第8世代Coreの「MacBook Pro」選びで知っておきたいこと本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)

» 2018年07月24日 06時00分 公開
[本田雅一ITmedia]
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ディスプレイが「True Tone」対応に

 近年、Appleはディスプレイデバイスの高性能化に合わせ、MacBook Proだけではなく「iPhone」や「iPad」なども含め、高輝度、広色域表示への対応を進めてきた。DCI(Digital Cinema Initiatives)が策定したDCI-P3の色域定義をパソコン用ディスプレイに応用したDisplay-P3に対応し、iPhoneのカメラもDisplay-P3で撮影されるなど、広色域対応が着々と進んでいる。

 MacBook Proも2016年10月発売モデルから広色域対応になっており、本機もDisplay-P3対応、500nitsの最大輝度という性能を持つ他、iPhone・iPadと同様のホワイトバランス調整が行われている。そうした意味では、Apple製品全体にわたる「ディスプレイ品質の均一化」が進められていたともいえるのだが、唯一、「True Tone」だけはMacでは導入されていなかった。

 True Toneとは照明環境に合わせたホワイトバランスの微調整機能で、2016年3月に発売された「iPad Pro」シリーズとその後継機種、そしてiPhone 8/8 Plus/Xに搭載されている。

 紙のような反射原稿の白は照明環境によって変化するが、コンピュータディスプレイの色温度は通常、固定されたまま(一般的にはD65光源に合わせて作られる)だ。しかし、色温度の低い環境では周囲とのギャップが生じ、青白く光っているように感じてしまう。そこでその場の照明の色温度を測定し、自然に感じされるホワイトバランスに保つよう調整する機能がTrue Toneだ。

 当初、iPhoneへの導入が始まった時、本当に自然な表示ができるのだろうか、という疑問があった。同様の機能はかつて、日立やパイオニアがテレビの自動画質調整を行うために導入していたこともあったが、安定した効果を引き出すのは難しいという印象があったからだ。

 しかし、対応製品を長らく使ってきたが、不自然と思われる振る舞いを感じたことはない。実際、今回のMacBook Proのディスプレイも、iPhone Xとほぼ同等の色温度で照明環境に追従する。これならばユーザーの利用体験を改善できそうという印象を持った。

MacBook Pro 「True Tone」に対応したRetinaディスプレイ。15インチモデルは、15.4型で12880×1800ピクセル(220ppi)表示だ

 しかも内蔵ディスプレイだけでなく、Touch Barの表示色、そして「Apple Thunderbolt Display」「LG UltraFine 5K Display」「LG UltraFine 4K Display」と限られた機種ではあるものの、外部ディスプレイの色温度も自動調整する。

 今後、他の機種への展開、あるいはデスクトップコンピュータでの導入はあるのか、といった疑問も出てくるが、これでiPhone、iPad、Macと、一通りの製品ジャンルで統一されたディスプレイ体験が提供されることになる。

興味深い「Apple T2」の搭載

 一方、目に見えての性能向上や機能向上ではないものの、今後の進化の方向として注目しておきたいのが「Apple T2」チップの搭載だ。「Apple T1」チップはMacBook ProのTouch Bar制御のために開発されたコンパニオンチップ(一種のワンチップマイコン)だが、T2チップは2017年末に発売されたiMac Proで初搭載されたチップだ。

MacBook Pro AppleがMac用に開発したコンパニオンチップ「Apple T2」

 T2は、T1よりも多くの役割がこなせるよう機能、性能とも高められている。その中にはストレージの暗号化や起動シーケンスの制御、Macにおける「Hey Siri」(音声アシスタントの音声起動)の検出などがそれだが、なぜそうしたことができるか、を掘り下げると興味深い。

 例えば、ストレージの暗号化をなぜ行えるかと言えば、HDDやSSDのコントローラー機能をT2が内蔵しているためだ。iMac Proや新しいMacBook ProはT2を介して記憶装置にアクセスしている。

 Hey Siriが使えるのも、Macのマイクから入る音声インタフェースがT2にあるからで、起動シーケンスの安全性が高まっているのも、T2がIntelプロセッサを中心にしたコンピュータシステムとは独立して、起動用の記憶装置との間に介在、監視をするからだ。他にもT2にはシステムの状態を監視し、適切な温度管理のための冷却制御を行う役割もある。

 このように考えると、T2がT3、T4となっていく中で、さまざまな機能が提供できるのではないか、という可能性を感じる。これまでの「パソコン」は、良くも悪くも巨大なパフォーマンスを持つCPUをぶん回すシステムを、より高速に、大容量にという方向で進化してきたが、本質的なシステムの構造は昔と大きくは変わっていない。

 Appleが行っているのは、パソコンをパソコンとして成立させるためのさまざまな周辺チップを統合し、パソコンシステムとは独立した制御コンピュータを別に用意することで、安全性や機動性を高めようという試みだ。

 伝統的なパソコンシステムの持つパフォーマンスやこれまで蓄積されてきたソフトウェア資産を生かしつつ、ハードウェア全体を別のコンピュータでラッピングし、ユーザーからは見えない形で制御するというアイデアが、今後どう発展していくのか。

 T2の先の計画はAppleのみぞ知るところだが、今後、同様のアイデアはWindows PCにも盛り込まれていくかもしれないし、あるいはIntelやAMDなどがチップセットの一部として取り入れていく可能性もあるだろう。

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