米Microsoftは9月22日(現地時間)、「Office 2016」の提供を開始した。Word、PowerPoint、Excel、Outlook、OneNote、Project、Visio、Accessから構成される最新のデスクトップ版Officeだ。Windows 7/8/10で動作する。
Office 2016は、個人/ビジネスともにOffice 365契約ユーザーであれば、無料でダウンロードして利用できる。ボリュームライセンス契約の企業ユーザーについては、10月1日からVolume Licensing Service Centerでダウンロードが可能になる予定だ。
米国では、これらの契約をしていないユーザー向けにも販売が始まっているが、原稿執筆時点で日本の個人向け単独販売に関する案内はない。後日、日本マイクロソフトから「Office Personal(Premium)」の名称で日本市場向け製品を購入する方法や価格が発表されるとみられる。
なお、Macユーザー向けには「Office 2016 for Mac」の正式版が、既にOffice 365ユーザー向けに先行して提供されていたが、米国ではOffice 365契約者以外にも販売が始まっている。
以前の連載記事でも解説したように、MicrosoftはWindows 10のリリースに合わせて3種類のOffice製品をWindowsプラットフォーム向けに展開しようとしている。
1つは7月29日のWindows 10一般公開日に提供が開始された「Office Mobile apps for Windows 10」。いわゆるタッチ操作に最適化されたOffice製品であり、iPadやAndroidタブレット向けに提供されているOfficeアプリに近い位置付けだ。Universal Windows Platform(UWP)アプリとしてWindowsストア経由で提供され、Word、Excel、PowerPoint、OneNoteの4つが別々のアプリとして用意されている。
Office Mobile apps for Windows 10は無料での利用が可能だが、文書の保存にはOneDriveなどの利用が必要なほか、一部編集機能に制限がかかっており、全機能を利用するにはOffice 365のサブスクリプション契約が求められる。広くユーザーに門戸を開いているものの、各種MicrosoftサービスやOffice 365への誘導がその狙いにあるわけだ。
2つめとなるのが、今回9月22日に提供が始まった「Office 2016」。従来までのOfficeの後継にあたる「デスクトップ版Office」で、タブレットを含むPCでの利用を前提としている。これまでは「Office Preview」の名前でOffice 365契約ユーザーにプレビュー版が提供されていたため、これを使っていた人もいるだろう。
Office 2016では、Word、PowerPoint、OneNote向けの共同編集機能(Wordのリアルタイム入力機能では、他ユーザーの編集内容をその場で確認できる)、強化されたOutlookのメール整理機能、Excelに統合されたPower BI発行機能、進化した操作アシスト機能などが搭載されている。
そして3つめとなる「Office Mobile for phones」は、現時点で発売が「今秋」とのみ予告されている。9月末ないし10月でのOEM提供開始が見込まれる「Windows 10 Mobile」の発表に合わせて正式にリリースされるだろう。
タブレット版のOffice Mobile apps for Windows 10が見た目はデスクトップ版のそれに近いのに対し、スマートフォン版のOffice Mobile for phonesは狭い画面に最適化されたユーザーインタフェースを採用するため、現状の「Office for iPhone」に近い形態になるのではないかと考えられる。
このように3種類用意されるWindows 10世代のOffice製品だが、どれもサブスクリプションサービスのOffice 365を契約することがある程度前提になっている。
Office Mobile apps for Windows 10を機能限定の無料版で利用したり、今後発表されるとみられる単独販売のOffice 2016 Personal(Premium)を利用する限りでは、サブスクリプション契約は必須ではない。
ただし、2014年末に発表された「Office Premium」がバンドル専用でパッケージ単体販売がなく、1年間の無料期間を経てのOffice 365契約への誘導を意図した製品であることから、MicrosoftとしてOfficeによる収益をボリュームライセンスまたはサブスクリプションへと順次移行し、単体製品でのライセンス販売は徐々に収束に向かっていく方向性なのではないかと考える。
スマートフォンやタブレットに提供される無料版Officeが、サブスクリプションや他のサービスを組み合わせないと使いにくい仕組みになっているのも、こうした意図があるのだろう。
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