ここ最近、Microsoft Store(旧Windows Store)ならびにUWP(Universal Windows Platform)の迷走に関するニュースが続いている。今回は、このあたりの情報を時系列でまとめてみた。
話題の1つ目は、Microsoft Storeでアプリ開発者とプラットフォーマーであるMicrosoftとの間で取り交わされる売上配分の料率についてだ。2018年5月に開催されたBUILD 2018カンファレンスにおいて、Microsoft Storeからのアプリ購入、あるいはアプリ内購入(In-App Purchase)を通じて売上が発生した場合、ディープリンク(購入を促すMicrosoft Storeへの当該リンクを別のコンテンツを通じて誘導する手法)を通じて売上が発生した場合はその95%を、それ以外のケースでは85%を開発者に分配する新ルールを発表した。
Microsoft Storeは元々の登場経緯が「AppleのApp StoreやGoogleのGoogle Play(Play Store)対抗」という理由で「Microsoftが30%、開発者が70%の売上配分」というルールでスタートしたサービスだ。
一方で、Microsoft Storeは閉じたプラットフォーム環境であるApp StoreやGoogle Playとは異なり、Windowsでは複数の流通手段があり、開発者があえてMicrosoft Storeを配信先に指定するメリットが薄かったという理由もあって、配信プラットフォームとしては苦戦が伝えられていた。
前述のように開発者への大幅な譲渡も、そうした盛り上がらない自社アプリストアのてこ入れという面が大きい。本来であれば魅力的なはずの95%ルールだが、Microsoftがこれを密かに廃止したことが話題になっている。
Neowinが1月15日(欧州時間)に報じたところによれば、2020年1月14日(米国時間)にMicrosoftが開発者との間で締結しているApp Developer Agreementの規約で、95%ルールの廃止が明記されていたという。この文面の規約を受け取ったあるユーザーがTwitter上に公開している。
本件についてNeowinがMicrosoftに問い合わせたところ、公式見解として「95%ルールで恩恵を受けていた開発者は少なく、継続的な85%の配分比率に統一することに決定した」と理由を述べている。単純化した上で、なお他社のモデルよりは競争力があるという認識なのかもしれない。
こちらは、1月10日(米国時間)にZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏が自身の情報源として報じたものだが、Microsoftは2つのアプリストア「Microsoft Store for Business」「Microsoft Store for Education」を閉鎖する計画だという。
両者は実質的に同じものなので、コンシューマー版以外のアプリストアを閉じるということを意味しているが、企業や組織のIT管理者がMicrosoft Storeというアプリストアを通じて、管理下にあるクライアントPCのアプリ設定を制御するよりも、別の手段を用いて同様の管理を行うことを模索しているように思える動きだ。
前述のように、AndroidやiOSのようなスマートデバイスとは異なり、Windowsのアプリ配信チャネルはMicrosoft Storeが唯一の存在ではない。例えばMSIX形式のパッケージであれば、UWPとは異なりMicrosoft Storeでの配信を前提とはしていないし、将来的にWebアプリケーションが中心であれば配布手段の柔軟性の高い「PWA」(Progressive Web Apps)という選択肢もある。
いずれにせよ、95%ルールと一緒でMicrosoft Store for Businessの利用率がそれほど高くないというのであれば、これをいっそ廃止してしまうという選択肢も当然Microsoftにはあるだろう。タイミングから考えて、このあたりのルール変更は5月下旬に米ワシントン州シアトルで開催される「BUILD 2020」で改めて語られる可能性が高いとみている。
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