ウェアラブルの主役に躍り出たBluetoothイヤフォン【2019年振り返り】ITはみ出しコラム

» 2019年12月15日 06時00分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 米国では感謝祭を過ぎるといわゆるホリデーシーズンになり、新製品の発表などはほぼなくなります。そんなわけで、この「ITはみ出しコラム」では年末までの残り3回で、2019年を振り返ろうと思います。

 今回のテーマは「ウェアラブル端末としてのBluetoothイヤフォン」です。電車の中でも、Bluetoothの無線イヤフォンをしている人をずいぶん見かけるようになりました。

 ウェアラブルといえば、少し前までは「Mi Band」のような健康管理のためのアクティブトラッカーや「Apple Watch」のようなスマートウォッチを思い浮かべたものですが、最近はここにイヤフォンやヘッドフォンが含まれるようになっています。

AirPods Pro 街でBluetoothのワイヤレスイヤフォンをしている人をよく見かけるようになりました(写真はAppleの「AirPods Pro」)

 イヤフォンやヘッドフォンといえば、昔はウォークマンやMDプレーヤー、iPod、そしてスマートフォンの音楽を聴くためのシンプルな付属品でした。もちろん業務用やマニア向けの高級品もありましたが、数千円の製品でも3.5mmのオーディオジャックにつなぐだけで、そこそこいい音で音楽を楽しめたものです。

TPS-L2 40周年を迎えたウォークマン。ソニーが1号機の「TPS-L2」を発売したのは1979年のこと

 「iPhoneから3.5mmのオーディオジャックがなくなるのは困る」と阿鼻(あび)叫喚だったのはほんの約4年前のこと。それと同時期にBluetoothイヤフォンに勢いがつき出しました。ソニーの「Xperia Ear」やAppleの「AirPods」など、音声アシスタントを搭載するBluetoothイヤフォンが登場したのは2016年のことです。

Xperia Ear 実はAirPodsより先に世に出ていた「Xperia Ear」

 米調査会社IDCのウェアラブル市場調査も、2015年くらいから音楽を聴く以外の機能(通話とか、音声アシスタントとか)もあるイヤフォンやヘッドフォンを「耳装着型デバイス」というウェアラブルの1カテゴリーとしてカウントしています。

 そのIDCが先週発表した2019年第3四半期の世界ウェアラブル市場調査では、カテゴリー(耳装着型、リストバンド型、スマートウォッチ)別出荷台数ランキングのぶっちぎりトップが耳装着型(4070万台でシェアは48.1%)でした。前年同期比242.4%増という急成長っぷりです。

idc 1 2019年第3四半期のカテゴリー別世界ウェアラブル端末市場シェア(資料:IDC)

 このうちの何パーセントがAirPodsなのかは不明ですが、メーカー別シェアではApple WatchとAirPodsとBeatsのヘッドフォンを販売しているAppleのシェアがダントツトップで35%だったので、耳装着型の出荷台数に占めるAirPods率はかなり高そうです。

idc 2 2019年第3四半期のメーカー別世界ウェアラブル端末市場シェア(資料:IDC)

 そして10月30日に発売されたノイズキャンセリング対応の「AirPods Pro」も大ヒット(せっかくのホリデーシーズンに品不足になっていますが)。米Bloombergによると、AirPodsシリーズの2019年の総売上台数は6000万台を超えそうとのことです。

 AirPodsの発売当初は「チンアナゴ」だの「うどん」だのとネット上でネタにされていましたが、今やかつての「白いコード付きイヤフォンはiPodユーザーの証」と同様に、恥ずかしいどころかちょっとしたステータスになったのかもしれません。

 新モデルのAirPods Proはうどん部分が短くなり、耳へのフィット感もかなり良くなったそうで、「使っていなくても着けけっぱなしにしていられる」との知人談。まさにウェアラブルです。

 着けっぱなしにできるということは、いつでもどこでも音声アシスタントの「Siri」と会話できるということです。それは今でもApple Watchでできることですが、腕を口元にもっていったりしないで、より自然に、ただの独り言っぽくできます。

 Androidユーザーとしてはうらやましいかぎり。でも来年にはGoogle純正の完全無線イヤフォン「Pixel Buds」が日本でも発売される予定です。これならGoogleアシスタントが使えるし、AirPodsシリーズにはない同時通訳機能も搭載されているし、ついでにスマートフォンの「Pixel 4」とカラーコーデもできます。

Pixel Buds Googleも「Pixel Buds」で追従

 それに、スマートスピーカーは「ヘイ」とか「OK」とか「ねぇ」とかのウェイクワードが必要ですが、イヤフォンであれば、タップしたりうどん部分をぎゅっとしたり(AirPods Pro)することで起動できます。部屋の中で「ヘイ」とか言うのって結構恥ずかしいという人も少なくないと思うので、これは割と重要です。

 家の中で「Googleアシスタント」と会話する際は、今はいちいち「ねぇ、Google」と言ってから、「ライトをつけて」とか、「仕事能率アップの音楽をかけて」とか、「3分間のタイマースタート」とか、「2.3ポンドは何キロ?」とか言っていますが、Pixel Budsがもし家の中でもずっと装着していて気にならないBluetoothイヤフォンなら、ウェイクワードなしで会話できてうれしいです。

 そうすると、多くの人にとってスマートディスプレイはともかく、スマートスピーカーは不要になりそうです。音声アシスタントの普及に大いに貢献したカテゴリーだけど、過渡期の製品だったのかもしれません。

 AppleがAmazonやGoogleと競合する安価で手軽なスマートスピーカーを発売しなかったのは、それを見越していたからなのかもしれません。Appleもスマートスピーカー「Home Pod」を出していますが、これはスピーカー本来の目的である「音楽をいい音で楽しむこと」がメインで、Siriは付属機能的な位置付けです。

 来年は、外でも家でもイヤフォンを耳に付けたままの人が耳を時々トントンしたりぎゅっとしたりして独り言を言う世界が来るのでしょうか。

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