ラノベ作家になりたい? よろしいならば一太郎だプロも絶賛(5/6 ページ)

» 2017年03月30日 11時00分 公開
[瓜生聖ITmedia]
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「一太郎って使いやすかったんだなと」

―― 一太郎はいつから使っていますか?

カミツキ 実はデビュー作の『こうして彼は屋上を燃やすことにした』まではWordを使っていたんです。その後、最初に担当になった編集さんから強く一太郎を進められて。当時は右も左も分からない状態だったので、言われるがままあっさり乗り換えたんです。でも、次の担当の方には『Word形式で送っていただけると助かります』って(笑)。で、また戻したんですけど、そのとき初めて、『一太郎って使いやすかったんだ』と気づきました。

―― Officeのインタフェースが大きく変化した時期ですね。確かに、あのころリボンインタフェースが使いづらい、という声はよく耳にしました。

カミツキ 時間をかけて使いこなせばいいのかもしれないですけど、ソフトの使い方をマスターすることにあまり時間をかけたくないんですよね。それでWordを使うんじゃなくって、慣れている一太郎で執筆して、編集さんに渡すときだけWord形式で出力するようにしました。

一太郎からWord形式で出力する場合は「名前を付けて保存」ダイアログの「Word」ボタンをクリック

―― 使い方を調べなくても使えるソフトがよい、と。

カミツキ そうですね。それだけだと単に『慣れているのがいい』って話なんですが、やはり生粋の国産だからか、一太郎は縦書きに強いと思います。例えば、ラノベは創作した単語にふりがなを打つことが多いんですが、Wordでふりがなを付けるとその行だけ左にずれてしまってガタガタになってしまいます。一太郎だとそんなことはないですし。

―― Wordの場合は行間を固定値にしないと、ふりがながない行とある行で本文の位置が異なってしまいますね。

カミツキ 縦書きページを横にずらっと並べてどんどん横スクロールで書き進めていけるのもいいですね。そのほか、会話文だとら抜き言葉を指摘しないとか、段落はじめの字下げをインデント扱いにしないとか、そういう『お節介』がないところが気に入ってます。

縦書きページを横に並べてスクロール

ら抜き言葉など、くだけた表現の指摘は会話文を除外することができる

カミツキ 傍点が楽に付けられるのもいいですね。押しっぱなしでいい。括弧や記号を自動でよける機能は便利なんでしょうけど、そのあたりは編集さんの仕事だと割り切っています。僕は自分の担当は物語の中身だと思っているので、初稿の段階では印刷したときの仕上がりなどはあまり気にしてません。でも作家仲間の中には製本されたときのことを意識して行数を合わせたり、挿絵が入るページの前後の展開を調整したりする方もいます。そういう方には仕上がりに近い形で執筆できるのはいいんじゃないでしょうか。

―― 一太郎への要望は何かありますか?

カミツキ 細かいことですが、『もの書き』だとスクロール開始位置が15行(中央寄り)なんですよね。僕としてはこれ、すごく違和感があって。1行(画面の端)の設定に変更して使ってます。15行の方がいい、という人もいると思うので一概には言えないですけど、大きく変わるよりも、使い勝手は変わらないんだけれど、よくよく使ってみるといろんな改善点に気づかされる、そんなのがいいなあ、と思います。新規インストールではなく、バージョンアップの場合は極力以前のインタフェースを引き継いでくれるとありがたいです。

こだわりオーダーからスクロール開始位置の設定が設定できる。中央寄りにするとカーソル位置が真ん中あたりになるので前後を把握しやすい

カミツキ あとは、画面を広く使うために縮小表示にしてるんですが、起動すると毎回、表示倍率が100%に戻ってしまうので困っていました。表示メニューの表示倍率ではなく、その二つ上にある、画面表示設定から設定できることが分かったんですが、もっと分かりやすいといいですね。

画面下のスライダーや表示>表示倍率から設定した表示倍率は次回起動時には元に戻ってしまう

表示>画面表示設定から表示倍率を指定、「記憶」をクリックすれば起動時の表示倍率を変更することができる

―― 表示倍率のところに「次回もこの倍率で開く」というのがあればよかったのかもしれませんね。執筆にかかる時間はどれくらいですか。

カミツキ 理想は3カ月で一作のペースです。プロット1カ月、執筆1カ月、改稿に1カ月。さらにそこから、出版されるまでにだいたい1カ月ほどかかります。無理な進捗を組むよりは、書き上げられるペースで編集さんと相談するようにしています。

―― 「黒豚姫の神隠し」もそんな感じですか?

カミツキ そうですね。初稿を編集さんに渡してから、それから指摘されたところを直したり、自分自身で改稿したり、でやはり1カ月くらいはかかったと思います。特に今回は方言の監修があったので、最終的には5〜6校くらいあったかもしれません。

「黒豚姫の神隠し」の初稿。このように印刷したものをベースに編集とともに推敲を重ねる。赤字は編集者の指摘、黒字はカミツキレイニー氏のメモ。タイトルもこの段階では「黒豚姫は七月に」

ヒロインの波多野の特徴「ちょこんと飛び出た耳」は改稿の際に生まれたもの。年齢も当初はヨナよりも年下だった

「ここに来なさい」の沖縄弁訳。初稿時点の「クマーンカイチマーニ」は出版時には「クマーンカイクヮー」に修正された

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