OS X El Capitanのレビューの前編では日本語関連の機能の紹介だけに留めたが、後編はそれ以外の機能を考察してみたい。
前編でも書いたようにOS X El Capitanは、現行OS、OS X Yosemiteの洗練版であり、派手な追加機能の数は少ないが、一度慣れてしまうと、もはやそれなしには戻れなくなるような変化がいくつかある。
「便利」という言葉で見てみると、その筆頭は標準搭載の「メモ」アプリケーションだろう。元々はiPhone用の標準アプリとしてスタートしたこのアプリケーションは、最初は文字情報を書き残すことしかできなかったが、余計な機能がない分、装飾など余計なことを考えずに要件を書き留められる手軽さがあり、筆者もこれまで人から聞いた心に残る言葉や思いついたフレーズなど、何でも書き溜めて検索して使っていた。
その後に登場したMac版は、iCloudを通して書き込んだ内容がすぐにiPhoneやiPadでも取り出せるため、iPhone上でコピー&ペーストして使い回したいフレーズなどを書き溜めておくのにも使い始めた。
また、画像にも対応していたので、Webで見つけた気になるグラフなどの資料を貼っておいたり、場合によっては気になるWebの記事をまるまるコピー&ペーストして電車や飛行機の中で読むのにも使い始めた。本当はこうした用途にはSafariのリーディングリスト機能やEvernoteが向いているのかもしれないが、余計な設定に気を使わないでもオフラインでも確実に読める安心感が何といっても強かった。
そんな「メモ」アプリが、OS X El Capitanで、さらに進化した。最新版ではPDFや動画のファイルも貼れるようになった。これに合わせてSafariやマップといったアプリの共有メニューに新たに「メモ」という項目が加わり、表示しているWebページや地図の場所をメモできるようになった。もはや、標準の「メモ」アプリは、Evernoteにも負けない「何でも記録して覚えておいてくれるメモ」に進化した。
文字ベースのメモも、メニューからタイトル、本文、番号付きリストなど簡単な整形ができるようになり、完了した項目にチェックマークを付けられるチェックリスト作成もできるようになった。
添付した写真とビデオ、地図の場所、Webサイト、オーディオ、書類、そしてiOS 9で入力可能なスケッチ(手書きメモ)に対応しているようで、これらの添付ファイルだけを一覧表示する機能も用意されている。
例えば、メモに貼り付けたグラフ資料を探す場合など、グラフの説明書きを文字検索するよりも、実際のグラフを見てそこからメモを探した方が楽だ(目当ての添付ファイルをcontrol+クリックして、そのファイルが添付されたメモを表示させられる)。
ちなみにデータは、写真やビデオ、オーディオ(そして試せていないが、おそらくスケッチも)、メモ上に中身が表示されるが、Safariから共有したWebページやマップから共有した地図、Finderからドラッグ&ドロップしたPDFや書類に関しては、中身は表示されず、Finderアイコンが表示される。
とはいえ、実体のないエイリアスではなく、貼り付けたKeynoteファイルを開いてみると、きちんとiCloudを通して実体が転送されているようなので、iOS機器とMac間でよく使うプレゼンファイルなどを整理して保管しておく、といった目的でも使えそうだ。
ここまで機能が充実してくるとEvernoteなどの、専用アプリにとって脅威と思う人もいるかもしれない。これはMacのOSに限らず、デジタル機器のOSで繰り返されてきたことだ。OSの開発元は、これまでの何十年間も、大勢の人に取って利益があると思われる機能は積極的にOSに組み込んできた。
ただ、Evernoteにはまだかなり分がある。OS Xのノートは何でもかんでも区別なくクラウド経由ですべてのデバイスに同じデータを転送してしまうが、Evernoteでは、オフラインでも読めるようにダウンロードしておくべきノートと、ネット接続経由で参照するノートを指定/区別できる。
また、容量も毎月60Mバイトまたは1Gバイト(または無制限)と追加されており有利だ。さらに食べた食事を記録するEvernote Foodのほか、他社製のアプリや周辺機器を含めて非常に多くの連携製品の生態系をすでに築いている。
標準のメモが、ここまで進化したことは、何でもかんでもパソコン(やiPhone、iPad)にメモをする人口を増やし、将来、さらにニーズが特化してきた人々をEvernoteへと移行させるきっかけ作りになっている側面があるかもしれない。
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