同じ型番の製品を買ったら仕様が違っていた そんなのアリ?牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2016年05月25日 06時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]

 多くの業界では、製品の型番が同じであれば、仕様は全く同一とみなされる。同じ型番で異なる仕様の製品が混在していては、購入者はもちろん販売店が混乱するのは必至だ。もしやむを得ず仕様を変更する場合は、これまでとは異なる新たな型番を用意することとなる。少なくとも、本連載で扱っているPC周辺機器の業界では、こうした慣習が当然のこととして認識されている。

 もっとも実際には、型番が同じにもかかわらず、仕様が異なる製品というのは発生する。製造上のミスなどで発生する場合もあれば、意図的に仕様が変えられるケースもあり、中にはメーカーの一部の社員しかその事実を知らないがゆえに、サポートの窓口などで話がかみ合わないこともある。いかなる理由でこうした事態が起こりうるのか、今回はその裏事情に迫ってみよう。

仕様が変わると型番も変わる、その理由

 食品などの業界では、製造時期や製造元の工場などの条件により、同じ製品でありながら味や食感が異なっているといったケースは起こりうる。これは原材料の特性からして仕方のない問題であり、メーカーや販売店はもちろん、消費者も含めて暗黙の了解として認知されている節がある。

 しかしPC周辺機器の場合、同じ型番のまま仕様を変えることは原則としてない。理由は大きく分けて2つある。1つは、これらはPC本体があって初めて成立する製品であり、仕様が変わると正常に動作しなくなる可能性があるからだ。あるPCに対応するために仕様を変更したとして、それによって別のPCに対応できなくなってしまえば、それはもはや元と同じ製品として扱うことは難しい。

 では完全な上位互換であれば型番を変えなくて構わないかというと、実際には難しい。仕様が複雑な周辺機器では、ほんのわずかな仕様の違いが正常動作を妨げることも多く、上位互換のはずが実はそうでなかったというトラブルは頻繁に起こりうる。いわゆる相性問題というやつで、電気的な特性が若干変更になることで、これまで当たり前のように動いていた製品が、ウンともスンとも言わなくなることもしばしばだ。

 こうした事態をなくすには、メーカーは検証を強いられるわけだが、仮にOSのバージョンが10通り、ソフトウェアのバージョンが5通りあったとすると、50通りもの組み合わせにおいて、全ての機能をチェックし直さなくてはいけない。

 これだけの数を検証する手間を掛けるのであれば、新製品として発表したほうが、社内の手続きもスムーズになり、また販促の効果も見込める。もしうまく動作しない組み合わせがあれば、ひたすら原因を突き止めようとするよりも、「新製品では非対応」と発表したほうが手っ取り早い。こうしたことから、製品の仕様を変更する場合は、別の型番を取り直すのが一般的だ。

 もう1つ、動作するか否かといった問題とは別に、PC周辺機器は細かい仕様がスペックシートとして公開されているため、変更が発覚しやすいことが理由として挙げられる。例えば外付けHDDやNASでは、消費電力やエネルギー消費効率、騒音などが細かい数値で記載されている。こうした製品で、内部のドライブを別のメーカーの製品に変えると、対応機器や対応OSは変わらなくとも、数値は大きく変わってしまうことがある。

 ここで主に問題になるのは、組み込み用途で製品を継続購入している法人だ。組み込みで製品を採用する場合、スペックが厳密に決められており、電気的特性のわずかな変更が長期的に耐久性などに影響を与える可能性がある。多くは大口の顧客であり、隠し立てをすると大規模な損害賠償レベルの話に発展することは避けられないので、たとえ見た目には正常動作する場合でも、別の型番を持つ製品とし、アナウンスを行うのが一般的だ。

 製品の特性上の問題もある。例えば食品は短期間で消費されるため、たとえ「味が変わった」と感じた場合でも、古い製品と新しい製品を並べて客観的に検証することが難しい。販売店の側も在庫については先入れ先出しを徹底しており、ある在庫を売り尽くすまで新しい在庫を店に出さないため、新旧の製品を同時に手に入れることが難しいという事情もある。

 これに対してPC周辺機器は食品のように短期間で劣化しないうえ、同じ製品が販売店で在庫として滞留する期間も長い。中古でも流通することから、新旧の製品を並べて比較するのは比較的容易だ。

 また、旧製品は不具合が多かったのが新製品で改善されたという場合、型番を変えたほうが口コミの悪評をリセットできるため、なおのこと型番を変更したほうがメリットが大きい。こうしたさまざまな理由から、製品の仕様が変更になると、型番も改められることがほとんどだ。

型番を変えたくても変えられない事情

 しかしこうした状況にもかかわらず、仕様の変更を販売店やユーザーに知らせず、そのまま同じ型番で販売を継続するケースも、わずかながら存在する。幾つかのパターンに分けて見ていこう。

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