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» 2018年08月23日 08時00分 公開

引きこもりを加速する企業 クラスターが狙う「VR時代の空間」ビジネスとは?西田宗千佳の「世界を変えるVRビジネス」(3/3 ページ)

[西田宗千佳,ITmedia]
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現実のコンサートやカンファレンスを「マネしない」世界へ

 クラスターは、コンサートホールやカンファレンスを模したサービスになっている。この点は、海外の同種のサービス、例えば、Oculusの「Oculus Venus」なども同様だ。

 だが、加藤氏は「これは今だけ」と話す。

 「輝夜月ちゃんのコンサートでも、『ライブ会場の汗臭さや音圧の感じなどが再現できるのか』といえば、当然できません。でも、VRで現実のライブに似せるのは、スマホにおけるスキュモーフィズム(現実にあるものを模したUI)と同じですよね。分かりやすさ重視で、まずはユーザーに受け入れてもらおうという戦略です」

 「そもそも、VRは『別空間』なんです。Virtual=実質ですから(筆者注:“仮想”と訳されることが多いが、英語の本来の意味は“実質的な”に近い)、全く新しい体験になっていい。音楽ライブは、もはや『音楽ライブ』とはいえない、電子ドラッグとでもいうようなものになっていいはず。要は、価値を提供する人の想像力、イマジネーションをどこまでぶつけられるかということです」

 「カンファレンスも同じです。今のカンファレンスは、会場の物理的制約からああいう形になっていますが、もっと参加した人たちのアクションが飛び交うような、インタラクション性の高いものでいいと思っています」

 「また、コンサートでは、100人それぞれに『最適化した体験』を届けることもできるはずです。今は席で体験が変わりますが、誰もが『良い席』の体験もできる。最終的には、場所ではなく、その体験を生成するノウハウを売らないといけません。そうすれば、コピー不能な価値になりますからね」(加藤氏)

加藤社長は、VRでの「コンサート」「カンファレンス」の可能性について、身振りを加えながら熱っぽく語る

 加藤氏は「今はVirtuality(実質性)の時代」という。情報革命といわれるが、情報がまとまり、適切に提供されることによって「本物と同じではないが、実質的にこれでもいい」という時代だ。19世紀以降、産業化によって人とモノは「動く」ことでビジネスが成立してきた。それは今も続いているが、さまざまなものが「実質化」することで、動く必要が減っていく。VRとともに多くの要素が「演算で生成される」ようになると、無駄は減らせる。

 「だから、引きこもりは合理的なんですよ」と加藤氏は笑う。だが、これから狙うところは違う。「でも、最適化は僕たちの目指すところではないです。なぜなら、『無駄とぜいたく』は同義だから。無駄も産業になります。体験って、そういうことですよね」

 そこで、現実を模したものから全然違う「VRの中でしか体験できないハコ」に変わっていくこと、そのノウハウを提供する会社になっていくことが、クラスターの目標だ。「だから、『引きこもりを加速する』は、キャッチーであるがゆえに社外向けスローガンではあるのですが、会社のミッションは別。『Accelerate the Human Creativity』、人間のクリエイティビティを加速することが、私たちの真のミッションなんです」(加藤氏)

 最終着地点が「想像できないようなライブ」ならば、確かにそのためには、クリエイティビティは「加速」されなければ実現できない。

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