Snapdragon 835を搭載したWindows 10デバイスの満足度は、過去のWindows RTデバイスに比べて高いというのが現時点での予測だ。これは、フル機能版のWindows 10が動作するという点と、ARMバイナリではない過去のx86アプリ資産もエミュレーションで動作するという2点にある。
さらにSnapdragon 835自体のパフォーマンスが高く、動画再生にはHEVC(H.265)を含むハードウェア再生支援機能が利用できる他、用意されるインタフェースも一線級のPCと遜色ないなど、もはやバイナリ互換問題を除けば、性能的にはPCに採用しても問題ない水準に達しているからだ(Intelが指摘する特許侵害の可能性はさておき)。
他方で、Windows RTデバイスと異なり、Snapdragon 835を搭載したPCの価格はそこまで安価でないことが予想される。スマートフォンでも同クラスのプロセッサを搭載した製品は、700〜1000ドルくらいの価格帯だ。Windows 10デバイスでは、より大画面のタッチディスプレイや大容量SSDを搭載するとなると、最も安価なラインで1000ドル前後がターゲットになるのではないか。
Intelのプロセッサを搭載した既存のWindows 10デバイスと比べた場合、Core i3採用のモデルよりは下だが、PentiumやCeleronを用いたエントリー向けモデルよりはかなり高価だ。そのためターゲット層としてはミドルレンジ以上、あるいは「モバイルに最適なPC」を比較的高めの価格帯でも購入したいというユーザーが挙げられる。
Microsoftは、Qualcommプロセッサの新しいWindows 10デバイスは全てLTEを搭載し、「Always Connected PCのコンセプトを体現する」と説明している。
これらは「eSIM」と呼ばれる組み込み式のSIMを内蔵し、適時オンライン契約でWindowsストアから料金プランを購入できるという。特に海外への出張や旅行が多いユーザーにとって、現地での通信手段の確保は毎回頭を悩ませる問題だが、eSIMはこれを「On-The-Go」方式で手軽に契約して利用できるメリットがある。
もちろん、AMDやIntelのプロセッサを搭載したPCでも、LTEの採用でAlways Connected PCの実現は可能だろう。ただ、QualcommプロセッサのWindows 10デバイスであれば、必ずLTEがセットになるので、ターゲットユーザーには製品選択における大きなポイントになる。
モバイル用デバイスに関しては、「サイズと重さ」や「バッテリー駆動時間」も重要だ。Snapdragonプロセッサでは、LTEも含めて通信に必要な機能がSoC(System on a Chip)に統合されており、部品点数が少ないというメリットがある。そのため、本体を軽量化しやすい他、デザインの自由度を高められるというアドバンテージも期待できる。
モバイルに特化ということで薄型化や軽量化(あるいは日本人が好きな超小型化)にデザインのリソースを振ってもいいし、そのぶんをバッテリーの増量に回して長時間駆動が可能なデバイスを目指してもいい。
また、Qualcommプロセッサが採用するbig.LITTLEコア(大型でパフォーマンスの高いCPUコア「big」と、小型で消費電力の低いCPUコア「LITTLE」を組み合わせる)の特性や、スタンバイ状態(Qualcommでは「Always-on」と表現)での高度な電力制御といった面もWindows 10デバイスに付加価値をもたらしそうだ。従来のx86ベースのPCと比較して、アイドル時の消費電力が抑えられ、より長時間駆動を実現できる可能性がある。
「モバイルでPCをとにかく活用したい」と考えるユーザーであれば、2017年後半以降に発売される見込みのWindows 10 on SnapdragonによるAlways Connected PCはチェックしておきたい。
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