ココが「○」 |
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・スマホ連携も可能なテレビ機能 |
・ハイレゾ対応Pioneerスピーカー |
・4コアCore i7などスペック充実 |
ココが「×」 |
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・テレビの起動に待たされる |
・スピーカーに過大な期待は禁物 |
・タッチパネルは非搭載 |
かつて「テレビ付きパソコン」は、国内大手PCメーカーにとって花形製品だった。単に日本のテレビ放送を受信できるチューナーを内蔵しただけでなく、市販のレコーダー顔負けに高機能の視聴/録画/管理ソフトウェアを搭載することで、高付加価値を演出して高単価に販売でき、しかも低価格攻勢をかける海外メーカー製PCが追従しにくい分野ということもあり、各社がこぞって注力していたものだ。
しかし2000年代後半から、地上デジタル放送移行に伴う録画データの編集自由度低下(当初のコピー制限など)、市販テレビの高機能化や低価格化、ネットを利用した動画配信サービスの充実化、よりシンプルで安価なPCを求めるユーザーニーズ増加、スマートフォンの台頭など、複合的な要因が重なり、こうした「テレパソ」は数を減らしている。
とはいえ、自室や寝室などのセカンドテレビ兼PC用、単身者のオールインワンPC用など、以前ほどではないにせよ、テレパソを欲しいという声が今でも聞かれることは確かだ。メーカー各社のラインアップを見ると、テレビ機能付きPCはすっかり少数派だが、スマホやタブレット、クラウドサービスとの連携、ハイレゾ音源対応など、テレビ+αの提案で時代に即した進化を遂げている点に注目したい。
今回は富士通のフラッグシップモデル「FMV ESPRIMO FH77/UD」で、イマドキのテレパソがどうなっているのかチェックしてみた。
富士通の「FMV ESPRIMO FH」シリーズは、PCとしての基本的な用途に加えて、テレビ、レコーダー、オーディオといったエンターテインメント面が充実したオールインワン構成の液晶一体型デスクトップPCだ。
今回入手したFH77/UDはその最上位機であり、2015年PC夏モデルとして登場し、Windows 10無料アップグレード対応モデルとしてこの冬も継続販売されている。量販店での実売価格は19万円台半ば(税込)だ。
FH77/UDは、地上/BS/110度CSデジタル放送対応のダブルチューナーを内蔵する。ダブルチューナーは1基が視聴専用、もう1基が視聴および録画用だ。裏番組の録画に対応するのはもちろん、ウィンドウ表示でテレビを楽しみながらPCで作業するといった「ながら視聴」が手軽に楽しめる。付属のリモコンを使えば、家電のテレビ感覚で操作可能だ。
ディスプレイは、1920×1080ピクセル(フルHD)表示の23型ワイド液晶を搭載(タッチパネル非搭載)。高輝度で広視野角、発色もPC向け液晶パネルとしては不満がなく、1人でカジュアルにテレビを楽しむぶんには十分な画面サイズと表示品質だ。実測での照度は356ルクス(液晶ディスプレイの仕様表に使われるカンデラ/平方メートルではない点に注意)と、十分な明るさだった。
録画番組は2Tバイトと大容量のHDDに保存したり、BDXL対応Blu-ray DiscドライブでBDメディアに書き出せる。視聴/録画アプリは「DigitalTVBox」を搭載し、電源オフからの予約録画、外付けHDDへの録画、録画番組の自動チャプター設定やチャプター編集、スキップ再生、早見/スロー再生など、テレパソとしての基本はしっかり押さえている印象だ。目新しいところでは、テレビとWebの連携サービス「Hybridcast」にも対応する。
実際にDigitalTVBoxを使ってみたが、各種機能の操作性は悪くない印象だ。ただ、テレビの起動に時間がかかるのは気になった。アプリ起動からテレビ視聴が可能になるまで、実測で約50秒かかってしまう。残念ながら、旧機種に搭載されていた約1.5秒起動のクイックテレビ機能は省かれている。
さらにイマドキの機能としては、別途ピクセラ製のアプリ「StaionTV」(無料、リモート視聴プラグインは有償)や富士通独自のアプリ「My Cloudプレイ」(一部機能は有償)をダウンロードすることで、スマホやタブレットから視聴中もしくは録画した番組のストリーミング再生ができるなど、多機能化が進んでいる。
これらを利用すれば、家庭内だけでなく外出先でスマホやタブレットから自宅で受信したテレビ放送を楽しむことも可能だ(LTEでも利用できるがデータ通信量は要注意)。StaionTV/My CloudプレイはWindows、Android、iOSで利用できる。
アプリ連携で実現するスマホ/タブレット連携機能 | ||
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機能 | StationTV | My Cloudプレイ |
ライブ放送の視聴 | ○ | − |
録画番組のストリーミング再生 | ○ | ○ |
外出先からの録画予約 | ○ | − |
録画番組の持ち出しオフライン再生 | − | ○ |
DLNA対応レコーダーの録画番組再生(家庭内LAN) | − | ○ |
テレビだけでなく、オーディオ面もイマドキの進化が見られる。FH77/UDはパイオニアと共同開発した「Sound by Pioneerスピーカー」を内蔵し、別途ハイレゾ音源を購入すれば、PC単体でハイレゾ楽曲を手軽に楽しめるのだ。これは旧機種にはない強化ポイントとなる。
この2Wayスピーカーはボディ前面の下部に配置。左右のユニットは、それぞれボックス化して、ブラックアウトした金属メッシュの奥に内蔵されている。中をのぞくと、それぞれがツィータ―×1とウーファー×1で構成され、小型ながら吸音材も備えていることが分かった。同社によれば、ツィータ―の振動板を支える部分に磁性流体(液体状のもの)を採用し、不要な振動を抑え、高音域がクリアになっているという。
最初に音楽CDを試聴してみると、確かに一般的なPCに比べて明らかに中〜高音域がよい。スリムでコンパクトなボディに内蔵したスピーカーにしては健闘している。しかし、ミニコンポなどオーディオ専用機と比較するとパワー不足で、特に低音域が弱い。ここは価格や本体サイズとトレードオフなので仕方がないところか。
次にハイレゾ音源を視聴してみた。サンプルとしてe-onkyo musicからflac 96kHz/24ビットの楽曲をダウンロードし、CDと聴き比べてみる。アプリはWindows Media Player 12とfoobar2000 v1.3.8を用いて、内蔵スピーカーから出力した。
結果は内蔵スピーカーでもハイレゾ音源の優位性は明確で、高音から低音まで全体に広がりが出て、音の深まりが感じられる。ハイレゾ対応のオーディオ専用機には及ばないものの、筆者のほか周囲の2人にもブラインドテストしてもらった場合、2人ともCD音源とハイレゾ音源を言い当てられるくらいには差がある。より高音質を求めるならば、別途好みのヘッドフォンをつないで楽しむとよいだろう。
なお、この内蔵スピーカーは、PCの電源がオフでも利用可能だ。デジタルオーディオプレーヤーを別売のケーブルで接続するだけで、FH77/UDのスピーカーから音楽を楽しめる。また、電源オフUSB充電機能により、音楽を再生しながら、デジタルオーディオプレーヤーなどの充電も可能だ。この辺りの使い勝手はよく作り込まれている。
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