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NRF 2020にみるMicrosoftとクラウドの切っても切り離せない関係Windowsフロントライン(2/2 ページ)

» 2020年02月10日 06時01分 公開
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パーソナライズドされた体験とAIによる業務改善

 だがナデラ氏によれば、こうしたテクノロジーを活用する企業において重要なのは、既存の製品を単に受け入れるのではなく、「Tech Intensity(テクノロジーに対する熱意)」を持つことにあるという。

 Azureというプラットフォームがあったとして、その上で提供される部品(サービス)をいかに組み合わせ、小売企業それぞれが自身に適したサービスを構築し、それを活用してビジネスを独自に発展させていけるかが重要というわけだ。

 例えば、オンラインコマースの分野で売上の3割はレコメンデーションの仕組みに起因するもので、顧客の8割は顧客それぞれにパーソナライズされた体験を期待しているという。

 つまり、手持ちの商材を効率的に売るためには、顧客の期待に応えるサービスを整備しつつ、適切な形で提案していくことで初めて充分な売上を確保できるというわけだ。その実現にはベテラン店員の知見だけではなく、ITをうまく活用して顧客に必要なサービスや提案を行うことが求められる。

 同氏がAzure活用事例の1つとして挙げるのが、米StarbucksのAIエンジン「Deep Brew」だ。いわゆる「Deep Blue」をもじった名称だと思われるStarbucks独自開発のAIだが、このAIは単純にStarbucksアプリなどでのレコメンデーション機能を提供するだけでなく、同社店舗やパートナーが提供するサービスも含め、さまざまな場面で活用が行われているという。

 Starbucksは、モバイルアプリやRewardのカードを通じての顧客追跡や行動分析では世界トップクラスの実績を持っていることで知られているが、そうしたデータ活用施策を支えるのはDeep Brewということになる。近年の新業態店舗の展開や季節商品開発も含め、データの利活用場面は多く、これが他社とのさらなる差別化要因となっている。

NRF 2020 Azure活用の例。Starbucksでは「Deep Brew」と呼ばれる独自のAIシステムを構築しており、これを同社ならびにパートナーの間のさまざまな業務で活用している

ベース部分を支えるのはMicrosoftのクラウドとIoT技術

 この他、2019年のNRFのタイミングでも提携が発表された、ドラッグストアチェーンを展開するWalgreens Boots Allianceでのサプライチェーンの改善もAzureの役割だ。ナデラ氏の説明によれば、全米の人口の78%がWalgreens店舗の5マイル圏内に住んでいるという。

 日々800万の顧客が同店を訪問して日用品などを購入しており、こうした顧客のニーズをきちんと把握し、欠品なしでサプライチェーンを最適化することはビジネスチャンスを逃さないうえで重要だ。特に同社はサプライヤー数で5000社、これに毎日訪問する顧客に対する製品コンビネーションは2億通りにも達し、店舗数は9000を超える。言うまでもなくIT活用は必須であり、これをMicrosoftの技術が支えている。

 重要な指標として、小売における購買の起点として4分の3がオンラインを出発点としている点が挙げられる。流通改善のたまものだが、いまはAmazon.comでなくてもオンライン注文の翌日には商品が手元に届くし、スーパーに事前注文しておいた品物を後でリアル店舗に所用のついでにピックアップしたり、買い物ロッカーに預けられた商品を取り出していったりというのは、米国のあちこちで見られる買い物風景だ。

 モバイルオーダーの取り組みは、前述のStarbucksやMcDonald'sなどで知られているが、これを全面的に採用して「車から降りずに商品を店先で受け取れる」という「カーブサイドピックアップ」で大きく業績を伸ばしているのはWalmartだ。

 Walmartの人口カバー率は85%と圧倒的で、週当たり7500万人もの客が同スーパーを訪れるという。Walmartはテクノロジー活用ならびに、自社で技術開発を行ったり、有望なスタートアップ企業をうまく取り込んだりすることで業界でも先端サービスの提供に成功している点で知られている。もちろん、このベース部分を支えるのはMicrosoftのクラウドとIoT技術だ。

 もう1つ分かりやすい事例としては、英国のMarks & Spencer(M&S)のものが挙げられる。ナデラ氏によればWalmartのIoT活用事例に近いが、Computer Visionと呼ばれる店舗の可視化と店員業務の最適化をクラウドサービス上で実装している。

 少なくとも顧客の目から見て、このような最先端技術で店舗が運営されているとはとても思えないが、その実は“見えない”コンピュータの目で店舗全体の状況は把握され、商品の転倒トラブルなど、必要に応じて迅速に問題に対処する仕組みができあがっている。Microsoftのクラウド技術は、このように縁の下の力持ちという位置付けで着実に皆の生活に浸透してきており、おそらく多くの人々が気付かないところで同社の技術やサービスを利用しているのだろう。

NRF 2020 英M&SにおけるDynamics 365 Connected Storeソリューションの活用例。Computer Visionで店舗内の稼働状況やトラブルを逐次リアルタイムでレポートしている
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