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» 2019年09月20日 12時00分 公開

特集・日本を変えるテレワーク:新島でヨットに暮らして超小型PCでテレワークをした話 (1/2)

話題のテレワーク/リモートワークについて、超小型PCを使った一風変わった体験をお届けする。そこから見えてきたものとは何だろうか。

[長浜和也,ITmedia]

 先日、ITmedia NEWSで掲載した伊豆諸島通信災害の記事(こちらこちら)では、新島に滞在して取材を実施した。この取材では、新島村役場や新島村商工会など公的な機関への取材に加えて、地元住民の証言を広く得るべく、滞在期間はほぼ1週間を要するだろうと考えていた。

仕事場も渡航手段も自前で用意

 となると、経費として新島に向かうための交通費や宿泊費を工面する必要がある。1週間ともなるとかなりの費用がかかってしまうが、筆者には秘策がある。そう、「自分の船で島に渡り、自分の船に泊まる」という手だ。

「ちょっとあんた、“かたぎ”の仕事してはるんですか?」

 自分で船を持っているというと、多くの場合、このような反応が返ってきたりする。しかし、それは大きな誤解だ。自分の船を持つというのは「国産コンパクトカーを購入して維持する」のとほぼ同じコストだったりする。そのあたりの事情については、こちらの記事が参考になる。

 というわけで、自分の船で新島に渡り、そのまま自分の船に寝泊りをしながら約1週間にわたって新島で取材した。梅雨明け直前の一年で最も蒸し暑い時期に海の上で過ごしたわけで、それだけでも、結構語れるお話が山ほどあるが、ここでは「ほぼアウトドアの環境で、長期間に渡って仕事を継続するにはどうすればいいか」という工夫とコツをまとめた。

テレワーク 新島 新島の北部にある若狹漁港に停泊したヨット「阿武隈」が1週間にわたる取材の拠点となった

テレワークに特別なことは何もない

 とはいえ、その技術的課題は街中で行う「テレワーク」とそれほど違いはない。高速なネットワーク回線とノートPCがあれば、街中だろうと都会から遠く離れた風光明媚(めいび)な離島だろうと、海沿い山中のアウトドアだろうと、今や特別な工夫なくともテレワークは可能だ。

 確かに、場所によっては「高速なネットワーク回線」の確保に苦労するかもしれない。実際、新島は2019年4月末から5月始めにかけて海底光ケーブルに障害が発生し、高速ネットワーク回線が使えなくなった。さらに言えば2018年6月まで低速なADSLしかなく、実質的に高速なインターネット接続サービスの利用はままならない状態だった。

 幸いにして、今回取材拠点として船を係留した新島北部にある若郷漁港は、auの4G LTEエリアに入っていたため、インターネット接続サービスを普段と同じような感覚で使用できた。メールやWebページの閲覧、クラウド上のファイルに対するアクセスなど、インターネットを介するサービスの使用感は、首都圏における日常の作業と何ら変りはなかった。

 また、新島とその隣にある式根島(自治体の単位で言うところの新島村)には、主要なスポットに村が用意した無線LANの無料アクセスポイント「NIIJIMA SHIKINEJIMA Free Wi-Fi」があって、来島者も自由に使うことができる。さらに、民宿やカフェなど独自に無線LANアクセスポイントを用意して無料で使わせてくれるところも多い。そういう意味で、新島のネットワーク事情は(海底光ケーブルが健在な限りは)首都圏とほぼ同等の環境が整っている。

テレワーク 新島 生活の場でもあり、仕事場でもあるキャビン(ヨットの内部)。取材4日目で生活感がそこここに出てきた

発電量が少ないヨットだからこその超小型PC

 一方、今回の取材滞在では電源確保で苦労している。これは、電源供給に制約が多い「ヨット」に滞在したことが大きく影響している。通常、自動車などではエンジンを動かして車載バッテリーに充電できるため、DC12VからAC100Vを出力できる昇圧変換器を用いてPCなどを充電可能だ。自動車のエンジンに組み込んでいるオルタネーター(発電機)は、大電力が発生可能なので供給電力は十分賄うことができる。EV車ならそれ自体が巨大なモバイルバッテリーのようなものだ。

 対してヨットの場合、搭載しているエンジンの回転数は自動車と比べて低く、オルタネーターの発電量も小さい(一般的な軽自動車の場合は50Ah、筆者の船が装備しているオルタネーターは35Ah)。そして、搭載しているバッテリーの容量もオルタネーターにあわせて12V 35Ahと小さくしている(一般に、オルタネーターの発電量に合わせたバッテリー容量とするのが運用的に望ましい)。

 このバッテリーを2基搭載して、1基は機関始動用のセルモーター専用とし、もう1基を航海灯(夜間に船の針路や大きさ、種類を他船に示すために点灯する船外照明)や室内灯、そして、無線受信機やPC、スマートフォンの充電用として使用している。

テレワーク 新島 ヨットに搭載している「1GM 10」エンジン。右上に見えるベルトでつながった部品がオルタネーターだ

 このように、わずか12V 35Ahバッテリー1基で多種多彩な機器に電力を供給することになるが、まずは法令で定めている航海灯や生活に必要な室内灯への供給が優先されるため、デジタルデバイスへの充電は必要最小限となってしまう。こうなると、大容量のバッテリーを搭載したデバイスへの充電は困難だ(例え機関を回してオルタネーターから充電できるとしても、そのオルタネーターの発生電気量も少ないので)。

 筆者はキー入力を優先して、レノボ・ジャパンのノートPC「ThinkPad X1 Carbon」を常用しているが、このような状況ではいったんバッテリーがなくなってしまうと再充電して使い続けるのが難しい。ある程度キー入力がストレスなくできて、かつ、バッテリー効率の高いPCはないのだろうか。

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