そもそもなぜ最近、VR/AR/MRがさまざまな業界で話題に上がっているのかといえば、これらの新しいデバイスでしか表現できないことが確実にあるからだ。
現在、CPUで演算した結果の出力先というと、PCやスマートフォンの画面といった平面ディスプレイがほとんどだろう。もちろん、書類や写真、動画などもともと平面のものは問題ないが、現実では3次元で存在しているのに、それを2次元的に変換してからしか見せられないものも存在していた。
例えば、画面越しにビデオチャットしている人間は本来3次元で近づいたり触ったりできる存在であってほしいし、キャラクターや物体などのCGもマウスカーソルをドラッグして視点を切り替えるのではなく、自分で回り込んだり、手に持って眺めるほうが自然だ。インターネットのイベント生配信なら、カメラで切り出された一部だけ見るのではなく、“その空間”に行けるほうに価値を見いだす人も多いだろう。次元を落とすことで、近さや高さ、空間の広がりなどの感覚が抜け落ちてしまうのだ。
なんならOSも、マウスや指で画面の中にあるアイコンを叩いてファイルを開くのではなく、手でつかんでその辺の空間で開いておいて置いたり、ゴミ箱に投げ捨てたりといったほうが直感的かもしれない。
すでに日本でもB2Bでは、安全・業務トレーニングや営業ツールとしてVRの導入が当たり前になってきている。HoloLensでもまだ開発版にも関わらず、マンションの営業ツール、車のメンテナンス支援、室内の気流シミュレーション、文化財の新しい見せ方、建築物のプレゼンテーション、遠隔地の入学式といった具合に導入事例が相次いでいる。
エンターテインメントも9月の東京ゲームショウ 2017ではVR/ARコーナーに限らず、さまざまなブースで当たり前のようにVR HMDが使われていた。コミュニケーション分野でも、今回の発表会でMicrosoftが買収を明らかにした「AltspaceVR」をはじめ、さまざまなサービスが出始めている。
もともとVRの機器は数百万、数千万円といった具合に非常に高額で、企業や大学の研究室しか導入できなかった。それがスマートフォンの普及を受け、安価になったディスプレイパネルやセンサーを使うことで一気に値段が下がり、HMDだけで10万円以下になっている。
もちろんHMDのデバイス自体が出始めで、まだまだ機材の準備が煩雑だったり、一般の人にとっては価格が十分に安くない弱点はあるものの、パソコンやスマートフォンで使われているあらゆるジャンルのアプリで、3次元でアウトプットしたほうがいい体験になるものは置き換わっていくはずだ。
2008年にAppleがiPhone 3Gを日本で発売した際、約10年後にこれほどあらゆる業界でスマートフォンが使われるようになると考えていた人はほとんどいなかったはずだ。10月17日のFall Creators Updateと合わせて、これからぐいぐい伸びていきそうなMRに注目しておきたい。
(校正協力/HoloLab 中村薫)
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