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» 2018年04月10日 07時00分 公開

製造業の転換点になるか――Appleが再生可能エネルギーで自社電力を100%調達 (2/2)

[林信行,ITmedia]
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自社だけでなくパートナー企業も最先端化

 Appleによる100%再生可能エネルギーへの移行には「サプライヤー企業の手本になろう」という思いもあったというが、同社は、ついにサプライヤーでも新規9社を含む合計23社が100%再生可能エネルギーで稼働する約束をしてくれたことを発表した。

 Appleとサプライヤーによるクリーンエネルギープロジェクトを合わせると、2017年には150万t以上の温室ガスを防いだことになる(30万台以上のクルマを路上から取り除くのと同じ効果だ)。

 Appleは現在、同社の認定サプライヤー向けに、それぞれの地域で商業的に実現可能な再生可能エネルギーソリューションを探す手伝いをする「クリーンエネルギーポータル」というオンラインプラットフォームを提供しており、このプログラムには既に85社以上のサプライヤーが登録をしているという。

名古屋郊外にあるAppleの部品サプライヤー、イビデン。水上太陽光発電システムを活用して製造に使う電力の100%をまかなう

 トランプ政権の樹立で、アメリカ合衆国は少なくとも政策上では先進国の中でも最悪レベルの環境後進国となったかもしれないが、今、実際に環境問題で鍵を握るのはAppleのような巨大メーカーであって、製造業が誰から頼まれるまでもなく社会への責任として自発的に環境問題に取り組んでくれるのであれば、それが実は一番効果的なのかもしれない、と思わせてくれる発表だった。

 もちろん、日本でも多くの企業が政府の築いた環境基準に適合したモノづくりをしているとは思う。しかし、そうした基準すらも飛び越えて、先回りで新しい環境基準を作るような動きは出てこないものだろうか。

 今回の発表は再生可能エネルギーに関してが中心だったが、Appleではこれに加えて水や森林、レアメタルなどを含む資源の確保や積極的な再利用にも取り組んでいる。iPhoneを解体するロボット、Liamなどはその最たる例だろう(参考:2017年のAppleと、これからのApple――林信行が2017年を総括)。

 Appleが、ここまでのことをやってしまった今、もはや「及び腰」での環境への取り組みはしていられない。

 確かに日本でも自動車や家電の一部製造業は、多様な電力調達に乗り出しているところがある。ただ、それらはどちらかというと電気代高騰に対処する上でのコスト削減という視点からのものが多く、再生可能エネルギーを企業の主軸にする、というのとはまだほど遠いのが現状だと筆者は認識している(違うなら正してほしい)。

 遠からず、すべての企業が本気で取り組まなければならなくなる環境負荷の低減。世界の製造業は、今回の発表でAppleから最後通告を突きつけられた形になったのかもしれない。

100%再生エネルギー化をサポートするアップルのサプライヤー
Arkema 高性能バイオベースポリマーのデザイナー。フランス、米国そして中国の同社工場でApple向けの製造を行う。
DSM Engineering Plastics コネクターやケーブルで使われるポリマーやコンパウンドを製造。オランダ、台湾、中国が拠点。
ECCO Leather。 Apple向けの生産で100%クリーンエネルギー化を約束した初めてのソフトグッズサプライヤー。ECCOがApple向けに生産するレザーは欧州産で、なめしとカッティングはオランダと中国の工場で行われている。
Finisar 光通信用部品および垂直共振器面発光レーザー(VCSELs)を製造。同社の技術は、Face ID、ポートレートモードセルフィー、アニ文字など、Appleの最も人気の高い新機能を支えている。
Luxshare-ICT Apple製品アクセサリーのサプライヤー。Apple向け生産施設はそのほとんどが中国東部にある。
Pegatron 中国上海と崑山の2つの工場でiPhoneを含む複数の製品の組み立てを行う。
Quadrant 数々のAppleの製品に使われている磁石および磁気部品のサプライヤー。
Quanta Computer Apple向けの生産で100%再生可能エネルギー化を約束した最初のMacサプライヤーの1つ。
太陽インキ製造株式会社 日本でプリント基板用のソルダーマスクを製造。

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