第8世代Coreの「MacBook Pro」選びで知っておきたいこと本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

» 2018年07月24日 06時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

製品選びのシナリオを考えてみる

 開発ツールや動画編集、写真現像、あるいは3Dグラフィックス処理などが必要な場合は、メインのIntel製プロセッサだけでなく、外部GPUが搭載された15インチモデルがベターであることは言うまでもない。

 DDR4をメインメモリとして採用することで高速化しつつ、従来は16GBだった最大搭載メモリが32GBにまで増えているのも15インチモデルのみだ。パフォーマンスが必要ならば、「15インチモデルのCore i9モデル一択」という読者もいるに違いない。

MacBook Pro 15インチモデルは32GBまでメモリを搭載可能

 しかし、別の考え方もある。例えば筆者が今回のMacBook Pro購入計画を立てるならば、次のように考えるだろう。

 Thunderbolt 3を前提にシステム構成を見直したのだ、と現在のMacBook Proを捉えるならば、大幅にCPU性能が向上した13インチモデルを核とする。筆者の仕事だけでいえば、これだけでも十分に用が足りるばかりか、故障さえなければ恐らく4〜5年はリプレース不要だが、もっとパフォーマンスが欲しいという場合でも柔軟に対応できる。

 机の上で仕事する際の環境として、eGPUユニットを導入し、4Kあるいは5Kの高精細ディスプレイをeGPU側に接続。普段はデスクトップ用のキーボードとトラックパッドを用い、クローズリッドモード(クラムシェル筐体を閉じたままコンピュータモジュールとしてMacBookを動かすモード)でMacBook Proを動かせば、消耗品であるキーボードの長寿命化にもつながる。

 もちろん、全てを一度に導入する必要はなく、13インチモデルのMacBook Proをスタート地点として、必要に応じてシステム構成を追加したり、構成要素を交換したりするなどしていけばいい。投資額に関しては要検討だが、15インチモデルで最強を目指すよりも、最終的に高いパフォーマンスと優れた、あるいは用途シーンに適合した使用環境を得られる構成もあるはずだ。

 eGPUによるパフォーマンスの向上は、使用するアプリケーションによっても効果が異なるため、利用シーンによってはやはり15インチモデルが外せないというケースもあるだろう。自分自身で導入シナリオを考えてみてはいかがだろうか。

 例えば2016年10月発売のMacBook Proには、既にThunderbolt 3が採用されている。内蔵プロセッサや搭載メモリ量に不満がないのであれば、eGPUと液晶ディスプレイを追加するだけで目的を達成できる可能性もあるだろう。

 個人的には可搬性の高さと4コアCPUの両立という点で、今世代では13インチモデルの性能バランスはとてもいいと思うが、それは「筆者の物語」にすぎない。

MacBook Pro 筆者は13インチモデル(左)の性能バランスに注目している

 なお、Touch Bar非搭載モデルに関しては、引き続きKaby Lakeが採用されていることに注意してほしい。

キーボードはどう変わったのか?

 新しいMacBook Proを評価する上で、避けて通ることができないのがキーボードだろう。現行世代になって、最初のモデルが第1世代バタフライ構造キーボード、2017年モデルが第2世代となり、今回、第3世代となった。

MacBook Pro 第3世代となったバタフライ構造キーボード

 最も変化しているのはフィーリングである。あくまでフィーリングであって、スペック値ではない。キーが動く距離(キートラベル)は変わりなく、バタフライ構造の特徴であるキートップの安定性(揺れの少なさ)も、もちろん引き継いでいる。

 しかし、タイプしてみると、明らかに柔らかな感触と打音の小ささを認識できる。キーが底を打つ直前に軽いフィードバックを感じ、そこから柔らかに底に着地するようなイメージと言えば分かるだろうか。

 筆者は第1世代のころからバタフライ構造のキータッチが好みだった。慣れるとキー入力時の負担、疲れが少なく感じられたからだ。一方で、その鋭いキーの打音は耳障りで、底付き時の硬さがストレス。それでもトータルでは良い印象を持っていたが、今回のアップデートで音や底付き時のフィーリングも含めて優れたキーボードになったと思う。

MacBook Pro 非常に薄型の作りなど、見た目は変わらないが、タイプしてみると違いに気付く

 信頼性についてはどうだろうか。実はこれは筆者が最も注目していた部分だ。なぜなら、何度かトラブルに見舞われたことがあったためである。

 バタフライ構造キーボードは、超薄型のキーとギリギリの浅いキーストロークによって、確実な入力を確認できるクリック感と、薄型キーボードによる軽快な入力を両立させる新しい試みだった。しかし、極めて精緻な作りのために、いったん異物が混入するとキーの動きが阻害され、スイッチやメカそのものの信頼性が高くとも、キーが正常に機能しなくなるのではないか、と思われるトラブルが指摘されていたからだ。

 この問題はエアダスターなどでゴミを動かすことで解決することが分かっているが、実際にはゴミを動かすのが難しい場合もある。Appleは、以下の問題が発生することを公式に認め、6月22日から該当キーボードを搭載する製品のキーボードを無償修理するプログラムを開始している。

  • 文字が勝手に反復入力される
  • 文字が表示されない
  • 押したキーがスムーズに跳ね返ってこない、または、キーを押したときの反応が一定しない

 また、上記にもあるように該当する機種のキーボードトラブルで、本件に関連した原因による交換をしている場合、既に支払っている修理代が返金されるケースもある(問い合わせはこちらから)。

 では、第3世代でこれらの問題が起きなくなるのかというと、実はその部分に関してAppleはステートメントを出していない。では何もしていないのかというと、何らかの対策はしているのだと思う。

 第3世代バタフライ構造キーボードに関しては、まだ出荷直後のため保証延長措置が採られるかどうかは分からない(常識的に考えれば、同様の問題があれば以前と同じ措置が採られるだろう)。

 だが、例えば第1世代と第2世代の間でも、異物混入を防ごうとしているのではないか、と思われる改良が加えられていた。第3世代バタフライ構造キーボードについてはキーを外しての確認などは行っていないが、無償修理期間の延長を発表した後のタイミングで、何の対策もせずにキーボードを刷新するとは考えにくい。

 なお、米iFixitは同機の分解レポートを公開しており、それによるとキーボードのバタフライ構造部分が薄いシリコンの膜に包まれている。これが打音や異物混入の対策と予想されるが、実際に異物が混入しないかどうかは不明だ。

MacBook Pro 米iFixitの分解レポートより。キートップの下には、薄いシリコンの膜が装着されており、これが静音や異物混入に配慮したものと思われる

 こればかりは発売後の動向を見る他ないと思っているが、この世代以降、問題は収束していくのではないだろうか。

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