無駄じゃない? 小さな製品のパッケージが巨大になる理由牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2016年10月01日 06時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]

 外付けのHDDやUSBメモリといったPC周辺機器は、現状の規格の範囲ではこれ以上は不可能なほど本体サイズの小型化が進み、かつての製品に見られたゴツいボディーの面影は全くなくなった。また拡張カード類では、マニュアルの簡略化やドライバCDの省略も進み、付属品も少なくなりつつある。

 これだけ条件がそろえば、それらを収めるパッケージは容易に小型化できそうなものだが、現実は必ずしもそうではない。小さな本体に似つかわしくないほど巨大なパッケージが、変わらず店頭に並んでいるのだ。

 パッケージが小さくなれば輸送コストも下がり、また販売店にとっても同じ面積で多くの製品を陳列できるようになるため、メーカーにとっても販売店にとってもプラスになりそうなものだが、実際はそうではない。これは一体どのような理由によるものなのだろうか。メーカー側、販売店側それぞれの事情を探ってみよう。

大きなパッケージは万引き対策だが通用しない場合も……

workaround

 パッケージを小型化できない理由としてよく知られているのは、万引き対策だ。ポケットにすっぽり入ってしまうような小さなパッケージだと、防犯タグを取り付けるにしても限界があり、容易に万引きされてしまう。

 これが文房具の消しゴムやシャープペンシルの芯など安価な品であればまだしも、USBメモリやメモリカードなどは何千円もする場合があり、万引きによるダメージは非常に大きい。それゆえ、パッケージサイズを大きくすることでポケットに入れられなくし、物理的に万引きを防ぐという、アナログな対策が取られているというわけだ。

 もっとも、パッケージを大きくすると購入後の持ち帰りにも支障を来すので「持ち帰りが面倒だから通販サイトで買う」という理由で客を逃したくない販売店側としては、この方法は痛しかゆしだ。また年々売上を伸ばしつつあるネット通販では、そもそも万引き対策は必要ではないため、万引き対策だけを目的としてパッケージを大きくすることは、かつてに比べると減少しつつある。

 ちなみに、先ほど例に挙げたUSBメモリやメモリカードはここ十数年ほどで店頭での現物展示はほぼ姿を消し、いまでは展示カードによる陳列が一般的になっている。セールスポイントや仕様など、パッケージに書かれたのと同じ情報を印刷した展示カードを店頭につるしておき、それをレジに持っていくと、会計時にバックヤードから現物が出てくるというシステムだ。

 これは万引き防止の意味合いもあるが、製品の特性上、容量違いや色違いなどのバリエーションが多く、パッケージが大きくなると陳列が困難になるためだ。

 なおここまで紹介した、万引き対策としてのパッケージサイズの大型化は、外国人窃盗団には全く通用しない。外国人窃盗団は日本の万引きとは異なり、小脇に抱えられる程度のサイズであれば製品を強引に持ち去ろうとするからだ。

 これらへの対抗策として考え出されたのが、空箱による展示である。空箱での展示は主に店頭展示にボリュームを出し、在庫の縮小を悟られないために用いられるが、外国人窃盗団に対する持ち去り対策としても有効に機能しているのが現状だ。

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