達人レビュアーが選んだ2017年のイチオシPC(2/3 ページ)

» 2017年12月31日 10時00分 公開
[鈴木雅暢ITmedia]

小型かつ先進的に進化「ThinkPad X1 Carbon」

ThinkPad X1 Carbon 「ThinkPad X1 Carbon」(レノボ・ジャパン)

 2017年で25周年を迎えた「ThinkPad」。その記念として、限定モデルの「ThinkPad 25」が登場した。長い間ThinkPadの象徴であった7列キーボードと、旧型のTrackPointキャップを復活させたのが大きな特徴だ。

 筆者がこの業界に入ったのもThinkPadの影響が小さくない。こうしたオールドThinkPad、それに関わった人々をリスペクトする機会は今後も設けてほしいものだ。

 さて、2017年に発売されたThinkPadの中で、目玉と言えば「ThinkPad X1 Carbon」だろう。ディスプレイが狭狭額縁デザインとなってフットプリントが小さくなり、重量も軽くなった。さらにThunderbolt 3を2基装備。充電もこのThunderbolt 3を使うよう変更されている。

 以前のDC端子は省略されてしまったが、ThinkPad X1 Carbonのコンセプトを考えればこれでいいだろう。DC端子と充電対応のThunderbolt 3を両方用意している「ThinkPad T470s」もあり、互換性重視のユーザーもしっかりフォローしている。

スマートフォンメーカーならではの発想が新鮮「MateBook X」

MateBook X 「MateBook X」(ファーウェイ・ジャパン)

 PC市場への攻勢を強めるHuawei初のクラムシェルノートPC「MateBook X」。スマートフォンメーカーならではの発想が新鮮だ。

 液晶ディスプレイは狭額縁デザインを採用し、フットプリントは13型で最小クラス。エレガントなデザインや、電源ボタンに指紋センサーを実装することで、ワンタッチでセキュアなログインができるなど、使い勝手の良い作り込みはスマートフォンメーカーならではと言える。

 TDP(熱設計電力)が15Wの第7世代Core Uシリーズを採用しながらファンレス設計を採用しているのも珍しい。つまり、パフォーマンスを確保しつつ、ファンノイズのない静かな作業環境が得られるのだ。

 ファンレス設計だけに性能は冷却状態に左右され、フルパフォーマンスを常に発揮できるわけではないが、強制的に冷却すればそれなりに高いパフォーマンスで使えるし、日常操作やオフィスなどの処理でもファンレス向けにTDPを低く抑えたプロセッサよりキビキビと動く感はある。

 そもそも、このMateBook Xは「CPUのフルパフォーマンスを発揮する」ということにあまりこだわってないように思える。ファンレスに伴い、PCM(Phase Control Material、相変化蓄熱材)ヒートシンクの導入など放熱対策も行っているが、それもCPU性能を引き出すためというよりは、本体が高温になりすぎて使い勝手を損ねることを防ぐという、ユーザー体験を優先させたアプローチだ。

 本来、CPUはあくまで製品を構成する部品でしかない。PC以外の電子機器においてはそれが普通のはずだが、PCの世界ではなかなかそこまで割り切れない。無意識のうちに、CPU至上主義、スペック至上主義になりがちだ。

 今さらながら「Intel Inside」を全面に押し出してきたIntelの戦略的な偉大さ、影響力の大きさを思い知らされる。だからこそ、IntelプロセッサはTDP 4〜5Wクラスがファンなし、TDP 15Wクラスならばファン搭載というように、ほぼIntelの意図した通りの製品設計がほとんどだ。

 MateBook Xは、そうした見えない呪縛をいともあっさりと突破している。これができたのは、PC業界に染まっていない、スマートフォンから入ったメーカーだからではないだろうか。

 スマートフォンでも性能は製品選びの重要な要素の1つであることは間違いないが、あくまでも要素の1つであり、部品以上の存在ではない。自分のスマートフォンのCPU(SoC)が何であるか、すぐに答えられるユーザーの割合は多くないだろう。

 もちろん、どちらがいいのかは、何とも言えない。PCに慣れ親しんだユーザーにとっては、搭載CPUやスペックで大体の性能が推測できた方が都合がいいし、ビジネス向け、クリエイター向け、ゲーム向けといったPCではフルパフォーマンスが出ないと困る。

 しかし、カジュアル路線のコンシューマー機ならば、こういうベストエフォート的なアプローチ、自由なデザインもあっていいように思う。

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