アップルは日本語デジタル化に再び革命をもたらすか?――林信行のOS X「El Capitan」世界先行レビュー(前編)国内ユーザー向けの“One more thing”(3/3 ページ)

» 2015年06月16日 04時00分 公開
[林信行ITmedia]
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コラム:アップルと日本語のデジタル化

 アップルというと「米国の企業」ということで、日本語関連の機能が弱いと勘違いをしている人をたまに見かける。実際は逆どころか、デジタル時代の日本語文化に与えてきた功績は多々ある。

 出版のプロフェッショナルに聞けば分かることだが、1989年に世界初の日本語Postscriptレーザープリンタ「LaserWriter NTX-J」を発売し、MacのOSにもプリンタ搭載の日本語フォントを標準で組み込み、日本にDTPという今日の紙の出版物のほとんどの制作に使われている技術を広めたのはアップルだった。

 出版という日本語表現の1丁目1番地に常に深く関わってきたこともあり、UNICODEと呼ばれるパソコン上での文字表現の国際標準にどの漢字を入れるかの議論でも、9000種類ほどしか表現できなかった漢字表現をアドビらとともに数万文字まで拡張していく過程でもアップルは常に中心的役割を果たしてきた。

 だから、Macはいまだに出版業界では標準のパソコンであり、みなさんが日々目にする紙の出版物のほとんどはMacで作られている。

 2001年に登場したMac OS Xの最初のバージョンからは、表現のバリエーションが広く、文字の美しさも際立つ6種類のヒラギノフォントが標準搭載されることを故スティーブ・ジョブズ氏が自ら発表した。

 OS Xと、ヒラギノフォントの登場、さらにその後、 超高解像度のRetina Displayを搭載したMacが登場したことで、パソコン画面上の日本語文字表示の美しさは格段の進歩を遂げて、紙の印刷物に並ぶレベルまで進化した。

 実際、「画面上のちょっとした日本語の単語の表示まで美しい」という点は、Windowsが追いつけていない部分であり、WindowsからMacに乗り換えた人々が「もうWindowsには戻れない」と挙げる理由の1つでもある(Windows 10では、この部分の進化を期待したい)。

 では、日本語の入力に関してはどうだろう。キーボードからローマ字で入力すると「ひらがな」で表示され、適当なところでスペースキーを押すと、それが漢字に変換される、という文字入力方法はジャストシステムズの創業者、浮川和宣氏らによって1983年に生み出され世に広まった。特別な「変換」キーを搭載していない英文用のキーボードでも日本語を入力可能にする画期的な発案であり、発明から32年経った今日でも変わることのないスタンダードだった。

 しかし、今日ではこれに負けないくらい大勢の人がスマートフォンで3×4の文字盤を連打してかなを入力する携帯文字入力方式か、同じ文字盤に指を置いた後、それを上下左右にスライドさせることで1度の動作で目的のひらがなを入力する「フリック入力」を行っている。

 後者はアップルのiPhoneで誕生したことはまだ人々も忘れていないはずだ。さらに最近では仲の悪い日本の電話会社たちが各社各様で勝手に作っていた絵文字をグーグルとともに国際標準として定めている。アップルの日本語デジタル入力、その表現に関する貢献度はかなり高いのだ。

※記事初出時、フォント「クレー」の表現に誤りがありました。正しくは「硬筆体」フォントになります。おわびして訂正いたします
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