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» 2020年02月10日 06時01分 公開

Windowsフロントライン:NRF 2020にみるMicrosoftとクラウドの切っても切り離せない関係 (1/2)

世界最大規模の小売業界展示会「NRF 2020 Retail's Big Show」でオープニングキーノートの講演を行ったMicrosoftのサティア・ナデラCEO。そこから見えてきた、同社の取り組みや今後を見ていく。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 米Microsoftが1月29日(米国時間)に発表した、同社会計年度で2020年度第2四半期(2019年10〜12月期)の決算報告が興味深い。同四半期の売上は369億ドルで前年同期比14ポイントのアップ、営業利益に至っては139億ドルで35ポイントの上昇だ。

 特にAzureやOffice 365といったクラウド製品の好調が顕著で、Azureの売上については62ポイントの上昇と驚異的な成長ペースを見せている。ここ最近低調だったWindows OSのライセンスも、Intelプロセッサ供給不足からの改善やWindows 7 EOSなどの要因が続き、結果として業績全体の底上げに結びついている。

 現状、「Productivity and Business Processes」「Intelligent Cloud」「More Personal Computing」と3つある事業領域の売上はほぼ均衡している一方で、営業利益の比率は前の2つに偏っている。

 つまり、OfficeやDynamicsなどのビジネスアプリケーションからAzureのようなクラウド製品まで、ビジネスの軸がクラウドに依存している状況が生まれつつある。同社CEOのサティア・ナデラ氏がたびたび強調しているように、MicrosoftはもはやWindowsの会社ではなくクラウド+AIを主軸に据えた会社へと変貌しているが、それがより顕著になって表れている。

NRF 2020 NRF 2020 Retail's Big Showのオープニングキーノートで講演する米Microsoftのサティア・ナデラCEO
NRF 2020 FY2020第2四半期の各事業別売上と営業利益(出典:10Q)

 これは同社の製品を使って事業を展開するパートナーらの動きにも反映されており、例えば2020年1月中旬に米ニューヨークで開催された「NRF 2020 Retail's Big Show」の展示会場においては、ほぼ全て同社のAzureクラウドや生産性ツールを基盤に構築されたパートナーシステムの紹介が行われていた。

 この世界最大規模の小売業界展示会で、Microsoftは過去20年以上に渡って出展を続けているが、今回同社トップとしてはおそらく初というNRFのオープニングキーノートでの講演を行っている。ナデラ氏が説明するAzureクラウドが、小売の世界をどう変化させ、システム基盤として根付いていったのか。今回はこのあたりを少しまとめたい。

小売大手クラウドシェア9割超のMicrosoftだからできること

 Microsoftは2019年1月のNRFで小売大手Krogerとの提携を発表しているが、これに前後して小売業界各社と大小さまざまな提携を発表しており、ここ最近は業界向けでも特に小売業界に注力している印象が強い。

 理由はいくつかあるが、その1つはクラウド事業で最大のライバルであるAmazon.comのAWSだが、小売業界は本業が直接競合するAmazon.comではなく対立軸のMicrosoftに期待しているという部分だ。AWSで動作していたシステムを提携後に無理矢理Azureにマイグレーションするような事例も聞くが、それだけ潜在性の高い市場であり、食い込む余地も大きいということだろう。

 全米小売協会(NRF)自身が毎回強調しているが、全米の労働人口の3分の1程度は何らかの形で小売業に携わっており、人的リソースを一番抱える業界の1つとなっている。当然、人の数だけ業務改善の余地があり、人と接するサービス業という正確からさらなる付加サービスを提供できる可能性を秘めている。

 ITができることは多く、Azureを始めとする同社のクラウドソリューションでこれを支援しようというのが、ここ数年の主立ったMicrosoftの動きだ。実際、Microsoftのクラウドはさまざまな形で企業のネットワークに侵入しており、ナデラ氏によれば世界の小売トップ100企業のうち、92社が何らかの形でMicrosoftのクラウドを導入しているという。

NRF 2020 Microsoftのクラウド製品は、世界の小売トップ100社のうち92社で活用されているという

 各社によってクラウドの活用方法はさまざまだが、日々の活動を蓄積していくことでデータが生まれる。同氏によれば、このデータは毎日6PB(ペタバイト)もの容量が生成され、経済活動に関するさまざまな情報を内包している。

 一方で、これらの情報を全ての企業が有効に活用できているとは限らず、ある意味でこれが企業間でライバルとの差別化を図るポイントにもなる。興味深いのは、Microsoft自身がクラウドを通じてさまざまなサービスやソフトウェアを提供することで、主要小売はこれらを活用してビジネスを進め、同時にMicrosoftは大量にやり取りされるデータからノウハウを蓄積して製品へのフィードバックを行っていく。

 つまり、同社が世界中にサービスを提供することで知見がたまり、それが反映された製品がさらに他の企業へと提供されることで業界全体の底上げにつながっているというわけだ。クラウド事業で多くの小売業界の顧客を抱えるMicrosoftならではの立ち位置だろう。

 結果、クラウドはさらに活用されることになり、Microsoft自身を潤していく。Windowsが主軸の柱から外れて数年が経過するが、クラウド事業が急成長を遂げる背景の1つがここにある。

NRF 2020 FY2020第2四半期におけるIntelligent Cloud事業の概要(出典:Microsoft)
NRF 2020 Fy2020第2四半期におけるIntelligent Cloud事業のハイライト(出典:Microsoft)
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