GeForce GTX 1080/1070の新機能をNVIDIAが解説Pascalで仮想世界が現実に近づく(2/2 ページ)

» 2016年05月19日 18時42分 公開
[石川ひさよしITmedia]
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GeForce GTX 1080/1070の目玉機能は「現実に即した出力」

 VR環境を含め、より現実に即した仮想世界というのがPascal世代でのトレンドとなる。その1つが「VR WORKS AUDIO」だ。VRWORKSでは視界(SIGHT)や感触(TOUCH)といった具合で、現実世界をシミュレートする機能が提供されてきたが、今度は音響(SOUND)だ。VRWORKS AUDIOでは、現実世界での音が、音の発生する位置、そして壁面や障害物で反射し、伝播していくような現象をシミュレートする。

音の伝播を3D環境において複数のパスでシミュレートし出力する

 こうした技術については、Nick氏も「グラフィックスだけではできない仮想世界」と表現しており、それを体験してもらうことが認知を広める点で重要となる。そこで、「VR Fun house」というアプリケーションを用意し、Steam VRなどを通じ、オープンソースとして配布する予定とのことだ。

GAMEWORKSでも、物理演算(PHYSX)や流体(FLEX)、破壊(DESTRUCTION)、ヘア(HAIRWORKS)、爆発(FLOW)、布(CLOTH)といったように、リアリスティックなシミュレートを充実させている

ゲーム内自撮りがはかどる「Ansel」

 Anselは、ゲーム内のスクリーンショットを撮影する機能だ。ただし、これまでのスクリーンショット機能は、ゲームプレイ中の視点でのみ可能だったのに対し、Anselはプレイヤー視点のカメラとは別に撮影用のカメラを使うことができるのがポイントだ。

 プレイヤーの上空から俯瞰(ふかん)したり、あるいはプレイヤーキャラクターの自撮りなど、自由なキャプチャができる。また、そのキャプチャの品質も、ディスプレイ解像度に依存するというわけではなく、解像度の32倍まで、4.5ギガピクセルでの撮影ができ、色情報も内部的にFP16をサポートし、メジャーな写真品質のフォーマットが利用できる。こうした点からNick氏は「キャプチャ」ではなく「写真」と表現していた。出力される写真も、平面写真からVR対応の360度写真、各種のエフェクトも処理できる。

Anselはゲーム内で自由な視点から高精細写真が撮影できる。プレゼンのようなプレイヤーキャラクターの自撮りも可能だ

解像度の32倍という高精細な出力により、遠くにある文書の文字も読める! ただし、高解像度であればあるほどファイルサイズも大きくなり、最大では1.5GB(出力フォーマットにもよる)ものファイルサイズになるとのことなので要注意

 デモンストレーションもあったので、使い方の流れを説明しておくと、まずゲームをポーズ状態としてAnselのUIを呼び出し、そこから出力解像度や撮影方法を指定してAnsel用のカメラをベストポジションに移動させる。

 撮影(Snapボタン)すると、例えば高解像度のような場合は、いわゆるマルチショット機能のようにせわしく画像が切り替わり、その後に1枚の写真として合成、出力される。360度写真の場合は、VRヘッドセットを装着し専用ビューワーから見れば、あたかもゲーム世界の中にいるような雰囲気が楽しめる。

 そして、そのデモンストレーションで用いられたゲームでは、本来ならプレイヤーが立ち入ることができない川の上だったり、上空からだったりと、制限外を自由に移動し撮影していた。高解像度で撮影すれば、本来ならば遠くにある、細かなオブジェクトのディテールも鮮明に映し出すことができる。

ゲームをポーズした状態でUIを呼び出すと、左端に表示される。そこから設定を行い、カメラをセッティングし、Snapボタンで撮影するという流れ

各種のフィルタやエフェクトにより、Instagramのような楽しみ方も可能

 AnselはPascal世代のGeForce GTX 1080/1070専用というわけではない。GeForce GTX 700世代以降のGPUがサポートされているので、手持ちのGeForce GTXカードで試してみるのもよいだろう。ただし、Anselをサポートするタイトルが必要。実装は簡単とのことで、今後対応タイトルを充実させていくという。サポートタイトルには「Tom Clancy's The Division」や「The Witcher 3: Wild Hunt」などの人気タイトルが挙げられ、間もなく体験可能となる見込みだ。

