←・HPが「日本向け堅牢モバイルノート」や「3Dスキャン対応の新提案PC」をシンガポールで披露
日本コカ・コーラの「ネームボトル」をご存じだろうか? 「コカ・コーラ」および「コカ・コーラ ゼロ」のペッドボトルに貼られるラベルに、250種類以上もの名前をデザインしたものだ。
このネームボトルを店頭で見て、「こんなにたくさんの名前のラベルを一体どうやって作っているのか?」、あるいは「こんなに種類があったらラベル製作のコストがかかって無駄ではないだろうか?」といった疑問を抱いた方がいるかもしれない。
実はこのラベル、米Hewlett-Packard(HP)の商業用デジタル印刷機「Indigo(インディゴ)」で制作されている。
従来の印刷技術(フィルムなどはグラビア印刷、紙ならばオフセット印刷)でこのような多様なバリエーションの商業印刷を行なっては、とんでもないコストがかかる。印刷内容ごとに物理的な「版」を用意するオフセット印刷では、事実上不可能だと言ってもよいだろう。
しかし、Indigoによるデジタル印刷ならば、物理的な版を使わず、半導体レーザーで感光体に液体トナーを現像して印刷する仕組みで、感光体のイメージを都度書き換えられるため、多種多様なデザインのラベルも小ロットからオフセット印刷に近い品質で作成できるのがポイントだ。
日本コカ・コーラのネームボトルについては、実際のラベル生産を日本企業の精工が担当。2014年の同キャンペーン実施時に合計3台の「Indigo WS6000」シリーズを約4カ月間稼働させることで、累計2億本を越える製造に対応した。精工は今年中に、約2.7倍の生産能力を持つ「Indigo 20000」の導入も予定している。
なお、イスラエルでコカ・コーラ(Coca-Cola Israel)が行なった「Extraordinary Diet Coke Collection」キャンペーンでは、Indigoを利用することで、何百万本という数のボトルを1つ1つ違うデザインパターンで提供したという。
ポップでカラフルなラベルのデザインパターンは、HPが開発した「Mosaic」というソフトウェアで半自動生成することで、膨大な種類のデザイン制作を省力化している。このキャンペーンで作られたボトルの写真がSNSでシェアされ、eBayでも取引されるなど、大きな反響を呼んだという。
また、このキャンペーンによって、セールスだけでなく、消費者のブランド嗜好(しこう)、購買意欲も上昇したという結果が得られたとしている。
HPがシンガポールに構える「HP Graphics Solutions Center of Excellence」は、こうしたデジタル印刷事業の総本山だ。
グラフィックス事業の研究開発拠点であり、最新の商業デジタル印刷機を含め、グラフィックス、デジタル印刷ソリューションが一堂に会している。また、カスタマー(印刷会社、代理店など)が訪れて、各種検証(素材と印刷機、インクの適合性など)を行うことも可能だ。
HPが6月8日に開催したアジア太平洋地域および日本のメディア関係者向けイベント「HP PPS(Printing Personal Systems)Innovation Day」は、このHP Graphics Solutions Center of Excellenceが会場となった。
今回のイベントでは、個人や法人向けのPCおよびプリンタ最新製品が紹介されたが、こうした商業デジタル印刷事業についても多くの時間を割いて説明が行なわれ、日本にまだ導入されていない最新の大型デジタル印刷機も見学できた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.