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» 2017年11月22日 06時00分 公開

LinuxからWindowsに完全移行を決めたミュンヘンのその後鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

2000年代に脱Windowsを大胆に進めて話題となったドイツのミュンヘン市。業界の一大決断と呼ばれたオープンソースへの移行は、なぜ今になって覆されるのか。

 官公庁でLinuxをはじめとするオープンソース運動の旗手として知られていたドイツのミュンヘン市は、過去13年以上にわたって「LiMux」と呼ばれるUbuntuベースのクライアントOSと、OpenOffice.orgから派生した生産性アプリケーション「LibreOffice」を使い続けてきた。

 しかし、同市はこれらの利用をやめ、2020年末までに「Windows 10」および「Microsoft Office 2016」のシステムへと移行する計画を明らかにしたことで、IT業界からあらためて注目されている。その概要は以前にもお伝えしたが、その後の動きがあったので紹介したい。

Windows 10 オープンソース派だったミュンヘン市だが、2020年末までにWindows 10への完全移行を計画している

市のIT部門が移行に難色のワケ

 米TechRepublicによれば、ミュンヘン市の行政人事委員会(Administrative and Personnel Committee)は2017年11月8日に投票を行い、このWindows移行計画を支持することを決定した。

 実際には11月23日に行われる議会の承認を得る必要があるが、この決定を支持しているキリスト教社会同盟(CSU)とドイツ社会民主党(SPD)の連立政権が議会で多数派を占めていることもあり、委員会での決定はほぼそのまま通過するとみられる。

 そのため、同市内で稼働している3万台近いPCは2020年以降に全てWindows 10ベースのものへと順次置き換えられることになる。この辺りは計画が現実のものになるという点以外での新しい情報はないが、同誌を含む複数のメディアが報じる関係者の証言により、幾つか興味深い事実が見えてきた。

 以前のレポートでは、2014年に新市長になったディーター・ライター氏の主導で市とMicrosoftとの関係が強化され、政治的意図をもってWindowsの導入が行われた可能性を紹介したが、ミュンヘン市内部にもいまだこの決定に不満を抱く勢力が存在し、抗争の種として議題に上っているようだ。

 ドイツ緑の党のフロリアン・ロス氏はこの決定を「大きな過ち」と断言しており、11月23日の議会では徹底追求していく構えだという。同氏によれば、市のITはこの決定に拒否反応を示しており、政治的意図により移行を強制される状況にあるとしている。

 IT部門が拒否反応を示している理由は主に2つある。1つはLiMux開発やシステム維持に膨大な予算や人的リソースをつぎ込んだこと、2つ目はこれまで動作してきたLinux環境からWindowsへと移行するにあたり、動かなくなるアプリケーションや膨大な処理系をどのように改変していくかという作業上の負担だ。

 英The Registerによれば、SPD所属の評議員であるアンネ・ヒュブナー氏のコメントとして、Linux上で動作する800近いアプリケーションの半分が利用できなくなる見込みだという。

 また前述のロス氏によれば、LibreOfficeに関連する1万2000〜2万のマクロやアプリケーションが存在しており、Microsoft Office移行にあたってこれらの検証を含む作業が発生するという。「1万2000〜2万」という表現は随分数字に開きがあるが、これは「市でも現状をよく把握できていない」ことの証左でもある。つまり、「移行は決まったが、全体的な大規模調査はこれから」という状況なのだ。

 この調査費用や移行のための更新作業に加え、Windows 10ならびにMicrosoft Office導入にかかわる諸経費も存在する。具体的な数字は11月23日のタイミングで公表される予定だが、一説によれば、少なくとも1億ユーロ以上の関連費用がかかるとされており、かなりの大規模案件となることが見込まれる。

LibreOffice Microsoft Office互換でオープンソースの生産性アプリケーション「LibreOffice」。ミュンヘン市は長年、UbuntuベースのクライアントOS「LiMux」と、これを組み合わせて業務を行ってきた
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