「iPhone 6s」を林信行が読み解く――これは“羊の皮をかぶった狼”であるApple新製品のすべて【特大版】(2/6 ページ)

» 2015年09月13日 17時30分 公開
[林信行ITmedia]

「3D Touch」と「Taptic Engine」で指先の会話が始まる

 すべてが新しいiPhone 6sと6s Plusだが、何といっても大きな特徴は、これからのスマートフォンの操作方法に一石を投じるであろう3D Touch対応のタッチパネル付き液晶ディスプレイだろう。

 3D Touchとは、画面上のアイコンなどに指でタッチする強さを、「通常のタッチ」に加えて、「強く押す」と「さらに強く押し込む」の合計3段階で認識する技術だ。

iPhone 6S 3D Touchの搭載により、通常のタッチに加えて、強く押す、さらに強く押し込むの合計3段階で操作が可能になった

 誤解されがちだが、この3D Touchによる強く押す動作は、いわゆるアイコンの「長押し」とは別だ。

 実際、ホーム画面に並ぶアイコンに弱くタッチして指を置きっぱなしにしておくと、これまで通りアイコンがプルプル震え始めて、アイコン並べ替えモードに切り替わる。

 だが、そこでiPhoneの頑丈さを信じて指を強く押しつけると、プツッという振動とともにアイコンからムニュッとメニューが飛び出してきて、アプリ内の機能を直接呼び出すことができる。さらに後述する別の操作などでは、ここからもう1段階強く押し込むと別の操作が可能になる。

iPhone 6S 内部的には、ディスプレイのバックライトに組み込まれた容量性センサーが、指で押す度にカバーガラスとバックライトの間の微細な距離の変化を測定し、タッチセンサーと加速度センサーの信号を組み合わせることで、タッチ、強く押す、さらに強く押し込むの段階的な操作を素早く正確に画面へ反映させる

 ここで触れておきたいのは、iPhone 6s/6s Plusは、3D Touch対応液晶の搭載に合わせて、新たに「Taptic Engine」も加わっているという事実だ。

 Taptic Engineとは、Apple Watchに搭載された繊細な振動を指に伝えるエンジンのこと。Apple Watchでは、まるで時計の上から、誰かに指先でコンコンとたたかれているかのような感触を実現していたが、iPhone 6s/6s Plusでは泡立っているコップを持ったときのような繊細な振動が伝わって来る。

 アップルは、3D Touchの操作をしたときに画面を見なくても手の感触だけでiPhoneの反応が分かるように、Taptic Engineとペアを組ませているのだ。

 例えばホーム画面のアイコンを長押しした場合は、まったくの無反応で何も感触がないが、メニュー表示に対応したアプリを強く押した場合は、まるでiPhoneが首を縦に振ったかのようにプツッという振動を1度だけ感じる。

 一方、設定など一部そうしたメニューの表示に対応していないアプリもあるようだが、そうしたアプリを強押ししたときは、まるでiPhoneが首を横に振っているかのようにプツプツッと2回振動を感じる。

iPhone 6S Apple Watchに比べて大型の「Taptic Engine」を新搭載。バッテリーの下にバー状のTaptic Engineが内蔵されている
iPhone 6S Taptic Engineの中身。一般的な携帯電話のバイブレーションは何度も振動サイクルを繰り返して最大出力に達するが、Taptic Engineは1サイクルで最大出力に達して素早く止まる。これによって、ブツッという短くはっきりした反応を返すことが可能となっている

 ただ、「アイコンをタッチする」という操作は、誰でもすぐに分かる直感的な操作だが、長押しと同様で、強く押すといった操作は、そんな操作ができるとは気が付かない初心者も多いだろうから、かえって不便なのではないかという懸念もあるようだ

 だが、心配はいらない。これまで通りのタッチ操作しか知らなくても、iPhoneの基本操作はすべてこれまで通りできて、3D Touchの操作を一切使わなくても、何も困ることはないからだ。

 3D Touchの操作は、こうした基本操作をまどろっこしく感じ始めてきた中上級者向けの機能で、パソコンで言うところのキーボードショートカット(特定のキーコンビネーションを押すとマウスを使わずに操作が実行できる)に似ている。

 デザインの悪いパソコン用アプリでは、このキーボードショートカットを暗記していないとできない操作があったりするが、アップルはデザインガイドラインでそうならないように規定しているおかげで、Macのアプリにはそうしたものはほとんどないし、それはiPhoneも同じだろう。

 実は音楽再生時に、iPhone対応ヘッドフォンのボタンを2度押しすると曲のスキップができるのと同じで、3D Touchの操作も「なくてもほとんど不自由しないが、知っている人、慣れている人には劇的な操作性の向上をもたらす機能」となっている。

 3D Touchという技術に気付いている人は、実際に操作が用意されているか、用意されていないか分からなければ、とりあえず強く押し込んで見ればいい。操作が用意されていなければ、iPhoneが2回プツプツッと振動して教えてくれる。

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