ここまで読み進めてきたとき、「自分にとってのベストな選択肢はMacBook Airではないか」と思っている方も多いのではないだろうか。実際、大多数のユーザーにとってMacBook AirがM1搭載Macの中で最も適していると思う。
簡単に、M1搭載13インチMacBook Proとの違いを書き出してみると
といったところだが、MacBook Airは今回のモデルからPro同様、Display P3対応の広色域ディスプレイに切り替わった。最大輝度こそProよりも低いが、実際の利用場面で不足することはない。恐らく、HDR対応コンテンツを編集する際に、少しばかり高輝度部の見通しがよい程度の違いしか感じないだろう。
バッテリー容量が大きく、同じ条件で使っていれば13インチMacBook Proの方がバッテリー駆動で長く使えるが、一方でM1が省電力なこともあって、MacBook Airでもなかなかバッテリーが減らない。では13インチMacBook Proのバッテリー容量はオーバースペックかといえば、モバイル環境で動画編集やRAW現像などメディア処理を行う際などには、やはり絶対的に容量の大きなバッテリーは安心感がある。
Touch Barを使うアプリもあるため、最終的には最小構成で3万円の価格差を考えた上で、使い勝手の違いで選ぶ他ない。
なお、Mac miniに関してはMac向けのアプリを書いている開発者にとって便利なことは間違いない。IntelプロセッサからM1となってiPhone・iPad用のプログラムコードを変換せずに実行できるようになったため、それらのアプリ開発を行う際、ARMネイティブのコードでテストを行える。
もっと一般的な用途としては、冷却ファンの音をほとんど気にせずに作業ができるデスクトップコンピュータとして有益だろう。
音楽制作アプリの「Logic Pro」にサンプルで添付されているBillie Eilishの「Ocean Eyes」プロジェクトを再生してみたが、多様なプラグインを使って多重録音されているプロジェクトの再生時、MacBook AirのCPU負荷は100%に満たなかった(macOSでは8コアCPUの場合、最大値は800%となる)。音を扱うアプリ向けにも、Mac miniは有益といえそうだ。
パフォーマンスの次は、どのぐらいIntel Mac向けアプリが動作するのかが気になるところだ。まず主要なアプリは、1〜2カ月程度の間にはM1に対応したバージョンへと更新が行われるようだ。
6月のWWDC(開発者会議)では、Apple独自のプロセッサに対してMicrosoftとAdobe Systemsが対応することを発表していた。現時点では両社ともM1対応のバージョンをリリースしていないが、関係者への取材によるとおおむね12月までには主要アプリがそろう模様だ。
またIntel Mac向けアプリも、おおよそ30%程度のパフォーマンス低下で動作するようだ。やや反則ともいえるが、旧バージョンのGeekBench 5をコピーして実行したところ、30%程度のCPUパフォーマンス低下が観測できた。実際のアプリを使ったテスト結果は前述の通りだ。
また3DやGPU活用のAPIであるMetalを通じた処理に関してはオーバーヘッドはなく、ストレートに内蔵GPUの優れたパフォーマンスを生かせる。Intel向けゲームの大多数が快適に動作するのは(中には途中で止まるものもあった)Metalのオーバーヘッドがないためだろう。
一方、Windowsの仮想化を行うアプリが使えないなどの非互換もあるが、筆者が使っている範囲で困ることはなかった。むしろiOS・iPadOS向けアプリとの互換性の方が有益と感じたほどだ。
もちろん、全てのiOS・iPadOS向けアプリが動作するわけではない。GPSやジャイロセンサーなど、iOSやiPadにしか搭載されていないようなハードウェアを求めるアプリは利用できない。
例えばフィットネスバンドとの接続と、バンドから得られるデータの分析などを閲覧できる「Fitbit」のアプリはM1搭載Macで動作したが、「Nike Run Club」はアプリ自身がGPSデータを利用してランニングパフォーマンスの記録を行う機能があるためか、M1搭載Macでは動作しない。また、どうやらmacOS向けにアプリが提供されているものは、iOS・iPad版を使いたくとも見つからないようだ。
もちろん、たくさんあるiOS・iPad用アプリの全てがmacOSでの動作を確認されているわけではなく、運用はユーザーにまかされている面もある。とはいえ、手持ちのiOSアプリの大多数は動作する。中にはmacOSからは利用できないサービスのアプリもある。
Boot CampやWindowsエミュレーションとの比較はできないものの、個人的にはiOSアプリとの互換性の方がトータルでは利益が大きいと感じている。
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