Cinebench R23のスコアは、M1搭載Macのどのシリーズでもシングルプロセッサで1470程度、マルチプロセッサで7800程度だ。しかし、30分間テストし続けるとMacBook Airのスコアはマルチプロセッサモードで6600程度まで落ちる。一方で13インチMacBook Proはマルチスコアが7450程度までしか落ちず、Mac miniに至っては全く落ちなかった。
しかし、そんなMacBook AirでもIntelの第11世代Core(開発コード名:Tiger Lake)であるCore i7-1165G7を搭載したノートPCがTDP 28Wモードで出す一般的なスコア(4900程度)より高性能だ。M1は高性能コアと高効率コアの両方がフルに稼働するよう最適化がしっかり行われているからということもあるだろうが、発熱によるパフォーマンス抑制(スロットリング)が入っても、十分に高い性能を維持できている。
実際、M1を搭載したMacBook Airはとても高速な一方、発熱を感じることはなかった。例えば、Macをセットアップしてメールの同期が始まると、既存メールデータベースの再構築とともに検索用インデックスの生成が始まる。このとき、本体が発熱して激しく冷却ファンが回る経験をした方も多いだろう。
ところが、そんな状況でもM1搭載のMacBook Airはほとんど熱を出さない。それどころか、GPUに負荷をかけてみようと3Dアクションゲームの「Little Orpheus」をプレイしていても、全く温度に影響はなかった。しかも、このゲームはIntel向けだ。GPUを使う際のAPI(Metal)はエミュレーションでもほとんどパフォーマンスが変化しないため、電力効率もいいのだろう。
もちろん、これはM1搭載の13インチMacBook Proでも同じだ。こちらは冷却ファンがあるが、本体に厚みがある分、放熱の余裕があるためか、これがほとんど回らない。冷却ファンの存在により、連続的な負荷がかかる状況でも性能が落ちずに済むものの、多くの場合、その助けを借りる必要はないということだ。
このような状況であるため、恐らくは稼働しているだろうと思われるが、Mac miniの冷却ファンに至っては動いているかどうかさえ確認できないほどである。
次に動画編集アプリ「Final Cut Pro」で12分のフルHD・30P動画をH.264で書き出してみた。以下がその処理時間だ。
M1搭載Macの3シリーズはほぼ同じ結果だった。16インチMacBook ProはCore i9搭載モデルのためM1を超えているが、スタンダードモデルならば同等、あるいはM1の方が高速となる可能性もある。
処理後の筐体はファンレスのMacBook Airでもほんのりと暖かい程度だ。一方で、16インチMacBookProに搭載されているCoffee Lake-Hの8コアプロセッサは高性能だが冷却ファンで排熱してもかなり高い温度だった。製造プロセスも性能の上限も異なるとはいえ、ファンレスのMacBook Airでも処理能力が落ちないことは驚きだ。
【訂正:2020年11月18日0時45分 上記テスト結果はIntel Mac向けアプリではなく、ネイティブアプリのFinal Cut Proでの計測によるものでした(編集部)】
さらにIntelプロセッサ向けに開発されているアプリの速度をチェックするため、Adobeの写真編集アプリ「Lightroom」を「Rosetta 2」によるエミュレーションで動かし、「RICOH GR III」で撮影したRAWファイルを20枚現像してJPEGで書き出してみた。
こちらはM1搭載モデルで全て同じ結果だった。詳しくは後述するが、Rosetta 2によるエミュレーションでは3割ほど性能が削がれるといわれているため、LightroomがM1に対応すれば、ここからさらに3割程度の性能改善が期待できる。
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