話は変わるが、先日同業者でライターの笠原一輝氏がソーシャルネットワークで触れていて少し話題となったのが「Office 2019(Office 365)のセットアップでOneNoteがインストールできない」というトピックだった。
正確には「最新版のOfficeインストールでOneNoteのデスクトップ版が入らない」というものだが、最新バージョンにあたるOffice 2019にはデスクトップ版に相当する「OneNote 2019」が含まれておらず、代わりにUWP(Universal Windows Platform)版である「OneNote for Windows 10」がインストールされる仕組みになっている。
Office 2019は、元々Windows 10以降のOSがターゲットとなっているため動作的には問題ないのだが、UWP版は以前のデスクトップ版に含まれていた機能が全てあったわけではなく、同氏はメモとして残していた録音済みの音声データを再生できなかったことを問題点として指摘していた。
この問題は、Office 2019が提供され始めた今秋からしばしば報告されるようになり、「ユーザーのクレームでサポートがたびたび紛糾している様子を報じている媒体」もある。
対策としては、旧バージョンのOneNote 2016も同一OS内に共存できるため、新旧バージョンを同時にインストールすることで解決は可能だ。ただし、Microsoftとしては「デスクトップ版OneNoteには新機能は追加しないのでUWPを使うように」という意図があり移行を勧めているが、「UWP版はマウス操作に最適化されておらず不便」というユーザーの意見と真っ向から対立していたりもする。
実際のところ、MicrosoftがUWPを推しているのか、あるいはデスクトップアプリケーションを推しているのかよく分からない部分は多い。最近の例でいえば「Skype」がそれで、旧バージョンにあたる「Skype 7」の利用を2018年9月時点で停止し、以後は「Skype 8」を導入するようMicrosoftでは説明していた。
興味深いのは、このSkype 8はデスクトップアプリケーションであり、Windows 10ユーザーであればデフォルトでUWP版Skypeが導入されているため、普通に考えれば「UWPからデスクトップに移行しろ」と解釈することもできる。
ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏によれば、Microsoft側からの回答として「Windows 10ユーザーはUWPを使い続けてもいいし、Skype 8を手動でダウンロードして導入してもいい」というものだった。
つまり、新旧のWindows OSを問わずSkype 7をユーザーから切り離すのが目的で、移行先はUWPでもデスクトップ版でもいいというスタンスのようだ。とはいえ、Skype 7からSkype 8の移行に際しては全ての機能がサポートされる訳ではなく、特にUI面ではチャットウィンドウが統合されるという弊害もあり、一部で不評だったようだ。
もう1つはチャットサービスの「Microsoft Teams」で、2018年秋に開催されたIgniteカンファレンスで「無料版」の提供がアナウンスされている。クライアントアプリケーションとしてはデスクトップ版(Windows・Mac)とモバイルアプリ(Android・iOS)が用意されているが、Microsoft Store経由のストアアプリしか導入できないWindows 10のS modeでは、Webブラウザ向けのインタフェースしか用意されていない。
当初はPWA(Progressive Web Apps)を使ったUWPアプリがプレビューとして提供されていたのだが、こちらはなぜか11月いっぱいで提供を終了している。なお、Surface Hub向けにはUWP版Teamsが提供されていたりする。
アップデートなどが容易でセキュリティも高いUWPを推しているのかと思えば、一方で新しいデスクトップ版を用意してそちらをインストールさせてきたり、あるいはUWPの提供そのものを中止したりする。
過去にもあった話ではあるが、バージョン移行を強制して旧ユーザーを一方的に切り捨てる話も散見される。後者は仕方ない面もあるが、こと「UWP」に関してはMicrosoft内でも対応がちぐはぐな印象が強く、統一意思的なものはないのではないかと考えている。筆者としては「もうMicrosoftはUWPを絶対的なものとしては扱わなくなっている」と解釈している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.