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» 2015年06月16日 04時00分 公開

アップルは日本語デジタル化に再び革命をもたらすか?――林信行のOS X「El Capitan」世界先行レビュー(前編)国内ユーザー向けの“One more thing”(2/3 ページ)

[林信行,ITmedia]

日本語入力方法におけるコロンブスの卵:ライブ変換

 それでは文字の入力についてはどうだろう。人それぞれの入力スタイルにもよるが、多くの人は文字入力中に、かな文字を漢字に変換するために頻繁にスペースキーを押しているはずだ。

 OS X El Capitanでは、これが激減する。このOSの日本語入力には新たに「ライブ変換」という文字入力モードが加わっている。

 これまでの日本語入力では、ローマ字文字入力をすると文字はまず画面上にひらがなで表示され、その後、スペースキーを押すと、そこで漢字の候補が表示された(この方法は1983年に浮川和宣氏らによって発明された)。

ローマ字入力で打ち込んだ文字が次々と漢字に変換されていく「ライブ変換」

 ところが、El Capitanの「ライブ変換」機能をオンにしてローマ字入力で書き進めていくと、入力した先からどんどん漢字に変換されていく。最初のうちは全然見当はずれな漢字も多いが、気にせず書き進めていくと、前後の文脈から漢字がどんどん正しいものに置き換わっていく。

 かなり前から日本語入力プログラムはアップルの旧ことえりはもとより他社の製品も、スペースキーを押す前に打ち込んでいる文章が長くなればなるほど、どの漢字が正しい漢字かを判断する材料が増え誤変換がなくなる状態にはなっていた。

 しかし、スペースキーをどのタイミングで押して変換するかという部分に規則がなく、みんな自分の息継ぎのタイミングにあった好きなタイミングでスペースキーを押していた。つまり、これまでの日本語入力プログラムは、もっと正しい文字に変換するためのヒントが欲しいにも関わらず、それを得られないままユーザーに強制的に変換をさせられていたことが多かった。

 これに対してアップルは、有無を言わさず自動的に漢字に変換するライブ変換によって、漢字の変換候補は常に目まぐるしく変化するといううことを可視化することで、ユーザーにスペースキーを押させないようにした。

 ある意味、とってもアップルらしい「デザイン」的アプローチで、ユーザーの日本語入力中の振る舞いに変化をもたらした。この考え抜かれたアプローチのデザインには脱帽せざるをえない。(技術がある程度分かっている人が)出されてみて初めて「なるほど、それはこういうやり方が正しいよな」と納得させられる考え抜かれた方法でありながら、それがこれまでの文字入力の方法と完全互換というのも素晴らしい。

 つまり、例えば文節単位で漢字変換をするクセが付いている人は、これまでの流儀を一切変えることなく、これまでのOS X日本語入力とキーを打つスピードも順番もまったく変えることなく「わたしはいま」まで打ち込んでスペースを押すことで「私は今」という同じ変換結果を得ることができる。

 異なるのは、この後の文章「私は今、新しい基本ソフトのレビューを書いています」まで入力して初めてスペースキーを押す人と比べると、スペースキーを打つ回数がはるかに少なく、しかも、誤変換が少ないので、その後のカーソルキーやスペースキーを押す回数も大幅に削減できる。

 まだまだこの新しい入力方式は完璧ではなく、例えば、完璧に入力した文章の変換精度が高い代わりに、単語の後半を間違って削除してしまった後、消してしまった部分をローマ字入力で補おうとすると途中から始まっている単語を無理矢理漢字に直そうとしてしまうために、通常の日本語入力プログラムよりもかえって変換精度が低くなってしまう点はある。

 とはいえ、El Capitanが採用した日本語入力のデザインは、今後、同様に日本語入力プログラムを作る多くの企業に、大きな影響を与えることになるだろう。もしかしたら、iPhoneで誕生したフリック入力と同様に、今後の日本語入力を大きく変化させる布石となるかもしれない。

 新フォントと新しい日本語入力プログラム、これらはそもそもアップル米国本社ホームページでは触れられてもいない瑣末(さまつ)な機能でありながら、それだけでもこれほどまでによくデザインされ、確実に我々の心の奥底に変化をもたらしてくれる。

 現行の開発途上版は、まだWWDC 2015で紹介されたすべての機能が実装されているわけではなく、例えばスポットライトに「先週作ったプレゼンの資料」と平易な言葉で打ち込んでもうまく検索ができない状態だ。

 そもそもアップルとしても全国にいるMacのユーザーが、どんな言葉で検索をするかをまだ十分に調査できていない現段階では、こうした機能を開発しても中途半半端になってしまうだろう。

 そこでアップルは7月からEl Capitanの公開β版をリリースして意見を募り、その後、秋頃に最終版をリリース予定だ。このOSがパソコン上での日本語入力の取り扱いにどれだけ大きな波紋と影響を与えるのかを考えると今から楽しみでならない。

 

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