「何よりも大事なことは情熱」――ジョブズ氏の師が語る“スティーブの素顔”「ジョブズ・ウェイ」著者に聞く(1/6 ページ)

» 2012年04月18日 12時15分 公開
[林信行,ITmedia]
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レストランの待合室が冒険の始まり

―― エリオットさんはスティーブ・ジョブズ氏と一緒にアップルで働いていた、ということですが。

「ジョブズ・ウェイ」著者のジェイ・エリオット氏。アップル時代は上級副社長の任につき、ジョブズ氏の補佐役として活躍した

エリオット スティーブとは1980年に出会い、その後、6年間アップルにいた。アップルを辞めた後、ネクストやピクサーの時代にも付き合いがあった。

 私がアップルを辞めたのはスティーブが辞めた1年後だ。その後はいくつかの事業を始めたが、スティーブとの交流は蘇ったり、途絶えたりを繰り返していた。彼の基調講演にも何度か出向いたことがあるよ。

 ただ、アップルにいた6年間は、ほぼ毎日、1日24時間、週に7日、彼とともにいたようなものだね。

―― 彼とはどのようにして出会ったんですか?

エリオット 私は当時、ロスガトスに住んでいて、スティーブもそこに住んでいた。私は近くにあるメキシコ料理のレストランにいて、ラウンジエリアで妻を待っていた。妻はちょっと遅れていたんだ。

 ラウンジで私は少し落ち込んでいた。IBMを辞めてインテルに行ったものの、アンディー・グローブとは気が合わず、インテルも好きになれなかった。半導体ビジネスは私にあわなかったんだね。

 このとき、イーグル・コンピュータという会社に出会っていた。この会社のことを聞いたことがあるか分からないけど、会社が株式を公開したその日、創業者が友人とフェラーリを試乗して道を飛ばしていたら、コーナーで曲がり損ね、車が反転して死んでしまったんだ。

聞き手の林信行氏

 私は彼から一緒に働かないかと持ちかけられていた。彼は非常にいい人で、私はIBM時代から彼を知っていた。でもこの話が流れてインテルに居残ったことで、落ち込んでいた。

 そんなとき、メキシコレストランで私の横に座っていた、BIRKENSTOCKのサンダルにジーンズとTシャツでひげをはやした若者が、私に話しかけてきた。私は新聞でIBMか何かの記事を読んでいたと思う。すると彼が「コンピューターのことを分かっているのか」といった調子で話しかけてきたんだ。

 私たちは会話を楽しみ、とてもオープンにいろいろなことを話し合った。世の中はどうなっていくのか、これから何が起きるのか、これからコンピューターが大きくなるであるとか、コンピューターが人々の机の上に置かれるようになるとか――そんな感じで。私は彼のことを知らなかったので、非常に感心していた。そして、彼はこう言ったんだ。「あなたのことが気に入った。ぼくのところで働かないか?」。

 私は「あなたが誰だか知らないけれど、私の給料はそれなりなので、出せないと思うよ」と返したのだけど、彼は「いや、雇えるよ」と言い返してきた(笑)。

 「ぼくはスティーブ・ジョブズで、アップルコンピューターを作ったんだ。電話番号をくれたら、電話をするよ」と。私は電話番号を渡して、彼と働けることを楽しみに待っていた。これがその後、いったい何が始まるのかまったく想像もつかなかった大きな冒険の始まりだった。

 アップルでの初日は土曜日で、スティーブは私に「ちょっとドライブに出かけようぜ」と誘ってきた。私がOKと答えると、彼は私を乗せてゼロックス社パロアルト研究所(PARC)に向かった。彼は「見せたいものがあるんだ」と言って研究所内に私を連れて行ってくれたんだよ。そこにはマウスや、コンピューターが置かれていた。

 帰りの車の中で、私は「これこそが革命だ」と確信していた。ゼロックスPARCから(アップル本社のある)クパチーノまでは車で20分ほどの距離だが、スティーブもその帰り道の車の中、静かに物思いにふけっていた。その瞬間、私は彼がどこに向かおうとしているのかを悟った。こうしたことすべてがどこに向かおうとしているのか、彼には分かっているようだった。

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