iPhoneと言えば、今や世界で最も使われているデジタルカメラとしての顔も持っている。毎年進化し続けるカメラ機能だが、2015年にはついに画素数の上でも大きく飛躍して1200万画素になった。
毎シーズンどんどん画素数が上がる他社のスマートフォンに対して、アップルはなかなか画素数アップを図ってこなかった。
ただ単に画素数を変えると、画像が暗くなったり、にじんだりといった問題が発生することもある。アップルは常に最も美しい写真を撮れるように心がけており、その美しさが保てる技術的な準備が整うまでは画素数を上げない、とアップル上級副社長のフィル・シラーが製品説明で語っていた。
確かに画素数が上がるということは解像感が増すというだけの話であって、真っ白な雪景色に隠れた植物の繊細な線をうまく描きだすことや、夕暮れの光が人の顔の上に描きだす豊かな影のグラデーションを再現することと、それほど関係はない。
シラーの言葉や、世界中で展開されたiPhone 6で撮影したユーザー写真の広告から考えても、アップルはiPhoneのカメラ機能を極めて真剣に考えているのは明白だ。
今回、アップルが解像度を上げつつも、写真の美しさを保つために、一体どれほど多くの工夫を凝らしたのか。最先端センサーの採用、新しい画像信号プロセッサ、先進的なピクセルテクノロジーのFocus Pixels(オートフォーカスが高速になる)、強化されたローカルトーンマッピング、光学式手ブレ補正機能など、さまざまな技術が詰まっている。
それら1つ1つの詳細はここでは紹介しない。興味がある人は、英語だが製品発表時にフィル・シラーが語った内容をぜひ聞き取ってみてほしい(図解もあるので、それほど英語力はいらないはずだ)。
講演でシラーが見せたいくつかのサンプル写真は十分に説得力を持つ美しさだった(現在、それらの写真はアップルが公開したギャラリーで見ることができる)。
これだけでもかなりすごい1200万画素カメラだと思うかもしれないが、実はこれはほんの入口だ。
今や多くのデジタルカメラが自撮りに対応する(液晶ディスプレイをカメラのレンズ側に向けられる)ほどの世界的なセルフィー(自撮り)ブーム。アップルは、こんな世の中の流行もしっかり捉えている。
既に外向きの「iSightカメラ」では、自然な色合いで撮影できる「True Tone」というフラッシュ機能の評判がよかったが、液晶ディスプレイ側にある500万画素の「FaceTime HDカメラ」でも、この自然な色合いで撮れるフラッシュを搭載した。
環境光に合わせて肌色が最もきれいに撮れる色を計算して、液晶ディスプレイの画面を通常の画面表示時の3倍の明るさで発光させる「Retina Flash」という機能を開発したのだ。iPhone 6s/6s Plusは、世界最強のセルフィーカメラも目指している。
これに加えて、新しいカメラは4K画質の動画も撮影できるようになった。
iPhone 6s/6s Plusの液晶ディスプレイは、画素数が4Kには満たないし、最新のiPad ProですらMacBookより高解像度なのに4Kには達していない。今、Macで4K画質の映像を素のままで楽しめるのは「iMac Retina 5Kディスプレイモデル」だけだ(最新のApple TVが非対応なのはちょっと残念)。
とはいえ、既に新たな業界標準として4Kの動画が定着しつつあることを考えると、人生における大事な瞬間の記録だけでも4K画質で残しておきたい。
iPhone 6s/6s Plusは、そんなユーザーの望みをかなえてくれる。
4Kとは、1080pのフルハイビジョン4面分という解像度。830万画素の絵が、動画になっているという驚異的な状態で、撮影にも、記録にも、編集にも、膨大なプロセッサパワーが必要だ。
それにも関わらずアップルは撮影しながら、大事な瞬間を写真としても記録する動画撮影中のシャッター機能も用意している。動画撮影中に撮った写真は1200万画素ではなく 4Kの1コマ分である830万画素になるが、これだけの画素があれば、ほとんどの用途に困らないだろう。
さらにiPhone 6s Plusは光学手ブレ補正の機能も実現している。iPhone 6sシリーズは、おそらく世界で最も普及した4Kカメラとして、4Kビデオの歴史を変える存在になる可能性が十分ありそうだ。
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