイスには、このオレンジのロゴが添付される
マウスの電源を入れ、画面上の「はい」をクリックすればペアリングが完了する。このためマウスやレシーバーに、ペアリング用のハードウェアスイッチは用意されない
ペアリングはUnifyingソフトウェアからいつでも解除することが可能だ

ノートPC向けの小型マウス「Logicool Anywhere Mouse M905」

SetPointの画面。Anywhere Mouse MXは米国での製品名だ

 このUnifyingテクノロジーに対応する第1弾の製品が、上述したM950とM905のマウス2製品、そしてワイヤレスキーボードであるLogicool Wireless Keyboard K340の合計3製品と発表されている。いずれも2009年内の発売が予定されているものの、まだ具体的な発売日、販売価格は明らかにされていない(米国での価格は、M950が99.99ドル、M905が79.99ドル)。一刻も早い発売を望みたいところだが、今回、マウスの2製品について評価ユニットを借用することができた。ここで、そのファーストインプレッションをお届けしたい。

 まずは小型のM905だが、サイズ的には「V550 Nano Cordless Laser Mouse」など同社の代表的なノートPC用マウスとほぼ同じ大きさだ。Unifyingテクノロジーのロゴの上に見えるAnywhere MXは、本機の米国における製品名で、国内で正式発売される製品ではAnywhere M905の表記に変更されるものと思われる。

 底面中央にはDarkfieldテクノロジーに対応したセンサーがあるが、持ち運び時にセンサーを保護するシールドが設けられている。このシールドをスライドさせるとセンサーが現れ、マウスの電源が入る仕組みだ。電池はフタとなっている底面をスライドさせて交換するが、単三形乾電池2本で約4カ月間、あるいは1本(電池寿命は半分になる)で駆動する。この電池ボックスにはUnifyingレシーバーを収納するスペースが用意されており、持ち運ぶ時に紛失しないよう工夫されている。

Logicool Anywhere Mouse M905には携帯用のポーチが付属する
電源は単三形乾電池2本で、レシーバーを底面に内蔵可能だ
Logicool Anywhere Mouse M905とVX Revolutionの比較

 マウスボタンは、ホイールも含めて6つある。垂直および水平にスクロール可能なホイールは、ホイール自体がスムーススクロール(高速スクロール)モードとクリック・トゥ・クリックモード(ラチェットモード)を切り替えるメカニカルスイッチとなっており、ホイールスイッチあるいは中央ボタンとして利用することはできない(カスタマイズ不可)。ホイールの手前にあるボタンはアプリケーションスイッチャ(アプリケーション切り替えボタン)で、Mac OS Xのエクスポゼ風にすべてのアプリケーションウィンドウをデスクトップ上に並べ、その中から選択可能にする機能を持つ(標準設定の場合、変更可)。さらにマウスの左側面にも2つのボタンが用意され、デフォルトで進むと戻るに割り当てられている。

つや消しブラックとシルバーのツートーンカラーを採用する。中央にインジケータランプがある
底面にUnifyingテクノロジーのロゴマークが配置されている
底面中央のカバーをスライドさせるとレーザーセンサーが現れ、電源がオンになる

VX Revolutionに比べて中央部の盛り上がりが少ない。左右にはラバー状の滑り止めがある。正式なスペックは明らかになっていないが、単三形乾電池2本込みの実測値は約134グラムあった。

こちらはVX Revolutionで、M905に比べて一回り大きい(写真=左)。底面に高速スクロールとクリック・トゥ・クリックモードの切り替えスイッチがある(写真=右)

M905に比べて、ボディ左側中央部分が大きく盛り上がっているのが分かる。レシーバーは背面下部に収納可能だ

 次のページでは、デスクトップPC向けのM950をチェックする。

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