新たに日本語から各言語へのリアルタイム翻訳に対応したというSkypeの翻訳機能。日本マイクロソフトが開いたメディア向けの体験会で、どのように翻訳してくれるのか実際に体験してきた。
今回提供される機能は米Microsoftが開発した機械学習ベースの翻訳エンジンを核とする「Microsoft Translator」を、Skypeを含めたマイクロソフトの各サービス(Bing、Microsoft Office、コルタナなど)に適用したものだ。サービスの詳しい解説は鈴木淳也氏の連載を読んでいただきたい。
中でもSkypeは、日本語を聞き取り、文字に起こし、外国語に翻訳して会話先に発声するという一連の会話翻訳をリアルタイムで行えるようになる。もちろん外国語から日本語へも同様だ。
まるで『ドラえもん』の「ほんやくコンニャク」のような言語の壁を取り払ってくれる機能だが、実際に使ってみるとどうだろうか。
会場では別の部屋にスタンバイする英語話者やドイツ語話者と、Skype翻訳を使って会話することができた。
まず自分が話しかけてみると、日本語で話した内容をSkypeが認識し、画面上に書き起こしてくれる。話し終わって書き起こしが完了するとそれを元に日本語から外国語(ここでは英語)へと内部で変換し、翻訳された英語が男性の機械音声で会話相手に発声されていることがこちらにも聞こえる。
それを聞いた会話相手が英語で応答すると、同じように画面への書き起こしの後にそれを翻訳した日本語の機械音声が男性ボイスで聞こえてくる。この流れを繰り返して会話することになる。
筆者の英語力は「大体聞き取れ、あまり話せない」という程度なのだが、このSkype翻訳で話してみると相手の発声は最初に英語で聞こえ、次に日本語の文字起こしが表示され、最後に日本語の機械音声が聞こえる、という順序でこちらに伝わってくるため、日本語を聞き取る前に次の会話に行ってしまうというのをついついやってしまいがちになった。
ドイツ語やスペイン語など、自分が全く学んでいない言語話者と話す時は、少なくとも文字起こしまで待たなければ言っていることを理解できないのでこういうことは起きないのだが、「英語で聞いて日本語で返す」ということもSkype翻訳では可能になるので、まるでお互い2カ国語話者のような会話の感覚も得ることができた。
翻訳精度に関してはまだ発展途上のようで、例えば固有名詞が入ってくるとうまく文字起こしできずに翻訳エンジンに正しく渡せないということがたびたび起きた。こういった問題に対しては、Skypeどうしの会話のうち約10%を品質向上のためのデータとして集め、機械学習のトレーニングに使用することで認識精度を高めていくという。
また、女性と話しているのに翻訳の機械音声が男性ボイスなのはやはり違和感があった。話者に合わせた声色も早めに実装してほしいところだ。
現在、Skypeによる会話翻訳機能は「Skype for Windows」と「Skype Preview for Windows 10」のみの提供となっており、ビジネス向けやMac向け、携帯向けに対しては未実装だ。より多くのユーザーが使うためにも、また翻訳精度の改善のためにもさらなるデバイス・ソフトウェアへの機能適用が待たれる。
このようにいくつかの改善の余地があるとはいえ、この機能が普及すれば外国人とのコミュニケーションが今までに比べてぐっと身近になるのではないかと思う。これがあるからもう言語を学ばなくていいというよりは、学習中の言語話者とSkype翻訳を通して話すことで活発にコミュニケーションでき、会話も外国語に少し遅れて翻訳機械音声が聞こえてリスニングと意味把握に使えるので、むしろ言語学習のハードルも下がるのではないだろうか。今後、Skype翻訳がどの程度国際交流に使われるのか注目していきたい。
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