高解像度撮影時のマルチショット合成にはCUDAの技術が利用される

そのほかのGeForce GTX 1080/1070新機能

 GeForce GTX 1080/1070からは、新たなSLIブリッジが用意される。この新しいSLIブリッジにより、バスの動作クロックが従来の400MHzから650MHzへと高速化されることに加え、デュアルリンクとなることで、2基のGPU間を流れるデータの速度が向上する。

 そこで気になるのが従来のSLIブリッジを用いた場合だ。NVIDIAの調べによると、従来のSLIブリッジで650MHz動作となるのかどうかは保証されない。LEDが付いたNVIDIA製のSLIブリッジでは650MHz動作を確認しているが、品質が満たないものでは400MHz動作になるだろう。また、従来のSLIブリッジでも2つ用いることでデュアルリンク動作にはなるようだ。ただし、新SLIブリッジと同等のパフォーマンスとなる保証はない。このあたり、SLI構成を楽しみたいエンスージアストゲーマーは注意が必要だ。

SLIブリッジが新たに、デュアルリンクで高クロック動作となる

 FAST SYNCは、V-SYNCのオン/オフによるデメリットを解消する新たな同期技術になる。V-SYNCオンの場合はテアリングが解消されるが遅延が長くなり、V-SYNCオフでは遅延は短いがテアリングが発生しやすい。これに対し、FAST SYNCはレイテンシを短く保ちつつ、テアリングの発生を解消することが可能だ。

V-SYNCオン/オフのメリット・デメリットと、FAST SYNCの特徴

 具体的には、ゲームエンジンからGPUまでのグラフィックレンダリングの処理はV-SYNCオフの状態と同じで、常にレンダリング画像を送っている。一方で、バッファからディスプレイ出力までの表示に関する処理には、V-SYNCオンの状態と同様のフロントバッファ、バックバッファに加え、ラストレンダードバッファ(Last Rendered Buffer)が新設される。

 GPUがレンダリングを行いバックバッファに画像が転送されると、バックバッファはラストレンダードバッファへ、ラストレンダードバッファはバックバッファへと入れ替わり、また次の画像がバックバッファへと転送されるとバックバッファとラストレンダードバッファへが入れ替わる……という具合で最新の画像を保持される。そしてフロントバッファのスキャン(ディスプレイへの出力)が完了したタイミングでラストレンダードバッファはフロントバッファと入れ替わる。

 従来のV-SYNCオンの際は、フロントバッファの画像がスキャン完了したタイミングでバックバッファからフロントバッファへの入れ替えを行っていた。そしてこのタイミングでバックバッファへの画像の送出が開始される。このため、数フレーム古い画像がフロントバッファに送られるという状況が生じることもあった。この部分の挙動が大きく異なることになる。

フロントバッファ、バックバッファに加え、ラストレンダードバッファが追加され、ここに常に最新の画像が送出される

 FAST SYNCは、カウンターストライクのようにより高いフレームレートが必要なタイトルで有効な機能という。120Hzや144Hz、それ以上の高リフレッシュレート液晶を所有するユーザーには効果的となるだろう。

 一方で、G-SYNCに関しては、「より低フレームレートの環境で長けている」という具合で説明している。もちろん、G-SYNC液晶ディスプレイは高リフレッシュレートの製品としてリリースされているわけで、「長けている」と表現したとおり、有効であることに変わりはない。GPU性能とゲームタイトル毎のフレームレートに合わせ、FAST SYNCとG-SYNCを使い分けることで、より快適なプレイが可能になるはずだ。

 温度のマージンに合わせてGPUクロックをブーストさせるGPU Boostは、Pascal世代でGPU Boost 3.0へと進化している。GPU Boost 2.0との違いは、電圧に対するGPUクロックのオフセットマージンを最大まで利用できるようになった点だ。従来のGPU Boost 2.0は、ブーストの値が固定だった。GPU Boostがより効率的に働くことで、パフォーマンスも向上する。

GPU Boost 2.0(左)とGPU Boost 3.0(右)の周波数オフセットの違いに注目。GPU Boost 2.0のBoost上限が固定幅だったためここに「Lost Opportunity」(損失)が生じているが、GPU Boost 3.0では最大限まで活用するようになる

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