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» 2017年06月21日 19時19分 公開

iPhone誕生10周年に見た「macOS」「watchOS」「tvOS」の進化 (3/5)

[林信行,ITmedia]

最新技術にあわせて再設計されたmacOSの土台技術

 macOS High Sierraでは、土台技術も大きく進化した。なんといっても大きいのはApple File System(APFS)の採用だ。ファイルシステムというのはSSDやHDDに書類ファイルなどをどのように記録するかの方式。これまでのMacのファイルシステム、HFS+(Hierarchichal File System)は30年近く前、容量が800KBのフロッピーディスクの時代にできたHFSというファイルシステムをベースにしている。

 しかし、今のMacのストレージはHDDの時代を経て、SSDやFusion Driveに進化。Appleはこの機に、今のコンピューターにふさわしいファイルシステムを1から創造した。よりファイルの破損などが少なくて安全、それでいて標準で暗号化機能などを内蔵しているためマルウェアなどの心配も少なくなる。


 HDD同様にSSDにも寿命があるが、APFSではこれまでのファイルシステムよりもSSDの寿命を延命するような工夫もある。また、ディスクにアクセスする頻度を減らすことによってファイルの読み書きの速度を劇的に向上させている。

 例えば、数GBほどある動画ファイルの複製を作ろうとすると、数秒ほど時間がかかるが、macOS High Sierraでは一瞬で完了する。これまでのHFS+では、ファイル内のデータを最初から最後まで読みこんではディスクの別の場所に移すため、データ容量が大きいと時間がかかるのだ。

 これに対してAPFSでは、元になったファイルを読み込むことも、新しいファイルに何か書き込むこともない。ただ、ファイルの目録上の項目を増やしているだけだ(昔からMacを使っている人向けに書くと「エイリアス」に近い)。つまり、複製してできたファイルを開いたときも、複製元のファイルを開いたときも、ディスク上のまったく同じデータを参照する。

 ここで複製したファイルに編集を加えると、編集で加えられた変更部分だけがディスクに保存される。このようにディスクの読み書き部分が非常にインテリジェントに進化し、不要なアクセスを徹底して減らしたためにMac全体としての速度も向上することが期待されている。

 もう1つは(iOSの記事でも触れたが)動画や画像のファイルフォーマットの変化だ。高速なGPUをフル活用して高精細でハイコントラストな4K動画を従来(H.264という圧縮技術)より40%近く小さなサイズに圧縮できるH.265(通称、High Efficiency Video Coding。略してHEVC)を標準ファイル形式として採用する(同様に静止画はJPEGの代わりにHigh Efficiency Image Format、HEIFを採用する)。

 動画も写真も、カメラで撮ったそのままの情報はかなり巨大になる。そこで例えば、背景など同じ色が続く部分を簡略化して記録することで容量を小さくする圧縮という技術を行う。

 複雑な数式に基づく圧縮を使えばファイルサイズは小さくなるが、計算に時間がかかるためにファイルの書き込みや読み込みで待たされることがあり、一昔前はH.264の動画圧縮もものすごく時間がかかった。しかし、コンピューターの性能が進化し続けていることで、今はもっと複雑で圧縮効率の高い技術が使えるようになった。特にGPUというグラフィックス処理専用のプロセッサーの性能が劇的に上がったので、それにあわせたフォーマットに切り替えて、高精細さを保ったまま、ディスク上の容量もクラウドへのバックアップの容量もできるだけ小さく抑えようというのが仕様変更の意図だ。

 基盤技術の3つめの変更は、そのGPUの扱いだ。Macは機種やモデルによってIntelやAMDなど異なるメーカーの異なるGPUを採用しているが、ソフトウェアを作る人がいちいちすべてのGPUに対応しなくて済むように昔はOpenGLという技術を活用していた。

 その後、そのOpenGLよりもさらにうまくGPUを活用して、複雑な2Dや3Dのグラフィックスを10倍速く表示できるMetalという技術を開発したが、macOS High Sierraでは、そのMetalをさらに10倍ほど速くしたMetal 2を採用。対応したソフトではケタ外れのグラフィックスパフォーマンスを発揮できるようになる。その恩恵を常に感じられるように、Macでのウィンドウ表示などもすべてMetal 2を使って行われるようにOSを再設計したという。

 大きなデータを高速に扱うことに長けたGPUは、実はグラフィックスの処理に加えてもう1つ得意なことがある。AIブームで注目を集めている機械学習(Machine Learning)、つまりコンピューターに色々なものを認識させる技術への応用だ。Appleは今後、Macの開発者がそうしたMachine Learningを活用しやすいようにML Kitという開発用素材を用意し、主要な機械学習法を簡単に利用できるようにしている。

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